通草
片手に持ったなにかをぽーん、ぽーんと上に投げてはキャッチしながら、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「誰だ?」
「それはおれの台詞だ。おまえこそ誰だよ」
歩智は自分が持っていたものをぐいと和茅の手に押しつけると、目を眇めて紺を見上げた。
「歩智、彼は尾宝ハンターの紺だよ。紺、これは……えーっと、わたしの連れの歩智」
和茅が互いに互いを紹介すると、紺が僅かに目をみはった。
「ポチ?」
「ホ、チ、だ」
歩智の眼光が鋭くなる。
「ああ、悪い悪い」
紺が笑いを噛み殺しながら謝るが、歩智は腹立たしそうに紺を睨みつけている。
「ま、まあまあ」
歩智をなだめるように間に割って入った和茅に、紺が懐かしそうな眼差しを向ける。
「へぇ、でも、和茅がおれ以外の誰かと組むとは思わなかったな」
「組むっていうか、ただ一緒に旅をしてるだけなんだけど……」
「でもそれ、『通草』だろ?」
「え?」
紺が指さしたその先――自分の手元を見た和茅は驚いて瞬きを繰り返した。
それは、間違いなくついさっきまで探していた尾宝『通草』だ。
「あっ、うそっ! 歩智が見つけてくれたのっ!?」
「おまえに任せてたらこのまま野宿になりかねねえからな。おれは腹が減ったんだよ。早く飯を食いに行こうぜ」
歩智がふい、とそっぽを向く。
「残念、稼ぎそびれたか」
あまり残念そうではない口調で言った紺は、頭をかりかりと掻いている。
「ご、ごめんねー。あ、そうだ。これからわたしたち夕飯を食べに行くんだけど、一緒に行かない? おごるよ?」
我ながら名案! と思いながら言うと、歩智が鋭い視線を和茅に向けた。
「なんでだよ! 冗談じゃ……」
「あ、そう? 悪いね。久しぶりの再会だし、積もる話もあるしなぁ。甘えさせてもらおうかな」
歩智の言葉を遮って、紺が和茅の肩にぽんと手を置いた。
「ハンター同士の情報交換は大事なんだよ?」
歩智をなだめようと声をかけたけれど、一気に気分を害したらしい歩智は返事をせずすたすたと歩き始めてしまった。
「ほんと、ごめんね。ちょっと難しい子なんだ。いい子なんだけど」
「いいよいいよ。せっかくふたりで旅をしてたのに、おれが割り込んじまったんだもんな。やっぱりおれ、遠慮しようか?」
「気にしないで。大丈夫だよ」
「でもさ」
「あ、もし、紺が歩智と一緒にいると気分が悪いっていうのなら、もちろん無理強いはしないけど……?」
和茅は歩智のつれない態度にすっかり慣れたけれど、紺のほうはそうもいかないかもしれない。
歩智は確かに悪い子じゃないけれど、人当たりがあまりよくないのは否定できないからだ。
「いや。おれは平気だけど?」
「じゃあ、一緒に行こうよ。今晩は特大ステーキなんだよ」
紺がひゅうっと短く口笛を吹いた。
「随分と豪勢だなぁ」
「歩智のリクエストなの。途中で助けてもらったから、そのお礼」
「へーぇ。なんだかんだ言って、あいつと上手くやってんだ?」
紺が腰を屈めて、和茅の目をのぞきこむ。すぐ近くにある紺の瞳にちょっとだけどきっとしながらも、和茅は「うん」と力いっぱいうなずいた。




