37 その平民は魔物の背に乗って
目が覚めて起きてみるとベットの上だった。
外を見るともう朝のようだ。
確か昨日はウハウハなバスにインしてファンタスティックなものを見た後、カオスペインなインパクトがヘッドをアサルトしてドリームワールドにダイブしたんだっけ?
部屋を見渡すがアリサがいない。
怒ってどこかに行ってしまったのだろうか?
これでしばらく平和な日々を送れそうだと思ってしまった俺は悪い子なのでしょうか?
そんなことを考えながら窓から外の景色眺める。
広大な敷地を持つブルスカイ学校の風景はまるでどこかの異世界に紛れ込んだようだ気分になる。
まー、実際に異世界にいるんだけどね。
いい景色だなー。
そう思いながらある場所で目が止まる。
部屋の窓から見える学校の時計台だ。
敷地内ならどこからでも見えるこの時計台で生徒たちは時間を確認する。
その時計台には短針が7を指し、長身が10を指していた。
7時50分。
今日から授業が始まり、その開始時刻は8時からだ。
「・・・・・・えっ?7時50分?マジっ?あ、ちょっ、ヤバッ、寝過ごした?え?ちょ、間に合う?え、遅刻?これ遅刻?初日遅刻とか・・・・フャーーーーーーーーーーー!!!」
俺は部屋を飛び出し寮を出てキラーウルフを召喚し背中にしがみついて教室まで全力で走ってもらった。
通りすがりの生徒や教員が驚いているが知ったこっちゃない。
とにかく今は遅刻を回避することが大切なのだ。
広い学校の敷地を走り抜け校舎内にもそのままキラーウルフに乗ったまま突入する。
走り抜いた後ろで教師に怒鳴られているような気もするがスルーする。
8時まで残り5秒。
教室まであと少し。
俺は教室の扉に手をかけて開きキラーウルフに乗ったまま入る。
それと同時に開始のチャイムが学校中で鳴り響いた。
「せ、セーフッ!」
危ない。ギリギリ間に合った。
しかし代償は大きそうだ・・・・
俺は遅刻を回避できたことで喜んでいるところをクラスメイトが冷めた目で見ている。
ヤバい・・・・
絶対貴族に目を付けられたんじゃね?
クラスメイトは冷めた目で、特に貴族からの視線がかなり悪い気がする・・・・
先生も呆れ顔だ・・・・
俺のクラスでの初印象はかなり悪そうだ。
ただ一人を除いて。
「ウフフ、もうレンさんったら。」
同じクラスのシェルは今日も金髪縦ロールのザ・お嬢様な髪形をし上品な雰囲気を全身から醸し出して自分の席で俺の事を見ながらクスクスと笑っていた。
今日は授業初日。
そんな日に遅刻ギリギリに来た平民がいた。
これだから平民は嫌いだ。
野蛮でも品性の欠片もないのが平民だ。
この遅刻ギリギリの平民は汚らしい獣に乗って教室に入ってきた。
汚い!
何故エリート学部である王学にこんな汚らしい平民が入学できたのだ!
今年の王学は全部で42人。
その内36人が貴族だ。
平民が6人もいる。
汚らしい。
こいつはその平民の中でも特に酷そうだ。
今年は公爵令嬢である愛しきシェルフィーナ様もおられる。
シェルフィーナ様に人の形をした獣が近づく前に伯爵家であるピアーズ=レオナルドの名にかけてこの王学から消してやらねば!
「レン君、これからはもっと余裕を持って登校してください。わかりましたね?」
「はい、すいません。」
「それでは早く席に着きなさい。その魔物も早く仕舞ってください。」
「はい。」
俺は先生の小言を聞きキラーウルフを仕舞い、自分の席に着く。
隣の席の子はボーイッシュなショートヘアの赤茶色の髪をした女の子のようだ。
「よろしくね。」
「よろしく、初日から随分とハデな登場ね。あんた平民でしょ?これで貴族に目を付けられたんじゃないの?」
「あはは・・・・マジでどうしよ?」
「あたしに聞かないでよ・・・・」
よかった。
隣の席の子はフレンドリーのようだ。
「あたしはミナよ。平民で王学には火魔法で入ったわ。あんたは?」
「レンっていいます。俺は召喚術で入ったよ。」
「でしょうね。魔物に乗って登校するくらいだし。」
「魔物に乗ってなかったら絶対遅刻してたよ。」
「初日に遅刻しなくて良かったね・・・・」
「あはは・・・・まー、仲良く頼むよ。」
「こちらこそ。」
「皆さん、初めまして。私は今日より皆さんに座学を教えるファベルスト=オライウといいます。よろしくお願いしますね。それではさっそくですが皆さんの学力を測るためにテストを行います。」
ファベルスト先生は若干髪がハゲている線の細い40代の男の先生だ。
苗字があるってことは貴族なのだろう。
先生がテストを配る。
「げっ!いきなりテストかー。」
「ミナは勉強苦手なの?」
「苦手だよ。特に古代語がダメね。」
「皆さん、テストは行き届きましたか?それでは制限時間は40分です。始めてください。」
俺はテストを解く。
余裕だ。
問題は異世界式の単純な掛け算・割り算に簡単な古代語の訳だったりこの国の歴史などだ。
歴史に関しては異世界に来て最初らへんに今いる国を調べるためにギルドの歴史書を読み漁ったのでこのくらいならわかる。
10分程でテストを終わらせ、30分程ボーっとして待つ。
「そこまで!それでは答案用紙を回収してください。」
俺は後ろから回ってきた答案用紙に自分の答案を重ねて前へ送る。
「皆さんお疲れ様です。今日の座学はここまでとします。テストは明日採点して返却します。昼からは戦闘技術訓練の時間ですので遅れないように第2戦闘訓練場に集合してください。」
そう言って先生は教室を出ていった。
授業は1日に1~3科目あって、終わる時間は一コマ120分で、この学校は大学のような時間割みたいだ。
だが一コマの終わる時間はその日によってバラバラだ。
実際今日の座学は50分程で終わった。
今の時間は8時52分。
次の授業は14時からなので5時間近く暇ができた。
「あー、疲れた。初授業でテストだなんてホント勘弁って感じ。」
「テストの出来はどうだった?」
「かなりヤバい。レンは?」
「ぶっちゃけ満点の自信ある。」
「マジッ!?レンって頭良いの?」
「さあ?でもこのくらいなら簡単かな。」
ミナと話していると後ろから声をかけられた。
「ハッハッハ、平民如きが何を言っているのやら。貴様が満点とは笑わせてくれる!」
どうやらさっそく貴族さんに絡まれてしまったようだ。
「はあ、そうっすか?」
「ああ、そうだとも!貴様など5点も取れれば良い方なのではないかな?無能は王学にはいらない。君のような野蛮人は早く退学するべきだよ。じゃなきゃ王学の評価が下がってしまう。」
「そうですか。でもせっかく入学できましたし退学を言い渡されるまでは頑張りたいと思ってますので。」
「ふんっ!生意気な。貴様など1か月も持たんだろうさ。」
「そうですかね?3か月は頑張りたいものです。」
「精々王学の評価を下げないように頑張るんだな。」
そう言ってその貴族は取り巻きを連れて離れていった。
「ふー、さっそく絡まれちゃったよ・・・・」
「大変ね。でもレンが貴族の目を集めてくれたおかげであたしを含めたほかの平民組はしばらく平穏に暮らせそうだよ。」
「俺は生贄かよ・・・・」
「生贄なんてとんでもないですよ。すぐに皆さんはレンさんの良さに気づくはずですから安心してくださいな。」
そう言ってシェルが今度は話しかけてきた。
「シェルさん。」
「フフフ、初日から奇抜な登校ですね。レンさん。」
「あはは・・・・明日からは気をつけます。」
「是非そうしてください。私はレンさんと共に授業を受けたいですから。」
「そう言っていただけるとありがたいです。」
「貴女とは初めましてですね。私はシェルフィーユと申します。これからよろしくお願いしますわね。」
「あ、はい。ミナと言います。よろしくお願いします。」
シェルさんはどうやら平民に対して差別意識などないようだ。
これぞ貴族の鏡。さすがは公爵令嬢。
てかミナが緊張して話してる。
んな怖がらなくてもいいと思うけどなー。
「レンさんはテストの自信がおありなのですか?」
「ええ、まあ。」
「実は私も自信がありますの。明日は私とレンさん、どちらが良い点数か勝負しませんか?」
「いいですよ。」
「そうですか。良かったです。明日の結果が楽しみですね?」
「ええ、まったくです。」
俺とシェルが談笑していると、さっき絡んできた貴族がまた来た。
「おい貴様!シェルフィーユ様と軽々しく話すな!この方は公爵家の令嬢だぞ!貴様のような野蛮人が話しかけて良い相手ではない!そもそもなんだその口の聞き方わ!シェルフィーユ様を軽々しくシェルさんなどと呼ぶな!この愚か者が!」
「ピアーズ、失礼ですよ。レンさんには私から話しかけたのです。それにシェルと呼んで欲しいとお願いしたのも私からです。これからクラスメイトになるのに何故そんなに喧嘩腰なのですか?」
「シェルフィーユ様!こいつは汚らしい平民の中でも特に野蛮人な奴ですよ!朝のこいつの登校を見たではありませんか!」
「ええ、レンさんの今日の登校の仕方はとても面白かったですわ。」
「なっ!?面白いですと!?」
「ええ、私もあのように魔物の背に乗ってみたいものですわ。」
「なんて言う事を仰っているのですか!?シェルフィーユ様は公爵令嬢なのですよ!その貴女がそのようなことを仰ってはなりません!」
「ピアーズ、何故貴方に私の発言を規制されねばならないのでしょうか?」
「そ、それは貴族の「この学校内では貴族という立場は意味などないはずですよ?」それは・・・・そうかもしれませんが、しかし!」
「ピアーズ、私は今レンさんとお話をしているのです。人の会話に怒鳴りながら割り込んでくるのは失礼ではありませんか?」
「それはっ!・・・・」
「ピアーズ、言いたい事があるのなら後で聞きます。ですから今は下がりなさい。」
「っ!?は・・・・い。わかりました。」
ピアーズという貴族は俺のことを凄い形相で睨みながら取り巻きを連れてどこかへ歩いて行った。
シェルさん怖ー・・・・。
怒鳴らず淡々と相手を窘めていく。
大人な怒り方だな。
「申し訳ございません。レンさん。」
「いえ、シェルさんが悪いわけではないのですから謝らないでくださいよ。」
「そう言っていただけるとありがたいですわ。レンさんはこれからどうするのですか?」
「俺は昼飯を食べれるところを探しつつ学校の探検でもしようかと思っていますけど。」
「そうなのですか?私はこの後は人に呼ばれているのでご一緒できないのが残念ですわ。戦技では遅刻しないでくださいね?」
「ええ、わかってますよ。」
「それでは、また昼の授業で。」
「ええ。」
シェルは廊下にいた教師達とどこかへ歩いて行った。
「ねえ、ミナ?」
「ん、何?」
「戦技って何?」
「あんたわからずに返答してたの!?相手は公爵令嬢だっていうのに!てかなんであんたはシェルフィーユ様とあんなに親しげなのよ!?」
「さあ?試験の時に会ったから?」
「なんでそれだけであんなに仲良いのよ・・・・?しかもあんたシェルさんって何?」
「愛称?」
「なんであんたに愛称で呼ぶことを許しているのよ?」
「試験合格して入学手続きしに教員棟まで一緒に歩いて自己紹介してる時にシェルって呼んでくださいって言われたから。」
「シェルフィーユ様がシェルなんて愛称で呼ばれてるなんて話、聞いたことないよ・・・・」
「せっかく学校に入学するんだしあだ名で呼ばれたかったんじゃないの?」
「そーなの?」
「そーなんじゃないの?で、戦技って何?」
「戦闘技術訓練の略だよ。そんくらい予想しなよ!」
「なるほど、戦技は略なのね。」
「あんたって・・・・大物になれるわよ・・・・」
「そりゃどーも、ミナはこれからどうするの?」
「特に決めてないけど。」
「じゃあ一緒に昼飯探しに行かない?」
「なんで食べに行こうじゃなくて探しに行こうなの・・・・?」
「ミナはどこで飯が食べれるか知ってるの?」
「それは知らないけど。」
「このバカみたいに広い学園内で適当に歩いて昼飯にありつけると思う?」
「あー・・・・確かに。探すという表現がピッタリな訳だね。」
「そゆこと、それでどうする?一緒に探す?」
「一緒に探すよ。」
「よしよし、旅は道ずれ、余は情け。これで迷子になってもなんとかなりそうだな。」
「何言ってんだよ・・・・まったく。」
「そういやさ・・・・」
「ん?」
「第2戦闘訓練場ってどこ?」
「・・・・さあ?」
「・・・・ミッション発令。昼飯を確保し、目的地である訓練場にたどり着け。」
「・・・・5時間で辿りつけるかな?」
「さあ?・・・・ホント広過ぎだよな、この学校。」
「ホントだよね・・・・」
「「は~・・・・」」
俺達はまずは案内板を探して歩き始めるのであった。
この学校の地図、どっかに落ちてないかな・・・・




