2 異世界ファーストコンタクトはカマキリさん
さて、私綾義蓮はオタクである。
性格はめんどくさがりの他力本願を理念とするダメ人間である。
両親はすでに他界しており、一人暮らしで地元の徒歩6分の高校に通ってた。
お金は両親の遺した財産が大学に入学しても余裕なくらいあったので困らなかった。
面倒事は避けて自分ではあまり動かず他人が動くのを期待するタイプの人間で、趣味など自分の好きなことにのみ、積極的な人間だ。
容姿は173センチの細身でどちらかといえば中性的なそれなりに整った顔立ち。
しかし消極的でオタクなため、学校では根暗のレッテルをはられモテたことはない。
それどころかイジメの対象にされることもあった。
友達も少なく俺にとって学校はそこまで楽しいものでもなかった。
面倒事を避けているのに俺に絡んでくる不良の同級生にそんな俺を見てニヤつくクラスメイト。
ほんと辟易する。
そんな中では自分で動いても何かといちゃもんつけられるだけなので、何かあっても他人に任せる。
自分に何かあっても先生やオタクゆえに専門的な知識の豊富な友達の力をあてにしてきた。
そんな俺が今どこにいるかといると
「ギァー!」
森の中で2メートルはあろうかというカマキリに追われていた。
(なんでやねん!異世界転移早々ハードすぎるだろ!)
俺は、ゴットな老人に転移させられて気づいたら森の中にいた。
しかし木がの一本一本がデカい。20メートルはありそうだ。草木も見たことのない形をしている。
薄暗く不気味で本能的にここはヤバいと感じる危ない雰囲気が漂っていた。
説明してもらおうと隣を見たがそこには威厳あるゴットな老人ではなく人など容易く切れそうな鎌状の前足を持つ黒色の体をもったカマキリさんが出迎えてくれました。
本当にありがとうございましたこんちくしょう!
走る俺。追うカマキリさん。逃げる俺。前足ブンブンカマキリさん。
50メートルほど走ったあたりで
「何を遊んでおるんじゃ」
とゴットな老人が呆れ顔でこっちを見ていた。
(どこをどう見たら遊んでるようにみえんだよ!)
「生死の瀬戸際だわボケ!早く助けろ!」
「それが人にものを頼む態度か。ったく近頃の若者は・・・・」
「あんたのせいだろが!」
神様は俺の逃げてる進路上に立って持っていた杖をバットのように構えた。
俺はそこを通りすぎるとカマキリさんはゴットな老人に狙いを定めてその鎌を振り下ろそうとした
。
しかし振り下ろされる前に神様はプロ野球選手さながらに杖の芯でカマキリさんを捉えて20メートル程ぶっとばした。
「魔法とかで倒さないのかよ!なんのための杖だよ!俺の中での神様のイメージが崩れ去ったわ!」
その様子を後ろから見ていた俺は盛大にツッコんだ。
「ホームラ~ン!今日は調子が良さそうじゃ」
何この人マイペース過ぎる・・・・
カマキリさんは20メートル先で伸びていてしばらくは起きないだろうに思えた。
「なんなんだよこいつは?」
「魔物じゃよ、魔物」
「マジかよ・・・・ほんとに異世界なのか?」
「異世界じゃな。まぁ、ようこそ儂の世界グランガルンへ。これから先、お主が住む世界じゃ」
「ちょっと待て、拉致っといて何がお主が住む世界じゃ、だよ!元の世界へ帰せ!」
「無理じゃ」
「なんで!」
「お主の住む地球とグランガルンは一方通行で地球には帰れん」
「なっ・・・・」
「あきらめるがよい。この世界に来た以上もう戻れん。」
「ふざけるな!あんたが勝手に連れて来たんだろうが!」
「まーまー、とりあえず話を聞かんか。この世界は地球でいう中世のヨーロッパの時代に魔法や魔物がいる世界という認識であってるじゃろう。まー、地球ではいわゆる異世界転移した物語を想像すれば容易じゃろう」
「マジかいな・・・・ていうか何故俺なんだ?」
「それはちょっとした事情があってな、まー大人の事情・・・・いや、神の事情というやつじゃ」
「その事情ってのはなんだよ?」
「今こうして神である儂と話しているのがその事情じゃ。」
「なんだよそれ・・・・どういうことだ?」
「神である儂と話せるのがグランガルンにいなくてな、それで地球まで行って儂と話せるほど相性の良い人間を拉致してき・・・・見定めて連れてきたわけじゃよ」
本当にどうしてこうなったんだよ・・・・
俺が何したっていうんだ。
異世界に連れてこられてなにさせられるんだ?
テンプレだと魔王討伐とかか?
今までいろいろ他人任せにした罰かな・・・
絶対メンドイことを強制される
自分の世界でもないところを救うために命なんかかけたくないな
ちくしょう、どうすればいい・・・・
「まー強引に連れてきたのは反省している。だが後悔してないぞ(キリッ)」
「マジでくたばれ糞爺!」
「まーまー落ち着け、ゲキ怒プンプン丸なのはわかったから」
「やかましいわ!」
神様がこんな奴で大丈夫なのかよこの世界・・・・
てかなんで神様が知ってんだよ・・・・
「それで俺をこのグランなんたらに連れて来てどうするつもりだ?」
「グランガルンじゃよ。どうもせん。お主の自由に生きるがよい」
「えっ、いいの?」
「うむ」
「じゃあマジでなんで連れて来たんだよ?」
「ちょっとした頼み事はするが、基本は自由に過ごせばよい」
「じゃあその頼み事で面倒ごとに巻き込まれるわけか?」
「否定はせんが肯定もできんな。お主次第じゃ」
「わけわからん・・・」
「まー頼み事というよりクエストのように思ってくれればよい。クエストを受理するかどうかわお主次第じゃから受けなくても別によい」
「そんなんでいいのかよ」
「そんなんでいいのじゃ」
「じゃああんまり俺の必要性あまりないんじゃないのか?やってもやらなくてもどちらでもいい程度のことなんだろ?だったろこんな強引に連れてこなくてもよかったんじゃないのか?」
「まーそう言うでない。どうせ地球にいても幸せというわけじゃないじゃろ?」
「うっさいよ!」
悲しきかな地球ライフ
「まーまずはいわゆるチートを与えようかのう」
「お、やっぱりあるんだ。そーゆうの」
「せめてもの詫びじゃな」
チートもらえるそうです。
やったね蓮ちゃん。
異世界無双も夢じゃない。
・・・・やんないけどね。