29 リアル筋肉装甲の試練
28話29話30話の3話を更新しました。
試験開始時刻まであと5分。
なんとか俺達は第3広場まで辿り着いたのだった。
(マジで遅刻ギリギリじゃんか・・・・ここまでくるのに校舎を10棟くらい通り過ぎたぞ・・・・)
「それでは今より王宮学術学部の試験を開始する。入試者はここに集まれ。」
ちょび髭を生やしたゴリマッチョの老人が大声で指示した。
どうやらあの人が学長先生らしい。
俺の異世界の学長イメージでは白鬚生やした魔法使いの姿を勝手に思い描いていたのに、本物は全然違って筋肉モリモリのバリバリの前衛職って感じの老骨様でした・・・・。
「レン、頑張って!」
「おう~。」
俺は学長先生の指示された場所に行く。
周りには同じ入試者だろうか?20人ほど人が集まってる。
そのどいつも身なりがかなり良い。
周りの親も貴族みたいだし、入試者の大半は貴族の息子や娘らしい。
「おい、平民が混ざってるぜ。」
「身の程を知らない奴だな。これだから平民は嫌いだぜ」
当然のように冒険者風の格好をした俺はこの中じゃ目立ってしまう。
「それでは試験を始める。試験内容は私に己の実力を示せれば合格だ。まずは誰から挑戦する?」
「それでは僕が。」
貴族の子供が前に出て剣を構えた。
どうやらこの貴族の子は剣で入試を受けるらしい。
「剣か、それでは本気で私に切りかかって来い。遠慮はいらん。殺す気で来い。」
「・・・・それでは行きますっ!」
貴族の子は剣を大大上に構えて大きく振りかぶったが、学長先生はその場を動かず防御もしないでそのまま身体に剣を受けた。
(えっ!マジですかー!)
そして俺はとんでもない光景をみた。
学長先生を切り叩こうとしたその剣は学長先生の鍛え抜かれた筋肉の皮すら切ることもできずに止まっていたのだ。
(筋肉すっげーーーーー!!!)
なにあのリアル筋肉装甲・・・・
「まだまだだな。力、速さ、技術どれもなっとらん。失格だ。」
貴族の子は茫然としている。
まー、確かに全力で切り叩いたのに傷一つ負わせれなかったらビビって当たり前か。
貴族の親が茫然として動かない子供を引きずってどこかへ走り去ってしまった。
なにこの試験・・・・
まさか学長先生に傷を負わせたら合格なんてことはないよね・・・・?
次に挑戦したのは魔法使いの貴族の男の子だったが、学長先生はその子の放ったフャイヤーボールを食らっても服すら燃えてなかった。
「まだまだだな。せめて服くらい燃やしてみせよ。失格だ。」
こんな感じで次々と学長先生に挑戦していったが槍で突こうがハンマーで叩こうが風魔法で切り裂こうとしてもすべて受け止め、そして無傷で失格宣言をしていた。
この人ホントに人間か?
そしてここまで見て思ったのは、どうも試験を受けている貴族達の実力が低い気がする。
どうやら貴族達にとっても王宮学術学部に入れれば箔が付くらしく、ダメ元でも貴族の親が自分の子供に受けさせているようだ。
だから学長先生が直接試験を行って貴族達から文句が出ないようにしているみたいだ。
中には勉学が得意で戦えない試験者もいて、そういう人達には学長先生が問題を出し、答えれれば合格としていた。
まー、誰も問題に答えれずに失格となっていたが・・・・
ちなみにその問題は1冊の本を取り出して、この文章を読んでみろ。というような問題だった。
ちらりと見えたが、普通の文章で俺でも簡単に読めたのに何故か貴族達はみんな読めなかった。
何故あんな簡単な物も読めないんだよ・・・・
お前らどんだけ勉強サボってきたんだ・・・・
次に挑戦したのは貴族の女の子だった。
この子は他の貴族よりも更にゴージャスで高貴な格好をしていた。
「シェルフィーユ嬢か、公爵家の娘の噂は私にも届いておるよ。その噂が真実かどうか私に示して見せよ!」
公爵家のお嬢様だそうです。
「それでは行きますわよ。学長先生」
そう言って公爵令嬢は雷の魔法を唱えた。
「轟け雷、我に仇名す者に天誅を!サンダーフォール!」
途端に学長先生の頭上に魔法陣が展開され、そこから轟音と共に巨大な雷が撃ち落された。
学長先生は今度は自分の周りに魔法の障壁みたいなのを展開してこの攻撃を防いだ。
しかし、完全に防ぎきれず障壁から漏れた雷が学長先生を襲った。
それでも学長先生は攻撃が終わった後もピンピンしてたから化け物具合がわかる。
「ふむ、噂通りの雷魔法の使い手のようだな。合格だ、シェルフィーユ嬢」
「ありがとうございますわ。学長先生も素晴らしい防御能力ですね。」
おおー、合格者が出た。
試験に合格するにはあのレベルが必要なのか・・・・
俺大丈夫かな?
そして到頭残す試験者は俺一人となった。
うう、緊張してきた。
「君で最後だな。君は何を持って挑戦する?」
「自分は召喚術で挑戦させていただきます。」
「ほう、君は召喚士なのか?良いだろう。その術で掛かってきなさい。」
「それでは行きます。」
俺は無詠唱でキラーウルフを46体とドラゴンニュート2体、ついでにグリーンキャタピラ2体を召喚した。
「っ!?・・・・ほう、これは期待できそうだな!」
学長先生やその付き添いの教師達、周りで観ていた貴族や学校の生徒がみんな驚いていた。
俺そこまですごいことしたのかな?
あと学長先生・・・・目が怖いです。
いきなり学長先生の目はギラギラしだした。
目を合わせたら失神しちゃいそう。
俺はグリーンキャタピラを正面から突撃させ、キラーウルフを23体づつに分けて挟み込むように突撃させる。
そしてドラゴンニュートは頭上からブレスを吐いてもらって地上の魔物の動きを隠してもらう。
だが学長先生はドラゴンニュートのブレスを無視してグリーンキャタピラに突っ込んだ。
(ブレスを直に浴びて無傷かよ!マジチート!)
だがチャンス。
学長先生はグリーンキャタピラと背後に回ろうとしているキラーウルフに気を取られてこっちを見ていない。
俺はこっそりベビーデビルを7体召喚した。
学長先生はグリーンキャタピラを瞬殺で素手で葬ると、キラーウルフを迎撃するため後ろを向いた。
チャンス!
俺はその背中にベビーデビルのフャイヤーボールの一斉攻撃を命令する。
「むっ!?いつの間に!?」
魔法は学長先生に直撃したがやはり無傷だった。
「いいぞ。もっとできるだろう?」
背後にから攻撃しだしたキラーウルフ達は、自分たちの攻撃が効かないと悟ると遠巻きにして囲んだ。
しかしその包囲も学長先生の前では無意味で次々とやられていく。
更にはキラーウルフを掴むと上空でブレスを吐いていたドラゴンニュートに物凄い勢いで投げつけた。
キラーウルフとドラゴンニュートがぶつかり合って落下する。
あれはもう生きてないだろう・・・・
学長先生はもう1匹のドラゴンニュートにも同じ要領でキラーウルフを投擲して落下させた。
ヤバイなこれは・・・・
このままだと全滅させられそうだと思い、仕方ないのでヘビートロルとブラックマンティスを召喚した。
「っ!?何度も驚かせてくれおるな!そんな上位の魔物も従えておったか!」
「全力で行きます!」
俺は魔物を学長先生に嗾けようとするが、
「いや、もういい。実力はわかった。合格だ。すまんな、つい熱くなって君の魔物を何体も殺してしまった。」
合格判定がでた。
よかった~。
「いえ、気にしないでください。」
実際ドラゴンニュート2体とキラーウルフ22体を殺されてしまったので(グリーンキャタピラ2体はどうでもいい)かなりの被害なのだがあの人間兵器に弁償しろだとか言えないわ。
「それでは試験は終了とする!合格者は入学手続きを済ませるように!以上解散!」
ふ~、終わった終わった。
「レン、お疲れ様。凄かったね・・・・学長先生」
「あの人ホントに人間?」
「人間以外になにがあるのよ?」
「改造人間とか魔物と融合してたりとか。」
「何バカな事言ってるのよ・・・・」
そんなこと話ているといきなり貴族の男が割り込んできて、
「おい、平民。貴様の魔物を私が買ってやろう。いくらだ?」
「え?売り物じゃないんで売れませんよ。」
「平民如きが私に意見するな!さっさと値段だけ言えばいいんだ!」
「・・・・じゃあ金貨1000枚」
「調子に乗るな!ったくこれだから平民は!私が値段を決める!銀貨50枚出そう。さっさと売れ。」
うわ~・・・・メンドイな~・・・・
逃げるか?
でもまだ手続きしてないしな・・・・
「ごきげんよう。」
すると隣から声を掛けられた。
「っ!?シェルフィーユ様!」
貴族の男が慌てだす。
声を掛けてきたのは公爵令嬢だった。
「あ、こんちわ。何でしょうか?」
「まだ手続きしていませんでしょう?向こうでやってくれるそうですので行きましょう。」
「あ、はい。」
俺は公爵令嬢の後について行く。
助かったー。
さすがに貴族の男も公爵令嬢に声を掛けられた俺にあれこれ言うことはしてこなかった。




