三人組
歩智が立ち止まった場所から少し進むと、和茅にもその先に誰かがいることがわかった。
こちらが風下にあたるので、話し声が風に乗って聞こえる。声の低さからすると三人とも男のようだ。
足音を忍ばせて近寄ることもできるが、相手の能力如何では足音など関係なく気づかれる可能性があるので(和茅の尾宝感知能力のように特殊な能力は数多く存在している)、ここはあえて正面から堂々と近づくことにした。
更に近くへ行くと、男たちの会話が途絶えたのがわかった。相手も和茅たちに気づいたらしい。
和茅と歩智はちらりと目を合わせたが、立ち止まったりはせず、それまでと同じ歩調で歩き続けた。
やがて前方に人影が見えた。向こうもこちらの様子をうかがっているのがわかる。
「あのー、すみませんー」
先に声を発したのは和茅だった。歩智に任せると相手に失礼な態度をとりそうでとても不安だったからだ。
その途端、三人の緊張が幾分緩んだのがわかった。
彼らは盗賊などを警戒していたのかもしれないけれど、聞こえたのは女の声で、しかもその同行者はどこからどう見ても子ども程度の身長しかないのだから、それは普通の反応だろう。
こちらとしても、相手には油断してもらったほうがありがたい。
連中があくどいやつらだったら、今ごろひょいひょい現れた獲物をどうやって金に換えようか計算していることだろう。
「道に迷ってしまって困っているんです。ここがどの辺りなのか、教えていただけると助かるんですけれどー」
「ここは、西湖都の西です。どちらへ向かわれるのですか?」
予想外に丁寧な返事が聞こえた。
西湖都とは、尾垂界の西に位置する都だ。
「助かった。どうやらおれたちはまだ地図範囲内にいたみたいだな」
横で歩智が小さく口笛を吹く。
よかった、と和茅も心から安堵する。尾垂界の地理なら、ある程度は頭に入っている。
「幻北山を目指しているんですけれどー」
和茅がそう言うと、返事までにやや間があいた。
「もしよければ、こちらで休みませんか。道をお教えしたいのですが、少々複雑なのです。今、火をおこしますから」
招かれた。これは好意か、それともその反対か。返ってくる言葉からは、危険な感じはしないけれど――。
「どうする? おれだけで行ってきてもいいけど?」
「ううん。一緒に行く」
歩智の問いに和茅は首を横に振り、ゆっくりと三人へ近づいて行った。




