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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
天響奥の韻流編 第三章
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報復の者たち

 かなでは黒いタンクトップの上にデニムジャケットを羽織り、赤いニッカポッカを穿いている。奇抜な服装も、燃えるような赤い髪、そして独特の雰囲気を纏うかなでにはよく似合う。居酒屋の帰りだった。私、聖、秀一郎、かなではほろ酔い気分で店を出て、宵の明星が光る空の下を歩んでいた。

 よく太った三毛猫が前の道をさっと横切った。

「結局、虜囚の子はどうしたんだい?」

「康醍さんのお宅で預かってもらっています」

「ふん、成程。適材適所だ」

 暗く、細い小路を聖が先頭になり歩いていると、その歩みがふと止まった。かささぎがその暗がりに佇んでいたからである。かささぎだけではない。布帛も、水谷、アーサーもいる。他にも名の知れぬ者、多数。

「社長がご立腹でね」

「そうでしょうね。けれどその腹立ちはブーメランですよ」

「そこね。人の事言えないんだよね、あの人も」

 かなでが全く空気を読まずに割って入る。

「この優男たちを斬れば良いのかい」

「出来るだけ、殺さずに」

「相変わらず、甘い」

 空気が不穏な色を帯びて、ぴんと張り詰めた糸のようだ。

 かささぎがネクタイを外す。現れる、赤い棒二本。布帛は生成色の布を取り出していた。

「相伝の一。花笑い」

 かなでのコトノハに血はしぶかなかった。布帛が、布を大判に広げ、かなでの技を防いだのだ。しかし、この間、かなでもまた動いている。隠刀を顕現させて疾風のように布帛に肉迫する。すると交代と言わんばかりにかささぎが受けて立った。赤い棒の材質は何なのか。かなでの刃に臆さず戦っている。私も聖も秀一郎も、他を相手取り、かなでの援護に回ることは出来ない。尤も、援護など不要だとかなでは撥ねつけるのだろうが。

 飛来したナイフを、聖が指先二本で挟み取り、返すように水谷に放った。アーサーの金色の糸が私に向かう。この糸は危険だ。囚われると傀儡になることもある。

「相伝の二。籠の鳥」

 淡々と詠じるかなでの声が聴こえる。良かった。冷静に戦えている。かなでの激しい気性は、ともすれば相手諸共自分も焼き尽くす。その恐れは、今はないようだ。

 かささぎと対峙する。布帛は聖のほうへと向かった。秀一郎は彼らの間を掻い潜るように動いている。

 白い羽毛が次々、かささぎに貼り付き行動の自由を奪う。

「――――はは!」

 かなでが哄笑する。強敵と出逢えた時の、彼女の悪い癖だ。この気性が逆手に取られなければ良いが。しかしかなではスパリスパリとかささぎを斬った。赤い液体が号泣のように流れる。

 ここまではまだ、抑えようがある。

 問題は次だ。



レビュー、ブクマありがとうございます。

少しずつ、涼しくなってきましたね。

虫の音も移り変わりつつあるようです。

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