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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
花屋敷編 第一章
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恋嘘

「ねー、リサちゃんは誰が好きなの」

「んー」

「かず君?」

「んー」

「たけちゃん?」

「んー。んっとねー、どっちも好き!」

「何だよそれぇ?」

「ほんとのこと言えよなー」


 いつもの喫茶店から家に引き上げる途中の坂道で、小学生くらいの男の子が二人、女の子が一人。蹲ってアイスを食べながら、無邪気で他愛ない話をしていた。人工的な水色のアイスは南極の氷のように熱によって溶け、ポタポタとアスファルトに垂れている。

 他愛ないというのは大人の勝手な言い様で、彼ら、殊に少年たちは真剣だった。


 すれ違ってから私がくすりと笑いを洩らすと、これまたいつもながらついて来ていた俊介が驚いた顔を見せた。私は口元に右手を添える。

「いえ。先程の子供たちの会話が」

「ああ、微笑ましかったですね」

 俊介の耳にも入っていたらしい。

「あの女の子、結局どっちが好きだったのかな?」

 真面目に首をひねる仕草が可笑しい。

「彼女が答えてたじゃないですか」

「どっちも? それは角が立たないように嘘を言ったんでしょう?」

「本当ですよ。嘘であれば私には解ります」

 嘘のコトノハは必ずそうと知れる。

 歪で不自然な形を、私の耳は聴き逃さない。

「ええっ? つまり、女の子は、ほんとにあの男の子たち両方が好きだと」

「有り得るでしょう、子供ですし。大人にだって」

 もうすぐ我が家だ。

 私は麻のズボンのポケットから鍵を取り出した。金色の馬を象ったキーホルダーがついている。

 俊介が横から、躊躇いがちに口を開く。

「――――ことさんは、……過去にどういった……、」

「恋愛ですか?さて、どうでしょう」

 予測出来た質問を私は軽くいなして、目線を上げた。


 私の家が光を背負って立っている。

 眩しく目を細める。

 そこに待つのは私が愛すべき、また世話すべき濃緑たちと。


「……秀一郎さん」


 白く涼しい麻の背広に長身を包んだ男が、にこやかに佇んでいた。

 若いのに鼈甲ぶちの眼鏡が嫌味なくらい似合う。


「やあ、ことさん。こんにちは」


 彼の名前は明眸皓歯。ではなく、(おと)瀬秀一郎(せしゅういちろう)

 私の従兄弟だ。



挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
[良い点] 個性的な語り口で読み手を引き込みます。主人公たちの人柄や背景が一話ごとすこしずつ明らかにされていき、愛着も深まっていくように描かれています。 [気になる点] コトノハがどういうものとして捉…
[良い点] 選考通過作品さすがですね。文が上手いです。会話もいいですね。読みにきたつもりでしたが勉強させられました。おもしろかったです
2022/09/23 12:17 退会済み
管理
[良い点] 子供達もそうですけど、ことさんと俊介氏のやり取りも微笑ましいですね(*´꒳`*) 男の相手への好意ってやっぱ女性からしたらバレバレなんですね(⌒-⌒; )
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