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ふたりの仲

 和茅のお尻がぴりぴりっとしたのは、休憩から二刻ほど経ったころだった。

 そして和茅の微妙な変化に、紺と歩智がほぼ同時に気づいた。


「なにか感じたのか?」


 紺が和茅の傍まで駆け戻ってくる。

 歩智はちらりと和茅を一瞥し、次いで周囲に視線をめぐらせている。


「う、うん……。でも、たぶん普通の尾宝だと思う。『柄杓』だったら、気絶しちゃうくらい反応するはずだもの」


 既に山の中腹を過ぎている。

 『大蒜』のおかげか幻獣に遭遇することも、山に住む獣に襲われることもなくここまでやって来ることができたけれど、『柄杓』の気配は全く感じられなかった。


 途中、幾度か顔見知りの尾宝ハンターと遭遇したが、彼らもまだ詳細はつかめないと苦笑を浮かべながら言っていた。


「それでも見つければ金になる、だろ? この辺りなんだな?」

「うん。わたしが感知できるのは、半径二十五里くらいだから」

「感知範囲が広がったんじゃないか? 二年前はせいぜい十二、三里くらいだっただろ?」


「えへへ。順調に能力が上昇してるみたい。この調子だと、しっぽがもう一本増えるのも近いかも」

「すごいなぁ。おれにはちっともそんな兆しないけどなぁ。さあて、じゃあいっちょ探してみるか。和茅は疲れたんなら、ここで休憩していればいい」 


「でも、ここで時間をとられたら『柄杓』を探す時間がなくなっちゃうんじゃない?」

「今更少しくらいどうってことないさ。それに、どっちみち今夜は野宿だろ」

「それはそうだけど……」

「やりたいようにさせてやれば? おれは手伝わねえけどな」


 歩智が冷めた口調で言う。


「お好きに。そのかわり、分け前はやらないからな」

「んなもん、ほしくねえよ」


 歩智のつれない言葉に口の端を軽く上げ、紺は茂みの中へと入って行く。


「いいのかなぁ」


 そんな紺の背中を見送りながら、和茅は小さく息を吐いた。


「いいんじゃねえの?」


 言うなり歩智は倒れた木の幹にどかっと腰を下ろした。


「わたしも手伝って来るね。そのほうが早く見つかると思うし。歩智、荷物をお願いね」


 和茅は背負っていた荷物を下ろし、紺のあとを追おうとした。が、手首を歩智に強く掴まれ、それはできなかった。


「歩智?」

「おかしいと思わないか?」

「え、なにが?」


 和茅は歩智の言葉の意味するところがわからず、瞬きをした。


「あいつ、どうしておれたちを誘ったんだ?」

「どうしてって……わたしが『柄杓』を探してることを知ってたからだよ」

「ひとりで行けば、丸儲けじゃねえか。わざわざ女子どもを連れて山に入る必要はない。それとも、おまえとあいつは、儲けなんてどうでもよくなるような深い関係なのか?」

「ないない。それはないって。絶対に。腕を組んだことすらないから!」


 歩智にまで誤解されてはたまらないと力いっぱい否定した和茅を、歩智が睥睨する。


「本当か?」

「本当だよ」

「……じゃあ、尚更おかしいじゃねえか」

「おかしくないよ。紺は昔からああいう人だよ。基本的に親切だし、優しいし……」

「おれみたいなのが一緒でも、文句ひとつ言わないし?」


 一応、自分の態度がよくないというのは自覚していたらしい。


「……歩智も仲良くしてくれたら嬉しいんだけど」


 和茅が言うと、歩智がやれやれといった様子で肩をすくめた。

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