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新しい店

作者: 前田剛力

「新しい店がこんなところに」

 生活の糧を得るために毎日毎日、決まりきった職場との往復を繰り返さざるを得ない私だが、せめてもの慰めにその日の気分でルートを少しずつ変えることにしている。

 今日、そのうちの一つを久しぶりに選んだら、いつもの曲がり角にまばゆいばかりに輝く店が出現していた。

 今の世の想像を絶する変化のスピードは承知しているつもりだが、それにしても驚くよ。ほんの数日前、影も形もなかったところに新しい店が忽然と姿を現わすんだから。

 見るからに急ぎ仕事とわかる建物だが、新しいものなら何にでも直ぐに飛びつく若い奴らが早くも集まっているのが分かった。お楽しみの真っ最中なのだろう、賑やかに騒ぐ様子が遠くからも覗えた。

 もちろん、普段の私なら目もくれずに家路を急いだだろう。でも今夜は何故か心をそそられたのだ。

 とても明るくきれいで、しかもうまそうな食べ物の匂いまで漂ってくるその店の誘惑に、私も堪えきれずついフラフラと足を踏み入れてしまった。


「こんばんわ」

 しかし次の瞬間、私は悟った。店内は全くお楽しみどころではない。死に物狂いの大騒動だったのだ。皆、必死で床にベットリとくっついた足を引き剥がそうとしていた。

 そしてそのまま、私も大騒ぎの仲間に加わってしまった。足も手も床の粘着物に捕らえられ、逃げようと羽根を広げたが、たちまちネバネバの液で固まってしまったのだ。

「なんてことだ!」


 うまいものにはワナがある、これがゴキブリ一族の金言じゃあないか。



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