39 貴族の暴徒
「ぐっ!」
砂の槍は俺の横腹に命中し穴を空ける。
内臓までは届いていないがメッチャ痛い・・・・
「ちょっと!いきなり何すんのよ!」
ミナが怒って魔法を撃った奴を見る。
「平民がっ!口の利き方を気をつけろ!」
俺も魔法が放たれたところを見ると、ピアーズが取り巻きを連れて顔に笑みを浮かべながら立っていた。
人数は全部で9人。
全員貴族でピアーズは土魔法を得意としているようだ。
「授業前に訓練とは感心だな、平民。どれ、僕が相手してあげようじゃないか。」
ピアーズは笑いながら魔法を唱える。
「汝に大地の鎖を与える!ダストーストーム!」
俺を中心に砂が巻き上がり、俺を拘束するかのように身体に巻き付く。
さっきサンドランスで怪我した横腹にも砂が入り込んできてとても痛い。
「うああっ・・・・」
「あんた!やめなさいよ!貴族だからってやっていいことと悪いことがあるわ!」
「平民が僕に命令するな!」
ミナは俺の元に走ってこようとするがダストストームに阻まれて近づけない。
召喚していたキラーウルフは俺が攻撃を受けると同時にピアーズを敵と定めて襲い掛かっていった。
しかしピアーズの取り巻きが剣や槍を抜いてキラーウルフに応戦した。
取り巻き達たちは武術で王学に入学したのか手強くキラーウルフ達は討たれてしまった。
「どうした平民?こんな獣では訓練にもならんぞ?」
「いい加減にしなっ!熱き赤子よ我が手に集え!ファイヤーボール!」
ミナはピアーズに向けてファイヤーボールを撃つが取り巻きの大盾持ちの貴族に防がれてしまう。
「平民如きが我々貴族を攻撃するとは殺されても文句は言えんぞ!砂よ怒れる槍となれ!サンドランス!」
ミナに向かって砂の槍が放たれる。
(マズイッ!召喚!)
俺は咄嗟にミナの前にストーンゴーレムを召喚した。
砂の槍は召喚されたストーンゴーレムの巨躯に命中する。
しかしストーンゴーレムは身体は少し欠けた程度の傷しかつかなかった。
「な、なにこいつ!?レンが召喚したの?でも詠唱が・・・・?」
「な!?バカな!ストーンゴーレムだと!何故平民如きがBランクモンスターを使役できる!くっ、破壊しろ!」
ストーンゴーレムに貴族達は剣や魔法で攻撃するがあまり効果はない。
俺はストーンゴーレムに肩に乗せろと命令する。
ストーンゴーレムはダストストームなど物ともせずに俺の元まで来てその岩の手で優しく俺を掴み肩に乗せた。
ストーンゴーレムの高い背丈の肩に乗ったことでダストストームの効果範囲からようやく抜けれた。
「ううっ・・・・」
痛い。
横腹から血が今だに流れている。
さらに傷から砂が大量に入ってしまったので早く洗い流さないとマズイことになる。
しかし俺が痛がっていると突然痛みが和らいでいった。
(ますたー、だいじょうぶ?)
「エメ?」
(いまなおしてあげる。)
どうやらエメがスタックスペースから直接治癒魔法を掛けてくれているみたいだ。
今日もエメは俺の天使でした。
召喚している時よりは回復力は遅いが着々と傷が治っていっているので大丈夫だろう。
「レン!大丈夫?」
「ああ、なんとか生きてるよ。そっちは?」
「ストーンゴーレムが盾になってくれたおかげで助かったよ。ありがとね。」
「気にすんな。」
「それであいつらどうするの?」
ピアーズの方を見ると悔しそうな顔でこっちを睨んでいた。
「平民如きがっ!調子に乗るなよ!大いなる大地が生きている証拠を汝に示す!大地の鼓動をその身に刻め!クエイク!」
ピアーズが魔法を唱えるとストーンゴーレムを中心に地面が激しく揺れ始める。
そして土が突起していきストーンゴーレムごと俺を飲み込もうとする。
「大気の熱き情熱をここに込めよ!熱気の大波に飲み込まれろ!バーンウェーブ!」
ミナがピアーズ達に向けて熱風を放つ。
ピアーズ達は熱風よってに後ろに吹き飛ばされた。
「熱い!熱い!熱い!」
「ギャー!熱いー!」
「うわー、助けてー!」
熱風によって熱された貴族達はその熱さに悶えている。
ピアーズのクエイクも術者の魔法行使が切れたため収まった。
「ミナ、助かったよ。」
「気にしないで。こっちも助けてもらったんだし。」
さて、こっからどうしたもんか?
逃げても同じクラスメイトで毎日顔を合わせることになるのだから逃げてもあまり意味がない。
しかも相手は伯爵貴族の息子様ときたもんだ。
教師達に言ってもそこまでピアーズに強く言えないだろう。
シェルを呼んで助けてもらおうか?
それが一番良さそうな気がする。
「いったい何をやっているのですか!?」
おお、丁度シェルが訓練場にやってきた。
「レンさん、どうしたのですか?」
「いえ、ピアーズ達が訓練と称していきなり襲ってきまして・・・・」
「それは本当ですかっ!?大丈夫なのですか?」
シェルは俺に怪我がないか身体に目線をやり、血だらけの横腹を見た。
「レンさんっ!怪我してるではありませんか!大丈夫ですか!」
出血量はヤバかったので貧血気味だが怪我そのものはエメのおかげで大分良くなっている。
「そうよ!怪我は大丈夫なの!?凄い血の量じゃない!早く医療棟に行かないと!」
ミナも俺の怪我のことを思い出したようで慌てだした。
「もう大丈夫だよ。少し貧血でクラクラするけど傷はもう治ってきているから。」
「治ってきているって・・・・。とにかく無理はしないで休んでなさいよ!立ってないでそこに寝なさい。」
「そうですよ!とにかく医者に診てもらいましょう。誰か!医者を呼んできてください!」
「大丈夫ですからあまり大事にしないでくださいよ。」
「大丈夫ではありませんわ!レンさんはとにかく安静にしていてください。」
俺はミナとシェルさんに無理やり寝転がされた。
まだ少し痛いけど傷はかなり塞がっているから大丈夫だけど、確かに出血量はヤバいので大人しく安静にすることにした。
「シェルフィーユ様!その野蛮人に近づいてはなりません!そいつは平民の癖に貴族を傷付けた犯罪者です!」
ピアーズが起き上がりシェルの姿を見つけ声をかけてきた。
「ピアーズ!黙りなさい!何故このようなことをしたのですか!」
「それはっ・・・・」
「聞きましたよ。不意打ちでレンさんに魔法を撃ったのだとか。それが伯爵貴族ともあろうものがすることですか?」
「しかしそいつは薄汚い平民です!」
「それは理由ではなく貴方の勝手な認識です、貴方は自分勝手な認識で人に不意打ちをし傷つけるのですか?」
「そ、そいつは貴族を傷つけた野蛮な獣であって人などではありません!」
「なんということを言うのですか!ならば貴方は傲慢な無能貴族ですか?!ピアーズ、貴方には失望しましたわ。」
「なっ!?」
ピアーズはシェルに無能貴族と言われて茫然とした後、俺を睨み、
「貴様のせいで俺のシェルフィーユに嫌われたではないかあああーーーー!!死ねえええーーー!!砂よ怒れる槍となれ!サンドランス!」
俺に八つ当たりしてきた。
俺のシェルフィーユって・・・・
このストーカー予備軍め・・・・
ピアーズの放った砂の槍を俺は寝転がっていたため避けることもできず、腹を砂の槍が貫いた。
「ぐふっ!」
痛い・・・・
これはヤバい・・・・
マジで死にそう・・・・
「ピアーズ!!貴方はなんということを!!」
「貴様っ!熱き赤子よ我が手に集え!ファイヤーボール!」
ピアーズがミナの火球を受けて炎に包まれているのを見ながら俺は気を失った。




