俺と奴らの華麗なる攻防戦
思いつきで書きました!もしかしたら続くかもしれません。
暇つぶしによんでやってください!
俺の住んでいる『鳴子村』は物凄い田舎である。一応電気は通っているが、隣の家までの距離は50メートル以上離れているし、コンビニだって一番近くて原付バイクで30分。
俺の通う高校もいかにも田舎らしく、全校生徒は45人、校舎は木造一階建て。恐らく全校生徒全員が品性良好。グレようものなら一日でその話が村民全体に伝わりみんなからあからさまに心配される始末。田舎の情報網半端ない。
まあつまり、この村には良くも悪くもみんなが家族みたいなものだ。尤も思春期の子供からしたら反発対象なのだろうが。
そしてこの村には沢山の伝説伝承がある。
村に流れる川には河童がいる。家には座敷童が、家鳴りが住んでいる。山には雪女や山姥が…
といった風に挙げていけばキリがないほどだ。きっと他の人からしたら鼻で笑うようなものかもしれない。
だがこの村には本当に彼らがいるのだ。
嘘だと思ったとしても事実だから仕方がない。
彼らはたびたび人を襲うことがある。しかしその大抵は彼らの土地を荒らしたものであったり、勝手に縄張りに入ったせいだ。
まあそうでなくとも襲うときは襲うが、そのときは人にもいろいろ対処法がある。だがその話はまたにしよう。
「ただいま。」
木の引き戸を開けて靴を脱ぐ。
廊下を歩こうとして前を向くと
『ばあっ!!』
目の前に天井下がりが現れた。
こいつは人を驚かそうとするだけで害は無いのだが、害は無いのだが天井を遠慮なく突き破って現れる。一人暮らしの俺としてはそう何度も天井を壊されては堪らない。
「自分で直せよ。」
完全に俺の家に住み着いてるあいつに僕は最早一切驚くこともなく一瞥だけして修理を命じた。
『…はい』
背後からショボーンという効果音が聞こえた気がしたが気にしない。
居間に入って本を読み始めるとどこからか視線を感じる。それも一つや二つじゃない、何十という目が僕を見ている。
この家に住んでる妖怪は結構いるが、家の主を不躾に見る奴らはいないはずということは
「新入り、か?」
視線の元を辿ると障子がある。障子を開けて廊下を見る、が誰もいない。
「あれ?」
障子を閉めると視線の主に気が付いた。
「うわぁ…」
障子に沢山の目が張り付いておりこちらを見つめていた。
「びっくりした。」
『知っているか小僧、驚いた人間はそんなテンションの低いリアクションをとらない。』
「どちらかと言えば口ないのに喋ってることに驚きだ。」
まさしく壁に耳有り障子に目有りといったところか
「百々目鬼だな。」
百々目鬼…百の目を持つ鬼。しかし身体は目だけでありなんの害悪もない小妖怪。
『ふんっ俺様を知っているとはなかなかだな小僧。…この屋敷はこの俺が乗っ取った!速やかに屋敷から出ていけ!』
「帰るなら玄関はあっちだぞ。」
『話しを聞いてたか小僧!!』
「聞いた上の最善の判断だ。」
ていうか乗っ取ってるのは障子一枚程度なのに、ここまで調子に乗り自分の力を過信するとは…
『早く出て行かないとひどい目に合わせるぞ?!』
「目しかないお前にできる酷いこととやらを是非とも教えてほしい。」
百々目鬼は妖怪というだけで俺が怖がると思っていたらしく目に見えて焦る。
『え、えっと…お前のことガン見し続けるぞ!』
「…で?俺は特に困らないんだけど?」
それにしてもコイツには瞼があるのだろうか?もしなければドライアイになっていそうだ。
『と、とにかく困らせてやるからな!』
「そう。」
あ、瞬きした。
『ちょ、お前、何を、いたたたたっ瞼ひっぱんな!痛い!』
「おお!やってみるものだな。」
『子供の好奇心が残酷だ!』
あれから二時間、丁度夕飯を作る時間帯だ。百々目鬼はめげずに俺を見続けている。ウザい以外には特に害はない。だがそろそろ飽きてきた。何らかの対処をしよう。
まあその前に夕飯なのだが…
「そうだ、カレーにしよう。」
そう決めたら庭の畑に行きジャガイモと人参、玉ねぎを収穫する。店の少ないこの村なので肉も畑で採れたらいいのに…と切実に思う。
台所に行き野菜を切っていく。玉ねぎを切るときにニヤリと笑い、障子の前に机とまな板を置いてその上で切り出す。
百々目鬼は相変わらず俺を見ている。
トントントントン…
リズミカルに切り上げていくと百々目鬼の目が徐々に潤んでいく。それに気づきどんどん玉ねぎを切る。
トントントントン…
『き、貴様ぁ何のつもりだ!?』
「何ってカレーをつくってるんだが。」
『何故俺の前で作る!?』
「いや、近い方がお前も見やすいかな~っと思って」
『ぐぬぅぅ…』
トントントントントントン…
意にも介さずニヤニヤしながら作業を続ける。
遂に百の目から涙がこぼれ落ちた。
ふっ、詰んだな。
『畜生、覚えてろ小童!!』
「ええっ!?」
百々目鬼はすぽーんっと障子から飛び出した。飛び出したときには身体は一つであったのだが、その身体は『ゲゲゲの鬼○郎』の親父殿にそっくりであった。
そのまま短い足で玄関へ逃げていった。
その姿に愕然としてしまった俺はきっとまだまだ未熟なのだろう。
切り終わった玉ねぎや野菜肉を鍋に入れてカレー作りを再開する。
カレーの良い匂いが鼻をくすぐる。何時もより玉ねぎ多めのカレーは普通においしかった。
最近俺に一つ趣味ができた。基本的に驚かされることばかりではあるが、それなりに楽しい。それは村にいる微妙に迷惑な妖怪達を神仏の力に頼る事無く涙目にすることだ。
そんな木下出雲、高校一年生の華麗なる生活のとある一日。
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