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群青の空の下で  作者: 花 影
第1章 群青の騎士団と謎の佳人
7/156

5 晴れた空の下で2

「リーガス、ルーク、あの娘さんだろう? 偵察中に助けた女性は」

 上司の姿が見えなくなると、キリアンが2人に話しかける。

「ああ」

「防御結界出来るって本当か?」

 横からクレストも割り込んできた。

「そうだ。団長が弾かれるくらい強力だった」

「力が暴走していたらしいけど、それでも訓練を受けずにできるものではないよ」

 リーガスとルークがその時の状況を思い出して語る。その時の光景は彼らに相当な衝撃を与えていたようだ。

「それだけじゃあない。さっき、女大公様のお館で、彼女はグランシアードと俺のエアリアルの力を感じ取った竜気だけで言い当てた」

「え?」

 立ち話していた一同の視線はルークに集まる。

「本当だよ。団長も驚いていた」

「絶対、大母補の教育を受けているよな」

 リーガスの断言に皆、頷いた。

 大母補とはダナシア神殿の最高位、大母と呼ばれる女性の候補者の事である。神殿の実質的な運営は高位の神官達によって行われ、大母は女神ダナシアの化身として神殿の象徴としてあがめられ、祭司や予言を司っている。

 良家の子女の中から特に竜気の力が強い娘が集められ、まずは神殿の総本山である礎の里で数年間教育を受け、その中から大母が選ばれる。例え選ばれなくてもその補佐として大母に支えるため、大母補に選ばれるだけで大変な名誉とされていた。

 大母の在位期間は約10年と定められているので、国を挙げて候補者の教育に力を入れているところも少なくない。もちろんタランテラも例外ではなく、コリンシアは次代の候補と期待されていた。

「あの物腰からして良家のお嬢様に間違いないでしょう」

 ジーンが一同に飲み物を持ってきた。彼女自身も裕福な家庭に育ち、小さな頃から礼儀作法を厳しく躾けられていたので、フロリエの所作がとってつけたものではないことにすぐに気付いたのだ。

 ちなみに、彼女の両親は大母補にするべく娘を育てたのだが、幼いころから礼儀作法だけでなく兄達に混ざって剣術を習っていたジーンは、大母補は性に合わないとあっさり否定。そして子供の頃からの夢だったパートナーの飛竜を得て、今では立派な竜騎士になっていた。

「確かに、そんなお嬢様があの時期にあの場所にいる事自体が異常だが、副総督殿の懸念は除外してもいいのではないか?」

「賛成だな。団長に近づくためにわざと遭難した風を装うなんてありえないし、密輸や密猟に関わるにしてもあんな軽装でこんな場所に来る事はありえないだろう」

 隊長格2人の会話に他の団員も黙って頷く。彼らは今日の計画を知った副総督から、フロリエは本当に危険人物ではないのか確かめて来るように命じられていた。エドワルドやアスターには言いづらいらしく、彼らを密かに呼びつけ、肩書を盾にそんな命令を下したのだ。

「彼の一番の心配は団長が彼女になびかないかだろう」

「本人はバレていないつもりでしょうけど、自分の娘を団長の奥方に据えて、いずれは自分がロベリアの総督になろうって魂胆は丸見えなのよね」

「まぁ、こう言ってはなんだけど、副総督のお嬢さんよりフロリエさんの方が美人だと思うね」

「同感」

 野心家の副総督も彼らにかかっては形無しである。確かに彼の娘は美人の誉れ高いが、エドワルドの気を引こうとするライバルたちを陰湿な嫌がらせで蹴落としていると噂されている。そして、その噂は真実であることを第3騎士団の面々は知っていた。

 一方のフロリエの事を彼らも良くは知らないが、それでも彼女が心優しい女性だということはコリンシアや飛竜への接し方で理解できた。そしてその彼女の事を彼らの上司が好意を持ち始めているのを感じ取っていた。

「ただ、ちょっと心配です」

「何が?」

 ジーンの言葉に皆首をかしげる。

「あの狸親父が絶対に黙っていないと思うの」

 彼らがいくらフロリエの潔白を証言したところで、結局は自分が信じたいことしか信じようとしないだろう。さすがに直接的な危害を加えることはないと信じたいが、それでも彼女の身に危険が及ぶ可能性は捨てきれない。今から心配することではないのだが、それでも一同はそんな無用な心配をするくらい彼女に好感を持っていた。

「彼女は女大公様のお気に入りでお館に住んでいるのだろう? それなら心配いらないのではないか?」

 一人鍋の番をしているゴルトがボソリと言う。サボって立ち話している仲間たちに、いい加減手伝ってもらいたいのだろう。

「そうか…そうよね。あの方の前ではあの狸親父も手を出しにくいかも」

 グロリアに正面から挑んで敵う人物などそうはいない。それに副総督自身がグロリアを苦手としているのも彼らも良く知っていた。

「そうだな」

 第3騎士団の面々は、それで自分達の懸念を納得させる事にした。




 林の中の小道を3頭の馬がのんびり歩いている。先頭はアスターが立ち、エドワルドは娘を乗せたまま殿しんがりを務め、フロリエの乗った馬はその間を大人しく歩いていた。フロリエはこぶに触れても視界にエドワルドの姿が入らないので、初めて彼の秀麗な姿を見た胸の高鳴りをどうにかしずめる事が出来てホッと胸をなでおろした。

「ここで貴女を助けました」

 湖のほとりにある少し開けた場所に着くと、アスターが口を開く。フロリエは瘤に触れて馬の目を通じて辺りを見回す。針葉樹がまばらに生え、白い花をつけた下草に覆われた春の景色が視界に飛び込んでくる。美しい光景なのだが、なんだか背筋が冷たく感じる。

 遅れて着いたエドワルドが馬から降り、道中ずっと歌を歌ってご機嫌なコリンシアを抱き下ろした。一面に咲く白い花に喜び、小さな姫君は早速父親に贈る花冠を作り出した。娘を見守るエドワルドの姿が視界に入り、再び彼女の鼓動が早くなってくる。

「この木だったな」

 フロリエの胸の内を知る由もなく、エドワルドは一本の大木に近づく。彼に変わり、一生懸命花冠を作っているコリンシアを見守りながら、アスターはさりげなく辺りを警戒している。

「この木を背にして貴女は立っていた。腕に小竜を抱いてね。青銅狼はこの辺りまで迫っていたかな」

 エドワルドが助けた状況を説明し始め、大木から数歩離れて妖魔がいた場所も教えてくれる。胸の高鳴りを抑えつつ、努めて彼を意識しないように話を聞いていたが、やがてキーンという耳鳴りと共に鈍い頭痛を感じ、どうしようもないほどの恐怖感が押し寄せてくる。

「あ……」

「フロリエ、どうした?」

 エドワルドが彼女の異変に気づいて近寄ってくる。

「いやぁー!」

 馬との同調が乱れ、視界が暗くなると同時にその恐怖は最高潮に達する。フロリエは頭を抱えて苦しみ始め、その上体が傾いて馬の背から滑り落ちる。

「フロリエ!」

 エドワルドが間一髪で抱き留めるが、彼女は気を失っていた。

「戻るぞ。コリンを頼む」

 エドワルドはフロリエを抱えたまま、彼女が乗っていた馬の背中に飛び乗り、すぐに天幕に向けて走らせる。

「フロリエ……」

「大丈夫ですよ」

 アスターは心配そうに立ち竦むコリンシアを抱き上げると、乗ってきた馬にまたがり、もう一頭も操りながらエドワルドの後を追う。この狭い林道を全力で飛ばして戻ったらしく、エドワルドの姿は既に見えなくなっていた。




 その頃、残った騎士団の面々は、屋外に出したテーブルに昼食のセッティングをしていた。彼らの半数は仕事の一環でここに数日間滞在していたのだが、今日の昼間は休暇として全員でこのピクニックを楽しむことにしていた。

 上司は出かけたばかりでしばらく戻らないだろうから、のんびりとしていたのだが、林の向こうから馬を全力で走らせてくるエドワルドを見て慌てふためく。

「団長?」

 彼が腕にフロリエを抱えているのに気付き、目のいいルークが声をかける。

「フロリエが倒れた。何か気付けになるものはあるか?」

 フロリエを抱えたまま馬を降りると、エドワルドは天幕に向かう。キリアンとクレストが天幕のクッションを並べ替えて彼女が横になれるように整えたので、彼は静かに彼女を降ろす。

「こちらを」

 ジーンがワインの入った杯を差し出す。エドワルドはそれを受け取ると、フロリエの上体を優しく抱き起して口の中へワインを流し込む。けほっと小さく咳をして彼女は意識を取り戻した。

「気が付いたか?」

 エドワルドが少しこぼしたワインを手巾で拭きながら声をかけると、フロリエはあわてて体を起こそうとする。

「す……すみません、またご迷惑を……」

「無理をするな、横になっていなさい。……寒いのか?」

 フロリエが震えているのに気付き、エドワルドは自分の外套を脱いで着せ掛ける。そして他にかけるものを持って来るように部下に命じるが、気を利かせたルークが既に毛布を持って来ていた。

「いえ、大丈夫です。ただ……」

 そうは言うものの、彼女はまだ震えている。エドワルドはルークが用意した毛布も体にかけた。

「ただ、どうした?」

「ただ、怖くて……」

「怖い?何か思い出したのか?」

 答えを声に出せず、フロリエは首を振る。

「フロリエ!」

 そこへコリンシアが天幕の中に駆け込んできて、震えているフロリエに抱きつく。

「どこか痛いの? 大丈夫?」

 コリンシアの問いかけに、フロリエはギュッと抱きしめて答える。

「大丈夫です、コリン様。お気遣いありがとうございます」

 どうやらコリンシアが一番の薬になったようで、次第に震えは収まってフロリエは落ち着きを取り戻した。しかしながら、彼女の顔色はまだ良くない」

「気分が優れなければ、館に帰るか?」

「えー?」

 エドワルドの言葉にコリンシアが残念そうな声を上げる。

「大丈夫です、殿下。もう落ち着きました。皆様、ご心配おかけしまして、申し訳ございません」

 見えなくても人の気配を感じ、天幕の入口から心配そうに覗き込んでいる騎士団員にもフロリエは頭を下げる。

「……無理はしない方がいい。少し横になりなさい」

「はい」

 エドワルドが気を使ってくれているのが分かったので、フロリエは素直に従って背中に当てられたクッションにもたれかかる。コリンシアもぴったりと寄り添うように隣に座ったので、ルークが持ってきてくれた毛布を彼女にもかけた。

 震えは完全に収まったようで、エドワルドは少しだけほっとする。ルークが毛布をたくさん持ってきてくれていたので、フロリエは自分に着せ掛けてくれていたエドワルドの外套を外し、礼を言って彼に返した。

「外にいる。ゆっくり休んでいなさい」

 そう言うと、エドワルドは他の団員も外に出るように命じて天幕の入口を閉じた。

「殿下、フロリエさんは?」

 ちょうどアスターが3頭の馬を元の位置につないで戻ってきた。

「今は休ませている」

 エドワルドは疲れたように外に用意されていた椅子に腰かける。すかさずワインが入った杯をジーンが差し出してくれ、彼は礼を言うとそれに口をつける。

「連れて来たのはまずかっただろうか?」

 エドワルドにしては気弱な発言である。

「ひどく怖がっていた。何も見えない状況で妖魔に襲われたのだから、無理もないのかもしれない」

 ゴルトがワインのボトルと切ったチーズを無言で差し出す。エドワルドの向かいに座ったアスターにも杯を用意し、他の団員は無言で立ち尽くしている。

「ですが、わかったこともございます」

「なんだ?」

 エドワルド空になった杯に手酌でワインを注ぎ、ついでにアスターの杯もワインで満たす。彼も喉が渇いていたらしく、杯の中身をグイッと飲み干して答える。

「あの方はおそらく、あの時連れていた小竜を視力の代わりにしていたのではないでしょうか? 馬を通して見えるのですから、飼いならした小竜なら生活に支障はない程度に見えていたのでは?」

「なるほど。あの天晴あっぱれな小竜にはそんな役割もあったか……」

 あの日、最後までフロリエを守ろうとした小竜の亡骸は、アスターがロベリア正神殿にある妖魔討伐で命を落とした竜や馬を弔う竜塚でとむらった。その小竜の最期は第3騎士団の団員に伝えられ、弔いの儀には団員の大多数が参加していた。

「小竜を連れてきているか?」

 団員を見渡してエドワルドが尋ねると、ジーンが自分の小竜を連れて来た。

「彼女が起きたら試しに使って頂こう。専用の小竜はまた探してみるか」

 近年、乱獲によって野生の小竜が激減し、捕獲出来る人間と頭数が各国の協定で定められ、普通には入手しにくくなっていた。騎士団で使用されるような小竜は、適性を試したうえに特別な訓練を受けているのでかなり値が張る。視力代わりにするのであれば、適性を外された愛玩用で、ある程度躾けられれば十分なはずである。

「ロベリアで探してダメだったら、皇都で探してみるか……」

 来月は皇都で夏至祭が開かれ、エドワルドは病気療養中の父親の見舞いも兼ねて出席の意向を示していた。特に今年は夏至祭のイベントの華である飛竜レースにルークが参加する事が決まっている。彼の頭の中では皇都での予定がもう一つ組まれたようだ。



 その後、天幕内の様子をジーンがのぞいてみると、フロリエがうとうとしているコリンシアに子守唄を歌ってやっていた。朝早く起きたうえに、はしゃぎすぎたので眠気がきたのだろう。お昼はコリンシアが起きるまでおあずけとなり、団員達はそれまで鍛錬をしたり、魚を釣ったりして過ごしていた。

 一時して天幕の入口が開き、コリンシアとフロリエが出てきた。少し休んだのが良かったのか、フロリエの顔色もだいぶ良くなっていた。

「お腹すいた」

 目をこすりながら父親の元に歩いてくる。どうやら空腹で目が覚めたらしい。

「それでは、お昼にしようか?」

 エドワルドは娘を抱き上げ、自分の膝に座らせる。

「お待ちくださっていたのですか?」

 ジーンに手を引かれながら歩いてきたフロリエは驚いたように尋ねる。

「皆で食べた方がうまいからな」

 フロリエが席に着くと、エドワルドの指示でジーンは自分の小竜を彼女に差し出す。

「それで見えるか試してくれるか?」

「は…はい」

 戸惑ったように返事をして小竜を受け取ると、フロリエは小竜の気持ちをなだめるように頭から背中を優しくなでる。訓練を受けているだけあってすぐに小竜は落ち着き、気持ち良さそうにクルクルと喉を鳴らす。手慣れた様子に一部始終を観察していたエドワルドもアスターも目を細める。

 やがて小竜はフロリエの左肩につかまって大人しくなる。どうやらアスターの指摘した通り、小竜を目の代わりにしていたのは本当のようだ。肩の上にとまっていれば、視線はほとんど変わらないだろう。

「どうだ?」

 エドワルドの問いにフロリエははにかんで頷く。馬の目を通した時よりもはっきりと周囲を見渡せる。彼の顔もより鮮明に映し出し、彼女は気恥ずかしくて目をわずかにそらす。

 彼女が小竜を手なずけている間にテーブルには料理が次々と並べられていた。良く煮込んだお肉と野菜のスープに薄焼きのパン、香辛料で味付たあぶり肉と数種類のチーズ。デザートにはもちろん、オリガが用意してくれた蜂蜜入りのケーキが並べられていた。

「ごちそうだな」

「うまそう!」

 体を動かしていた団員達も集まり、簡単にダナシアへの祈りの言葉を口にして食事が始まる。

「口に合うといいのですが……」

 そう言って本日の料理長を務めたゴルトが薄焼きのパンにあぶり肉とチーズを挟んでフロリエに渡してくれる。今日は肩に小竜がいるので手探りをする必要もなく、取り損ねて落としたりひっくり返したりする心配もない。彼女は礼を言って強面の竜騎士からパンを受け取った。

「ありがとう。……とてもおいしいです」

 スープを一口飲み、手渡されたパンを一口かじる。豪快で野趣あふれる料理は、屋外で食べる珍しさもあっていつもより食が進む。コリンシアも父親に取り分けてもらいながら、お行儀を気にしなくていい分たくさん食べているようだ。

 見渡すと他の団員も楽しそうに食事をしている。山ほど盛ってあった料理はあっという間に無くなり、デザートのケーキまでみんなきれいに平らげていた。特にルークはデザートを嬉しそうにほおばっていて、なぜかエドワルドに小突かれていた。不思議なことに、こういった光景をなんだか懐かしく感じてしまう。

 食事が一段落すると、クレストが弦楽器を取り出しかなで始める。第3騎士団の中で最年長の彼は楽器の演奏を趣味にしていて、腕前はプロの演奏家に引けはとらない。ルークの一つ先輩になるキリアンがそれに合わせて笛を吹きだし、流行の歌をみんなで大合唱する。フロリエもつられてその伸びやかな美声を披露し、拍手喝さいを受けた。

 やがて舞踏の陽気なリズムに変わると、ジーンが恋人のリーガスを誘って踊り出す。厳つい大男のリーガスがコミカルにステップを踏む様はなんだかおかしく、笑いが起こる。団員達も手拍子で2人をはやし立て、つられたコリンシアも真似して踊りだした。

「踊らないか?」

 エドワルドがフロリエに手を差し出す。

「ですが……」

「体の力を抜いて、私に合わせればいい」

 そういうと彼女の手を取り、踊りに加わる。クレストが絶妙なタイミングで曲を変え、不安がるフロリエをエドワルドは完璧にリードして踊る。

「上手だね」

 肩に小竜を乗せたままなので、秀麗な顔を間近に見えてしまい、フロリエは顔が赤くなる。それでもエドワルドの巧みなリードのおかげでフロリエも自然と体がそれについていく。2人のダンスに他の団員は魅せられ、我を忘れて見とれてしまう。

「次の機会には是非ワルツを」

 エドワルドはそういうと、フロリエの手の甲にキスをして踊りを終えた。

 日が傾き始めたころ、ピクニックはお開きになった。後片付けは団員に任せてフロリエとコリンシアは一足先に帰る事になった。帰りはエドワルドにアスターが従い、コリンシアはファルクレインに乗りたがった。そのため、フロリエはまたグランシアードに乗ることになり、今度はエドワルドの前に座らされる。

「これを見せたかった」

 小竜をジーンに返していたので再び視界は暗闇に戻っていたのだが、上空でエドワルドに言われてグランシアードのこぶに触れると美しい夕焼けが目に飛び込んできた。

「きれい……」

「今日は…楽しんでもらえただろうか?」

 少しためらいがちにエドワルドが尋ねる。

「はい、とても……。殿下、ありがとうございました」

 背後にあの秀麗な人物がいるのだと思うとフロリエの胸は高鳴ってくる。それをどうにか抑えながら彼女は答えた。

 この日見た夕焼けは、楽しい思い出の締めくくりとして彼女の心の中に深く刻み込まれた。そしてグロリアの館に2人の淑女を送り届けたエドワルドとアスターは、夕食を辞してそのまま総督府へと帰っていった。



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