ローテーション
「好きです」
「嘘はやめろ」
目の前の彼女の言葉を、俺は即座に切り捨てた。それに彼女は泣きそうな顔をするけれど、俺に言い直すことなどなかった。
舞い散る雪を肩に積もらせながら、彼女は再び顔を上げる。
「ホントなの。嘘なんかじゃない」
「だけど、俺はおまえなんか好きじゃない。それに――」
ここで、俺は口を噤んだ。不自然な止め方だったが、彼女はそれに気づく余裕を持つ顔をしていなかった。
――それに、おまえは俺を振ったじゃないか。
言葉にしなかったことが奇跡のような、そんな激情。それを分厚い仮面の下で押し込める。
なんてことはない。
彼女は、ついに涙をこぼす。
「好きなの……」
その言葉は虚空に消える。
「――っ」
彼女は顔を背けて駆け出した。
その姿を、俺は去年の俺と重ねあわせた。
気がつけば、走りだしていた。
少し離れたところで歩いていた彼女を、後ろから抱きすくめる。
そして、言った。
「ごめん。俺はただ、拗ねていただけみたいだ」
おまえも去年はそうだったんだろ?
「ごめん、俺もおまえが――」
そして、今年も終わることを告げる。
そして、彼女は毎年のように笑うのだ。
「……来年はまた私が振る番ね。もう、寂しかったんだから」