3.一蓮托生の運命
数日がたって、ようやく周りの状況がわかってきた。
まずは、家族構成だ。
・父(まだ見てないがマイクことマイケル。家にいないっぽいんだよな…)
・母(エリーって呼ばれてるがエリザベスって固い名前らしい。)
・兄(ジョン。4歳年上で、正式名はジョナサン。某レストランを思い出す。)
・竜1匹(まだ名前はない。俺のせいか…)
と、
・俺(グラン。愛称と思ってたがグラン。俺だけなぜ!?)
の4人と1匹らしい。
次に生活環境だ。
使いふるされた感のする木でできた子供用ベッドから部屋を眺めた限りだと、少し薄汚れている壁や軋む音が聞こえそうな椅子が1つ並んでいるだけで、なんにもわからなかった!
そりゃー、また動けない赤ん坊だぜ。 わかるはずもないわ!
両親やお兄ちゃんはどこで寝てるのかな...?という疑問はあったが、すぐに判明した。エリーが、
「今日はお庭でご飯を食べましょう~」
と、お兄ちゃんと俺を庭に引き連れてきたところ(もちろん竜も勝手についてくるのだが)、日本で言えば2階建ての木造戸建てであることがわかった。
連れてこられた庭の椅子に座るやいなや、お兄ちゃんはご飯をモグモグひたすら食べてる一方、俺は抱えられたエリーの腕から家の周囲をキョロキョロ見渡す。
「ぎゃぎゃー。」
...思わず声が出ちまった。
そこには、庭一杯に咲く赤や黄色や青の花、実のなった木が並び、その奥にはなんの作物かはわからないが畑が広がっていた。畑の両側には緑があふれる山々が連なり、かなりの田舎にみえる。所々に小屋?らしき民家があるものの、人は少なく、所謂、「異世界の辺境」ってやつだ。たぶん。
...そう、あえて異世界と言ったのは、会話でたまにでる「エリストア王国」って単語や「アトス村」といった聞き覚えのない地名から、記憶にある地球ではないことを知ったからだ。
まぁ、それよりも俺の後をついてくるやつの存在で一発にわかるんだが…
「きゅきゅっーー」
お前も一緒に叫ばんで良いよ・・・
「グランもこの子も元気ね。」
「そろそろなまえをつけたほうがいいんじゃない?」
とエリーとお兄ちゃんが言う。
「はぁ~。この子の名前はグランがつけなきゃダメなのよ。私も早くつけたいんだけど、マイクが絶対ダメだって言うの。」
と、お兄ちゃんの言葉にエリーが答える。
なーーぬーー!
なぜ故。こやつの。名付け親にーー!!
と、内心で呟くと
「竜と同じ日に同じ場所で生まれる子は、魂で運命が繋がった存在で、お互いに名前をつけあうことで生きられるの。それさえすれば、グランは健康に生きていけるんだけど、それをしないと…」
と、心配気な表情でエリーが呟く。
......へっ?
とまたもや、呆気にとられる。
お前かーー!俺の命をもてあそぶのはーー!俺の愛称が…
と、竜を振り向く。
「でも、この子って『きゅ』しか言わないよ?」
「そうなんだけど、グランに初めて会わせた時だけ『グラ~ン』て呼んだのよ。」
みなさーん。ノーギルティー!この竜に罪はありませんよーー。
だって、「俺、きゅです。」なんて自己紹介できねーわ。
竜様様ですな。
でも、ふと、冷静に考えてみる。もしかしたら、俺の名前「グラーン」になったんじゃ……
そんな風に考えながら子竜を見てると、キラキラした青い目で見つめてくるので、段々どうでもよくなってきた。
そう、俺はこいつと一蓮托生。
いい名前つけたるからな!
と、なんか知らんが心の中に覚悟を持つ。