表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
神代ひもろぎ編 第一章
725/817

バランス調整

 出雲殿との対面も済ませ、私たちは帰宅した。楓たちが出迎えて、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。荷ほどきをして、入浴させてもらう。風呂上り、楓と摩耶に、京都の和装小物屋で買ったお土産を渡した。みんなには生八つ橋。土産話をねだられ、夕食の時間に色々と語った。出雲殿は壮年の男性で、二人の双子の男女の子供がいる。この、妹のほうが聖に惚れていて、何かと私を敵視する。まあ、そうした話は省いた。余り面白い話でもない。

「俺は行かなくて良かったの? それとも、行かないほうが良かった?」

 このかささぎの質問は、穿ったものだった。

「かささぎさんまでしがらみに捕らわれる必要はありませんよ。留守中、楓さんたちを守ってくださりありがとうございました」

「うん、それなら良いんだけど」

 もぐもぐと京都で買った漬物でご飯を食べながら答えると、かささぎは微妙な表情で頷いた。京都はとにかく、どこに行っても漬物の外れがない。食後、縁側でゆったり寛いでいると、帰って来たと言う感じがする。身体が弛緩してじわりとした喜びがある。空は空気が澄んで星が見える。月桃香の白煙が私を守るように包む。伊勢、出雲。そして鹿島。かたたとらや白夕たちとの決着もまだつかない内に、またぞろ厄介なことになりそうだ。

 神代からのしがらみは重い。

 その時、庭にふわりと降り立つ女性の姿があった。白いワンピース。

 綺麗な顔を私に見せる。これは幻。出雲殿の娘、九倉奈(くくらな)(なえ)が送ったものだ。

「どうされました?」

「ことさん。貴方、旅の間中、尾行されていたわよ。気づいていた?」

「はい。素知らぬ風を通しましたが」

「相手の心当たりは」

「あり過ぎて何とも」

「…………」

 奈苗が呆れた溜息を吐く。

「鹿島とも接触したわね」

「はい」

「病み上がりのところ気の毒だけど、厄介なことになるかもよ」

「心得ております」

「聖さんは?」

「ここに」

 聖は、私と奈苗が話し始めてすぐ、背後に来ていた。劉鳴殿もいる。聖の顔を見ると、ぱ、と奈苗が赤面する。乙女だな。

「僕に話が?」

「何でもないわ。いるなら良いの。頑張ってことさんを守ってあげてね」

「有り難うございます。力を尽くします」

 力みなく答えた聖に、奈苗は赤面したまま頷き、姿を消した。後には虫のすだく音が残る。

「初々しいですねえ」

 劉鳴殿がぼりぼりとかりんとうを食べながら呑気に評する。私にもかりんとうの袋を差し出してくれる。聖は牛乳の入った硝子コップを手渡してくれた。絶妙な組み合わせだ。ぼりぼり食べてごくごく飲む。美味しい。

「術師としての腕も一級ですよ。鹿島を外したのは早計だったかもしれません。これが後の禍根となるのなら、私の判断ミスです」

「ことさんがそこまでへりくだる必要はないでしょう。心得ておきなさい。貴方は万全ではありません。身体が本調子を取り戻すまでにまだしばらくかかります。そしてそんな時の為に僕や聖君がいると言うことを」

「頼りにしています」

 ぼりぼり。

 鹿島に対する古の朝廷からの信頼は厚かった。伊勢にも出雲にも、それぞれの自負がある。私はそれらを蔑ろにしないように上手くバランス調整しなくてはならない。かりんとうと牛乳を賞味しながら、私は鹿島へのフォローを考えていた。あちらを立てて、こちらも立てて。全てを丸く収めようとするのは難しい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ