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群青の空の下で  作者: 花 影
第3章 ダナシアの祝福
139/156

12 罪と罰3

流血を伴う暴力シーンがあります。


 夕食はヘルミーナが腕を振るってくれた。野菜の煮込みと薄焼きのパンという、1年前では想像すらできないほど質素な内容だったが、今のニクラスにはこの上ないご馳走となっていた。

 互いに近況を報告していたが、不意に会話が途切れる。深く思いため息をついたヘルミーナが何か思い立ったように顔を上げた。

「ニクラス、あの子はどうなるのかしら……」

「わからん。ただ、フレア様からのお言葉では、対話を続けるようにとの事だった。私も今のままでは自分が食べて行くのがやっとであの子を養える余裕はない。近くの神殿に預けることになる。とにかく声をかけ続けてみるよ」

「そう……」

 ヘルミーナは力なく俯く。彼女達が幽閉の身になっても未成年のマルグレーテは比較的自由を許されていた。イヴォンヌの我儘でリネアリス家に招かれるのも珍しくなく、あの事件があった日も何の疑いもなくリネアリス家から来た迎えに娘をゆだねたのだ。それがまさかこんなことになるとは……。

「あの子にどこまで知らせている?」

 ふと、疑問になってニクラスは尋ねる。グスタフの訃報と共に彼の企みは伝えられている。元姑はねつ造だと言うが、ハルベルトの暗殺に始まる一連の騒乱を引き起こしたのは疑いようもない。

「お母様が必要ないと仰って、詳しい事はまだ何も……」

「もう成人をむかえるんだ。自分の家で何が行われて来たのか、ちゃんと教えた方がいい」

「でも……」

 ニクラスが確固たる口調で断言するが、ヘルミーナはまだ躊躇っている。病に倒れたとはいえ、元姑の圧力は未だに彼女達に強く圧し掛かったままだ。

「私が言ってもいいが、今日の様子だと当分無理だろう。母親の君の言葉が一番届きやすいはずだ」

「……」

 ヘルミーナは答えない。今日はこれ以上の説得は無理だろうと判断し、ニクラスはご馳走様と夕食の礼を言って席を立つ。空いている部屋が無いので、寝るのは急きょ片付けた物置部屋になったが、今の住まいに比べるとまだ快適な寝床となった。ひとまず寝てから考えよう。そう思いなおしてニクラスは仮の寝台に潜り込んだ。




 別荘に来て半月。大人しくお客様していられない性分のニクラスはヘルミーナ達の了承を得て庭の手入れをしていた。打ち捨てられた庭の倉庫に古い道具を見付けたので、自分なりに使える様に研いだり手直ししたりして使っている。剪定も見様見真似の自己流なので本職には到底及ばないが、それでも元の状態よりかは幾分かましになったと思いたい。

 刈り取った枝は乾燥させれば焚き付けにも使えそうだ。適当な長さに切りそろえて雨が当たらない場所に纏めておく。最後に散らかったごみを片付けて今日の作業は終了である。

「お疲れ様です」

 井戸で顔を洗い、裏口から中に入ると義妹が夕食の支度をしていた。労いの言葉と共にお茶を出してくれたので、礼を言って受け取る。台所の隅に置いてある椅子に座って一息入れた。

「明日、本当に発つの?」

 マルグレーテの傷も良くなり、前日に往診してくれた医者もワールウェイドに連れ帰る許可を出した。ニクラスとしてはこれ以上先延ばしにしても何の進展はないと判断し、明朝出立すると決めていた。

「ああ。これ以上ここに居てもあれは甘えるだけだ」

 ヘルミーナは迷った挙句に真実を話したのだが、娘はまだ納得していない。祖母の影響が強すぎてその全てを払拭するに至っておらず、母親が言葉を尽くそうとするが聞く耳を持たないのだ。ニクラスに至ってはまだ顔も合わせていない。

「本当に大丈夫?」

「どうにかなるだろう」

 ニクラスはそう言うと、残っていたお茶を飲み干して立ち上がる。そして出立の準備をするために寝床となっている倉庫へ向かった。




 結局ニクラスはマルグレーテと一度も顔を合わせることなく出立の時間を迎えた。来た時と同じ服に着替え、手提げの鞄を手に持つ。そして娘の部屋に向かい、扉を叩く。相変わらず娘からの返事はないが、ヘルミーナから返答があったので扉を開けた。

「おはよう」

 窓の側に立っている娘に声をかけるが返事はない。一応、旅装を整えているが、顔を合わせたくないのかそっぽを向いている。

「挨拶しなさい」

「……」

 ヘルミーナがたしなめると聞き取れないくらい小さな声で返事をしたらしい。ともかくここでつまずいていたのではいつまで経っても出立できない。ニクラスはため息をつくと、娘の荷物を持って彼女を促す。マルグレーテは本当に渋々といった様子で後に続く。

 先ずは第1段階突破。最大の難関は元姑への挨拶だ。ふくれっ面のままついてくる娘と共に元姑の寝室に行く。今朝は義妹が2人がかりでついてくれている。

「おはようございます、奥様。今日、マルグレーテを連れて出立致します」

「お前は……」

 元姑はニクラスの姿を見るなりまたもや暴れだし、それを義妹2人が抑えようとする。しかし、どこにそんな力があったのか、自由の利く右手で手近にあった食器をニクラスに投げつけた。それがニクラスの顔にあたったが、彼は眉一つ動かすことなく相手を見据えた。

「これでもうお会いすることもないでしょう。それでは、失礼いたします」

 言いたいことは山ほどあったが、どんなに言葉を尽くそうとも耳に届かないだろう。再会した時には怒りすら感じたのだが、今では逆に憐れみを感じる。

 今回、マルグレーテに余計な事を吹き込んだことで、元姑はエドワルドだけでなく彼の側近一同の怒りを買っていた。

 故意にではなかったが、事件に使われたのは今までの担当医が渡した劇薬の殺鼠剤だった為、彼は当然クビになっていた。ヘルミーナ達には結局言えなかったが、代わりの医者を派遣するが、今までの様に積極的な治療は行わない方針になるとアスターからは伝えられている。つまり、彼女は緩やかに死へ向かっていくことになる。

 全てではないにしても、ヘルミーナ達は元姑の医療費を負担していた為に生活が困窮していた。彼女達の為にもこれで良かったのかもしれないとニクラスは思う様にしていた。

 何の実も結ばない挨拶を済ませると、無言のままの娘を連れて馬車を待たせている玄関に向かう。見送りはヘルミーナただ一人。軽く抱擁を交わすと、娘を促して馬車に乗り込んだ。




 行きと違い、帰りはリネアリス家が用意してくれた馬車で陸路ワールウェイド領を目指す。護衛として2名の騎馬兵が同行してくれているが、ニクラスもマルグレーテも旧ワールウェイド家の人間なので逃亡防止も兼ねているのだろう。同じ空間にいるのだが、結局、無言のまま最初の宿に着いた。

 今の彼等には贅沢過ぎるとも思ったが、同行しているのが年頃の娘なので部屋は分けてもらった。何事もなく夜が明け、朝食を済ませると隣の部屋へ娘を迎えに行く。

「おはよう」

 逃げ出しているのではないかと心配したが、マルグレーテは身支度を整えて待っていた。相変わらず返事は帰ってこなかったが、それでも逃げずにいてくれたことに安堵して娘を連れて宿を出た。

「お前の所為で!」

 マルグレーテを馬車に乗りこませようとしたところで、何者かがナイフを振りかざして襲ってきた。娘をかばったニクラスの腕にその刃がかすり、血が流れ出る。

「きゃぁぁぁぁ!」

 マルグレーテは腰を抜かして恐慌状態におちいっている。襲って来た男はなおもナイフを振りかざしてきたが、遅ればせながら駆けつけて来た護衛によって取り押さえられていた。

「もう、大丈夫、大丈夫だから……」

 娘を抱きしめ、ニクラスは心させるように何度もそう言ってその背中をさする。2人の護衛と騒ぎを聞いて駆けつけた自警団によって襲って来た男が完全に捕縛されたのを確認したところで立ち上がろうとしたが、自分も腰が抜けて立てなくなっているのに気付いた。




 事情聴取とニクラスの怪我の治療の為に、結局、同じ宿にもう1泊することになってしまった。宿の女将は迷惑そうにしていたが、護衛達と一緒に平身低頭で謝罪してどうにか許してもらった。

 大した怪我ではなかったが、一先ず安静を言い渡されていたニクラスは寝台で横になっていた。娘には近くの小神殿から来た年配の女神官が付いてくれているので、自分の側に置くよりも安心だろう。野良仕事で多少は体力がついたとは言っても元は荒事とは無縁の生活をしていたので、どっと疲れの出たニクラスはそのままうとうとして過ごした。

「我々の手落ちで怪我をさせてしまい申し訳ありませんでした」

 夕刻、護衛が事の次第を報告に来た。ぞろぞろとガタイの良い男が3人も部屋に入ってくると一気に部屋が狭くなったように感じる。見たことない顔ぶれはここの自警団かもしれない。

「いえ、かすり傷ですのでご心配なく」

 当初、護衛の人数はもっと増やす予定だったのだが、仰々しくなるので数を減らしてもらったのだ。それでも警戒はおこたらなかったのだが、護衛達が馬車に荷物を積んでいるわずかな隙に事件が起こったのだ。恐縮する彼等を制し、早速本題に入ってもらう。彼等はもう一度頭を下げると報告を始める。

「男は医者でした。お嬢様におとしめられたと言い張っております」

 どうやら今回の件で解雇された元姑の担当医だったらしい。彼が作った殺鼠剤を事件に使ったマルグレーテを恨んでの犯行なのだが、計画性は無かったらしい。

「ワールウェイド領の薬草園に移動する途中で、偶然お嬢様を見かけて犯行に及んだそうです」

 その医師は計略に使われると思って殺鼠剤を作った訳ではないので、罪に問われずに済んだ。ただ、その薬草園で聖域から来た医師の元で勉強をしてくる様に言いつけられらしい。それがたまたまニクラス達と日程が重なってしまい、今朝の事件が起こってしまったのだ。

「そうですか」

 ニクラスは深く息を吐いた。彼も娘がしでかした事件に巻き込まれた被害者ともいえる。怪我を負わされたが、恨む気にはなれなかった。できる事なら今朝の事件は目をつむり、無かったことにしておきたい。そう伝えると、護衛達は驚いたように目を見開いた。

「元はと言えば娘が悪いのです。彼が納得して頂けるのなら、私は彼を訴えるつもりはありません」

 ニクラスの言葉に護衛達は顔を見合わせる。だが、彼の決意が固い事を悟ると、出直してくると言って彼等は部屋を退出していった。

 夕食後、またうとうとしていると、誰かが部屋に入ってきた。怪我の影響からか体がだるい。無理やり目を開けると、戸口にマルグレーテが立っていた。

「ど、どうした?」

 まさか娘の方から会いに来てくれるとは思っていなかったニクラスは、体のだるさも忘れて飛び起きていた。

「……ごめんなさい」

 立ちすくんだままマルグレーテは謝罪の言葉を口にする。そしてポロリと涙がこぼれ出る。

「マルグレーテ……」

 ニクラスは慌てて寝台から降りると娘を抱きしめる。彼女は泣きじゃくりながら何度も何度も彼に謝り、彼は幼子をあやす様にそんな彼女の背中をさすり続けた。




 ニクラスの主張は受け入れられ、翌日には自警団立ち合いの元、双方が顔をそろえる事となった。医師に会うのはニクラスだけでも仕方ないと思っていたが、マルグレーテは自分から同席すると言ってくれた。どうやらニクラスが必死になって彼女を守った事で心が動いたらしい。事件の後、付き添ってくれた女神官が色々と話を聞いてくれたのも良かったのかもしれない。

 医師はマルグレーテの顔を見て表情を歪めていたが、先に彼女が頭を下げて逆に驚いていた。虚を突かれた形となった医師はその謝罪をすんなり受け入れ、彼も素直に頭を下げた。もちろん、ニクラスもそれを快く受け入れ、覚書にそれぞれが署名して事件は決着した形となった。

 ニクラスの怪我もあり、同じ宿にもう1泊してから出立となった。また馬車の中に2人きりとなっての移動となったが、初日とは異なり少しずつだが会話が増えた。幽閉中の話も出て来て、イヴォンヌの単なる我儘だと分かっていても、彼女に招かれるのは楽しみだったのだと打ち明けてくれた。

 打ち解けて話ができるようになって3日。ワールウェイド領の北西にある、ニクラスが冬の間世話になった小神殿に着いた。予め事情を記した手紙を送ったところ、マルグレーテの身柄を預かってもらえることになっていた。

「お父様……」

「また、冬に滞在するすると思うから、それまで元気でな」

「はい……」

 別荘では顔も合わせてくれなかった娘が涙ぐんでいる。ニクラスも思わずつられそうになるが、どうにか堪えた。

「それでは、よろしくお願いします」

 神官長に改めて娘の事を頼み、ニクラスは再び馬車に乗り込んだ。この後ワールウェイド城に行ってリカルドに一連の報告をしなければならないのだ。畑の事は気になるが、家に帰れるのはまだまだ先になりそうだ。

「お父様、ありがとう!」

 馬車が動き出したところでマルグレーテが声をかけて来る。窓の外を見ると、彼女は大きく手を振っている。ニクラスは口元に笑みを浮かべると、娘に手を振り返した。




 無事に秋の収穫期を迎えた頃、元姑の訃報が伝えられた。余計な事かとも思えたが、気晴らしになればとヘルミーナに手紙を送った。期待していなかったが、程なくして返事は届いた。それをきっかけに文通が始まり、時折会う娘の様子も交えながら近況を伝え合った。

 そして5年の月日が経った。春分節が済んで間もない頃、ニクラスはとある町に着いた。ここは5年前、別荘からの帰りに立ち寄った折に襲撃を受けた町だった。

 乗り合いの馬車から降り立ったニクラスは真っすぐに街にある小神殿に向かう。そこで年配の女神官の出迎えを受け、奥の墓地へと案内された。

「こちらでございます」

 そこには真新しい墓があった。その墓標には小さくマルグレーテと刻まれている。それを目にしたとたんにニクラスはその場に膝をつき、今まで堪えていた涙が溢れ出す。

 神殿に身を寄せた彼女は、身寄りのない子供達の世話をしながら神官となるべく勉強を始めた。しかし、前の年の秋の終わりにリネアリス公夫妻の訃報を聞き、未だに更生の兆しを見せていないイヴォンヌの身を案じて彼女に会いに行ったのだ。折悪く討伐期が始まってしまい、途中妖魔の襲撃を受けて彼女は命を落とした。それがこの町の近くであったため、犠牲になった人達は皆、この神殿に埋葬されたのだ。

 冬の終わりになってようやくその事を知ったニクラスは、移動が可能になる春を待ってここに駆け付けたのだ。

「ニクラス」

 どのくらいそうしていたのか、声をかけられて振り向くとヘルミーナが立っていた。マルグレーテの件を知ってすぐに手紙で知らせていたので、彼女も許可をもらってここに来たのだろう。

「本当に、この子は……」

 ニクラスの隣に跪くと、ヘルミーナは持参した花を供えた。2人で長い時間祈りをささげ、それでも踏ん切りがつかないまま重い足取りで墓地を後にした。

「よく、出てこれたな」

 旧ワールウェイド家の直系である彼女達の監視はまだ続いている。別荘から出られないだろうと思っていたのでニクラスは驚いていた。

「お母様も亡くなって5年経つし、陛下が恩赦で解放してくださいました」

「そうか……」

「あの別荘も売り払う事にして、大半は国とワールウェイド家に返す事にしたの」

 あまりの思い切りの良さに驚いると、すぐ下の妹は皇都郊外の神殿に身を寄せ、一番下の妹は驚いたことに元夫と復縁することに決めたと教えてくれた。

「君はどうするんだ?」

「私は、薬草園の療養所に行くわ」

 その答えにニクラスは驚く。ワールウェイド領の薬草園には療養所が設けられ、内乱時にベルクによってばらまかれた薬の後遺症で苦しむ人々の治療に当たっている。その大半がハルベルトの護衛をしていた竜騎士達だ。当人もその身内も、当然のことながらハルベルトの暗殺を指示したグスタフの事を未だに憎んでいる。

 そこに行く決意をしたヘルミーナは、迎えに来た職員に懇願してわざわざこの町に立ち寄ってもらったらしい。

「危険だ」

「分かっているわ。それでも、これが私の贖罪なの」

「ヘルミーナ……」

 凛として立つ姿は美しい。歳を重ね、飾り気のない服装をしているにもかかわらず、ワールウェイド家の跡取りとして贅を尽くした生活をしていた頃よりも何倍も美しく見えた。その姿から固い決意を感じ取れる。

「そうか……」

 ニクラスにはもう何も言えず、薬草園からの迎えと共に去っていく元妻の姿を見送るしかできなかった。



 結局、危惧した事態にはならず、ヘルミーナは療養所で自分の居場所を作り上げた。一方のニクラスも周囲からの勧めで塾を開き、多くの子供達に学問の基礎を教えた。そしてその後も2人の文通は続いたが、直接顔を合わせたのはこれが最後になった。

首座様のゆかいな仲間たち6


6 妻 ブレシッド公妃兼、首席補佐官


 執務室の惨状を目にしたアリシアから表情が消えた。ただ呆れたのか、沸き起こる怒りを抑えているのか。だが、先程まで妻にデレていたミハイルが、その気配をいち早く感じとってその場から逃げ出そうとしている所から見ると、どうやら後者が正しいようだ。

「ミハイル、何処へ行くのかしら?」

 ギクリとして恐る恐る振りかえる。夫を見上げるアリシアは口元に笑みを浮かべているが、目は全く笑っていなかった。

「し、仕事をしてこようかと……」

「執務室はここですわ」

「そうだ、留守中の報告を聞くんだった」

「ミハイル」

 この場を逃れる名案を浮かんだとばかりにミハイルはその場を後にしようとする。だが、地を這うような声で呼び止められ、当のミハイルだけでなく側に控えていた文官や護衛の武官までもが凍りついた。

「報告は後ほど聞きましょう。それよりもまずは、私が留守中の事をあなたから伺いたいわ」

 夫を見上げるアリシアは笑みを浮かべているが、やはり目は笑っていない。良くできた家臣達は、これから起こる事を予測して潮が引くようにその場を去っていく。

「じっくりと聞かせていただきましょうか」

 その恐ろしさに硬直したミハイルは、ただ頷くしかできなかった。

 大陸で最も有名な首座様が愛してやまない女性は、この世で最も怒らせてはいけない女性だった。


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