56 課外演習
今日から森での課外演習で俺達は学校の正門前に集まっていた。
これから馬車に乗りこんで森へ向かうのだ。
ここに来る前にアリサに心配されたり説得したりと色々苦労した。
アリサは昨日の夕飯を食べているときに突然、
「やっぱり無理だわ!私には3日間もレンと離れるなんてできない!」
「いきなりどうした。」
「レン、やっぱり私もついていくわ。」
「いや無理でしょ。」
「そうですよ、駄猿は大人しくお留守番でもしていなさい。」
「だって3日間もレンと離れたら栄養不足で私は死んでしまうわ!」
「なんで栄養不足で死ぬんだよ・・・・・・。俺は野菜か。」
「ならせめて今日はレンのエネルギーを多く摂取させて頂戴。」
「具体的には?」
「男女の営みをしてくれれば「却下。」レン!私が死んでもいいっていうの!」
その後それはもう苦労して説得した。
シェルが説得中に何かとアリサに毒舌を吐くので余計に大変だったのは言うまでもない。
「しかし昨日は駄猿が本当にしつこかったですね。」
「あそこまでしつこくなったのはシェルが原因でもあるんだけどね。」
「ともかく演習の間は邪魔者も消えて毎晩イチャイチャし放題ですね♪」
「あたし達もいること忘れないでね。」
「まぁ、夜に行為をするというのであるならば私はテントの外で寝ても構わん。」
「ユミナスさん、余計な気は回さなくて結構ですので。」
課外演習は対人方面で苦労しそうだな~と俺は思うのであった。
今、俺達は馬車で王都からそれなりに離れた森へ向かっている。
本日から森での課外演習で3泊4日のサバイバルだ。
何台もの馬車が列をなして道を進んでいる。
俺達は真ん中の位置で走る馬車の中でパーティー4人で乗り込んで雑談中だ。
「遂にこの日がやってきたな、課外演習。気合入れていくぞ。」
「めんどくさな~。」
「右に同じ。」
「まだ始まってもないのにめんどくさがるな・・・・・・」
「部屋でゲームしてたい。」
「ダーリン、たまには身体を動かさなくては太ってしまいますわよ。」
「大丈夫、俺は食べても太らない体質だから。」
「何その体質!?あたしにも分けなさいよ。」
「どうやって!?」
「・・・・・・しっかりしてくれ、森では常に命の危険もあるというのに・・・・・・」
「まー、大丈夫でしょ。」
「なんとかなるんじゃない?」
「ダーリンがいますから私は問題ないと思いますよ?」
「・・・・・・不安だ。お嬢様に関してはレン君さえいれば何でも良いといった感じだし・・・・」
のんびり話ながら森に着くまでこの後も雑談していた。
目的地の森へと到着し、教官の話を聞く。
「演習内容は森で3泊4日のサバイバルでその間に何らかの成果を出すことを目的とする。成果を証明するものとして最終日に討伐した魔物や採取した素材などを提示してもらう。サバイバル中はパーティーメンバーだけで生活してもらう。何か問題が起こった場合は開始前に渡される魔法具を使えばすぐに助けを呼べるようになっているので安心しろ。なお森でのサバイバルに自信のないパーティーや、魔物との戦闘を安全に経験しておきたいパーティーは1日目だけ、このキャンプ場で我々が指導してやるので希望するパーティーはこの後もここに残りなさい。なおこの演習はふざけていいものではない。毎年怪我人は勿論、過去には死者も出たことがある。気を引き締めてかかるように。では3泊4日、王学の名にふさわしい成果を示せ。以上解散!」
教官が話の終わりを告げ、各パーティーが行動を開始する。
ちなみに全8パーティー中5パーティーが指導を受けるために残るようだ。
「そんじゃ移動しますか。どの方角に行く?」
「ダーリンにお任せしますわ。」
「んじゃ地図の情報じゃ北側に強めの魔物が生息してるみたいだし、北に行ってみるか。」
「そうだな、北の魔物なら成果として申し分ないだろう。」
「よっし、気合入れていこー!」
ミナが気合の声を上げ、俺達は森の中を歩き出した。
スタート地点から300メートル付近。
「・・・・・・今思ったんだけどさ・・・・ミナの魔法って火系統じゃん?」
「ん?そうだけど、それがどうかしたの?」
「森の中で使えるの?火事にならない?」
「確かにそうだな。ミナ君の魔法は森の中でも使えるものがあるのか?」
「・・・・・・・・あたしは今回の演習で使い物にならなくなりました。皆さま、あたしの分まで頑張ってください・・・・・・」
「・・・・・・き、気にするな!ミナ君にもできることは沢山あるさ!」
「・・・・・・ミナ、哀れだな。」
「・・・・・・ミナさん、洞窟や河原などでは火系統も使えますしきっと活躍できますよ。」
「うぅ・・・・・・」
スタートから地点から600メートル付近。
「うわっ!虫だ!あっちいけ!」
「・・・・・・レン、女子みたいなだね。」
目の前に飛び出してきた虫に驚いた俺をミナが呆れた目で見てくる。
「うっせー、男だって苦手な物くらいあるんだよ。」
「ダーリン、真上の木の上をみてくださいまし。」
「ん?なんかあったの?」
木の上ではグリーンキャタピラが絶賛お食事中でした。
「光れ閃光、サンダーボルト!」
シェルがグリーンキャタピラの乗っていた枝に魔法を当てて俺の真上に芋虫型寄怪邪生物を落とした。
「ひぎゃーーっ!!」
グリーンキャタピラは真っ直ぐに落ちてきて俺は予想外の接触に悲鳴を上げる。
「ハァッ!!」
すぐにユミナスさんがグリーンキャタピラを切り捨てるが、俺は驚きのあまりにシェルに全力でしがみついてしまっていた。
「はぁっはぁっ・・・・・・いいですわ~!よしよし、怖くないですよ~。」
シェルが恍惚とした顔で俺の頭を撫でる。
虫を怖がってシェルに抱き付くとか俺って・・・・・・
「・・・・・・シェル、お前Mじゃなかった?」
「私はダーリンに関わることならSでもMでもいけますわ。」
「・・・・・・とりあえずそろそろ離してほしいんですけど。」
俺が抱き付いてしまった後、シェルはしっかり両腕でホールドして離そうとしない。
「もう少し・・・・このままでよろしいですか?」
シェルは頬を赤らめながらさながら世紀末の純情可憐なヒロインのような雰囲気を醸し出して頼んできた。
それを俺は、
「え、ダメです。さっさと離してね。」
にべも無く切り捨てた。
「・・・・・・おかしいですわね。こうすれば殿方は落ちるはずだと・・・・・・」
「その情報のソースが激しく気になるがシェルはまず俺に謝ろうか?」
スタートから地点から900メートル付近。
「拠点はここでいいよね。」
俺達は地図で載っていた川原に出たのでここに拠点を作ることにする。
「それではまずテントを組み立てるか。レン君、手伝ってくれ。」
「はいよー。」
「お嬢様とミナ君は薪を取って来てくれるか?」
「おっけー。」
「わかりましたわ。」
ミナ達は薪を取りに森へ入っていく。
俺とユミナスはテントを組み立る。
「・・・・これどうやんの?」
しかし俺のサバイバルスキルは低く、テントの組み方すらおぼろげで役に立たない。
「それはこうするのだ。」
ユミナスは慣れた手付きで俺に教えながらテントを立てていった。
「ユミナスさんはサバイバルもできるんですね。」
「お嬢様の護衛として様々な事を叩きこまれたからな。」
「でもユミナスさんとシェルの関係って割とフランクですよね。」
「そうだな、お嬢様とは主というよりは妹のような感じだ。」
「似たような事をシェルも前に言ってましたよ。ユミナスは臣下というより姉のような存在だと。」
「ふふっ、そうか、お嬢様もそう思っていてくれたのか。」
ユミナスは嬉しそうに微笑んだ。
「そういや今更ですけどいいんですか?薪取りとはいえシェルと森の中で離れて?何かシェルにあったら護衛のユミナスさん的にはヤバいんじゃないかな?って思ったんですけど。」
「あっ・・・・・・ま、まー大丈夫だろうっ!お嬢様は私より強いしな!」
「ユミナスさん・・・・・・」
俺はジト目でユミナスを見る。
「ほ、ほら!次はこの周りの安全でも確保しようじゃないか!さぁ、行こう!」
ユミナスは思いのほか抜けている部分があるようだった。
拠点の周りを歩いて魔物などの危険がないかチェックする。
俺は一定間隔でマンドラゴラとポイズンスネークを召喚して拠点に近づく魔物を撃退するよう命令して森へ配置する。
「魔物に索敵や夜間の警備をさせればかなり負担が減るな。」
「拠点のすぐ側にホブゴブリンを配置するんで安全は確保できると思いますよ。」
「うむ、さすがは召喚士だな。」
その時何かが俺達に近づく気配がした。
あ、いや、別に俺が気配を感じた訳じゃなくてユミナスさんがそう言っただけなんですけどね?
現代人の俺には気配とかさっぱりです、はい。
「レン君、気を付けろ。なかなかの強敵だと思うぞ。」
そう言うユミナスが警戒している先から出てきたのは9体のオーガの群れであった。
その群れの中には普通のオーガを一回り大きくした個体がいた。
「くっ!オーガの群れ!しかもバルカンオーガまでいるのかっ!」
魔物名:バルカンオーガ
スキル:剛腕 勇猛
ランク:A
説明 :オーガの上位種。非常に好戦的で勇猛な鬼の戦士。
「何故こんなところにオーガの群れなどがいるのだ!くっ!レン君!さすがにオーガの群れには勝てない!急いで戻りお嬢様を連れて早く逃げてくれ!ここは私が囮になる。」
ユミナスは自分達では勝てないと判断し、俺に逃げるように言ってきた。
何故こんなところにオーガの群れがいるのだ!?
ここは確かに魔物の住まう森だが学校で演習を実施できる程度には危険度の低い森だ。
オーガなどの高ランクモンスターが出るはずがない。
しかし、現状8体のオーガとそれを率いる1体のバルカンオーガの群れが明確に私達を獲物と定め向かってきている。
今は私とレン君の2人しかいないし、仮にお嬢様達がいてもBランク以上の魔物の群れを相手にできるはずもない。
(レン君を殺させるわけにはいかない!)
私はレン君にお嬢様を連れて逃げるよう言いつけ、震える手で剣を握りしめ一番近いオーガに斬りかかる。
「ハァッ!!」
勢いの乗った剣はオーガの胸を切り裂くが固い胸の筋肉を全て突破することができず、剣はオーガの胸の中で止まり厚い筋肉に挟まり抜けなくなってしまった。
「クソッ!」
目の前の傷付けられ怒ったオーガが腕を振り上げ私を捻る潰そうとする。
(くっ!すみませんお嬢様。私はここまでのようです。)
「パンッ!!」
しかしその時いままでに聞いたこともない鋭い音が鳴り響いた。
何事だ!と思った時には目の前のオーガが頭から血を噴きながら倒れるところだった。




