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群青の空の下で  作者: 花 影
第3章 ダナシアの祝福
137/156

10 罪と罰1

 長年の習慣でエドワルドは夜明けとともに目を覚ました。妻子が帰還する前は朝食までの時間を自分の鍛錬に費やしていたのだが、今は腕の中の愛しい存在を愛でる至福のひと時となっている。まだ深い眠りの只中にある妻の額や頬に口づけ、寝乱れた長い黒髪を優しく梳く。少しはだけた胸元には昨夜付けた赤い痕が残っており、こうして触れているとまだ眠っている妻に無理を強いてしまいたくなる。しかし、一度寝込ませてしまった教訓からエドワルドは沸き起こる欲情を何とか抑え込み、頭を冷やす為にそっと寝台を抜け出した。

「ん……エド?」

「まだ早い。寝てていいぞ」

 そっと抜け出したつもりだったが、フレアを起こしてしまった様だ。寝台の縁に腰かけ、まだ寝ているように促すが、少し寝ぼけているらしい彼女は手探りでエドワルドの夜着を掴むと甘えるように擦り寄ってくる。その仕草があまりにも愛おしく、先程までの決意もどこかに吹き飛び、つい腕の中に抱きこんでしまう。唇を重ね、彼女の纏う香りを堪能していたが、無粋にも扉を叩く音が邪魔をする。

「何だ?」

 少しだけ不機嫌そうに返事をすると、扉の外からオルティスが申し訳なさそうに声をかけてくる。

「殿下、リネアリス公がお2人にお会いしたいとお見えになられております。時間の事も御座いますのでお断り致したのですが、どうしてもと仰せになられ、殿下の御判断を仰ぎたく存じます」

 まだ夜が明けたばかりである。上司ともいえる相手の家に気軽に尋ねてくる時間では無い。すっかり目が覚めてしまった妻と顔を見合すが、この時間に無理を承知で尋ねてきたという事は、それだけ急を要する事態なのだろう。

「分かった。支度するから少し待たせておいてくれ」

 自分はともかく、妻のフレアは寝間着のままで客に会わせる気にはなれない。エドワルドは客には少し待つようにとオルティスに伝言を頼み、2人は手早く身支度を整えた。

 妻の手を引き応接間に行くと、焦燥しきったリネアリス公が彼等を立ったまま待っていた。確か昨日の出迎えには夫婦そろって参加し、夫の方は執務室で重鎮を揃えての申し送りにも出席していた。その時にはいつも通りで変わった様子は見受けられなかった筈だった。

「このような時分に申し訳ございません」

 訪問するには非常識な時間であることは分かっているらしく、2人の姿を見るなり頭を下げた。エドワルドは一つうなずくと、先ずは妻に手を貸してソファに座らせ、それから自分はその隣に腰を下ろす。彼にも席を勧めると、緊張しているのかぎこちない動作で席に着いた。

「で、用向きは何だ?」

 妻と2人きりで過ごす貴重な時間を邪魔されて不機嫌なエドワルドはそれを隠そうとしなかった。リネアリス公は冷や汗を流しながら、それでも意を決したように口を開く。

「実は、私共の末の娘イヴォンヌの事でございます」

「ご息女の?」

 このような時間にわざわざ訪ねてくる位だからただの家庭内の問題ではないだろう。元よりエドワルドはリネアリス公とそこまで親しく付き合ってはなかったので、そう言った個人的な話はほとんどした事は無い。あるとすれば、昨秋未だ具合が悪い時にベルクが強引に件の令嬢との見合い話を持ち掛けて来た時ぐらいだろう。

「あの子は……殿下に断られたにも関わらず、あの縁談を諦めてはおりませんでした」

「は?」

 あの話を持ち出された時には、相当具合が悪かった事もあってエドワルドはベルクに本気で怒りをぶつけたはずだった。その状況を目の当たりにし、更には1ヶ月前に無事に帰還したフレアと婚礼も上げているのは周知の事実である。令嬢の思考が理解できず、エドワルドは思わず真顔で聞き返した。

「高名な賢者様が取り持って下さる話だから間違いは無いと信じ込み、その……奥方様は絶対に助からないと思い込んでいたようです。ご帰還とご成婚の話を聞いても、殿下は……言い難いのですが騙されているのだと……」

「それで?」

 怒りを孕んだエドワルドの声が地を這う。リネアリス公は震えあがりながらもどうにか話を続ける。

「お恥ずかしい限りでございますが、娘の状態に私共が気付いたのがルーク卿やオリガ嬢が参加された先日のお茶会の後でした。家内がその時の様子を娘にも語っていた所、突然そんなはずは無いと言い出しまして、分かった次第でございます」

「……それを伝えにわざわざ来たのか?」

「いえ……」

 向けられる怒りにリネアリス公は口ごもる。それでは話が進まないので、フレアは夫の手にそっと自分の手を重ねる。

「フレア?」

「怒るのは後回しにして、とにかくお話を伺いましょう」

 妻の一言で不思議と怒りが治まっていく。頃合いを見計らっていたオルティスが淹れたお茶を飲んで完全に気持ちを落ち着けると、リネアリス公に話の先を促した。

「それで?」

「娘は……参加したお茶会などで、5大公家の令嬢である地位を利用し、会話の中で奥方様の評価が下がる様に仕向けておりました。その場に集まっていたのは下位の貴族の令嬢ばかり。あの子の話は事実として受け取られ、奥方様の悪い噂を助長させてしまいました。

 その事実を知った私達は、自分が何をしたか反省させるために娘を謹慎させました。ですが、自分のした事が罪になると理解できないあの子は、あろうことか、奥方様を排除しようと……」

「何だと?」

 リネアリス公が慌ててやってきた理由をエドワルドはようやく理解した。イヴォンヌの企ては反逆罪とみなされ、たとえ未遂で終わったにしてもリネアリス家を取り潰しに出来るのだ。隠匿する事も出来たかもしれないが、政治手腕の乏しい現在のリネアリス公では隠し通すのは難しいと判断したのだろう。

「実は、娘は未だにグスタフ殿の孫娘マルグレーテと交流があり、私共の居ないところで謹慎中にも招いて会っていたようです。彼女も現状に不満を抱いており、話をしているうちにフレア様やマリーリア卿を貶めれば、自分達と立場が入れ替われると本気で思っていたようです。

 そして薬品を混ぜた香水か何かをマリーリア卿の名前で献上させようと企てておりました。それを使った奥方様の見た目が変われば、殿下のお気持ちも変わって自分を迎えてもらえる。そうなれば献上したマリーリア卿も罪に問われて失脚し、自分が成り代われるなどと甘えた考えを持っていたようです」

「愚かな……」

 エドワルドは呆れたように呟いた。彼は妻の内面に惹かれて求婚したのだ。外見が変わったところでその気持ちが揺らぐことは無いと断言できる。そもそも今の騎士団はこんな稚拙な犯行にごまかされることなくすぐに犯人を炙り出せる。更に付け加えるならば、薬学の心得があるフレアもオリガもそういった混ぜ物にはすぐに気付くだろう。自己中心的な愚かしい企てとしか言いようが無かった。

「昨日、帰宅した妻がもう一度話をしようと娘の部屋に行った所、娘の側にはあの子の乳姉妹が半裸で拘束されていました。側にはマルグレーテがおりまして、彼女が手に入れて来た薬品の効果を試していたらしく、むき出しにされた乳姉妹の背中は既に爛れ、娘が持っている瓶の中身を垂らされて苦しそうにもがいていたそうです。あまりの光景に妻が慌てて止めに入り、更にそれを阻止しようとしたマルグレーテと3人で揉みあっているうちに薬品がその3人に……」

 リネアリス公が膝の上で握りしめている拳にポタリと涙が落ちる。

「奥様とお嬢様方、そしてその乳姉妹は今、どのように?」

 勤めて冷静に尋ねたつもりだったが、フレアの声は震えていた。

「妻とマルグレーテは腕にかかりましたが、幸い対処が速かったので多少の痕は残るものの大事には至りませんでした。乳姉妹は背中の広範囲にわたって爛れており、重度の火傷を負っておりました。一命は取り留めましたが、痕はもう消えないだろうと治療に当たった医師が申しておりました」

 リネアリス公はここで一旦言葉を切ると、深く息をはきだした。

「娘は頬から首、肩にかけて薬品を被りました。応急処置はすぐに施されましたが、治っても元通りにはならないでしょう。企てたことをそのまま自分がこうむる形であの子は罰が当たったのです。半狂乱で手が付けられなかったので、今は薬で眠らせております。そして薬品の入手に協力したマルグレーテは治療後、我が家で身柄を拘束しております」

 イヴォンヌは、おそくに出来たこともあって両親や兄姉に盛大に甘やかされて育っていた。家庭教師も使用人も少しでも厳しい事を言えば辞めさせられてしまうので、世間で言うところの一般常識が欠如していたのだ。子供の教育は家庭教師に丸投げしていた夫妻は、今回の事で初めて娘が常識にうとい事に気付いたのだった。

「そうですか……」

 エドワルドもフレアも深いため息をついた。

「今回の事、一つ間違えれば奥方様だけでなく、姫様や若様にも危険に曝す所でした。本当に申し訳ございません、全ては私共の責任でございます」

 リネアリス公は床に膝をつくと、その場で深々と頭を下げる。そして懐から何かの包みを取り出すと、それをエドワルドの前に置いた。それはリネアリス家の紋が入った当主の証だった。

「娘がしでかした事を思えば、これだけで全てが許される訳ではありませんが、私自身のけじめとして大公位を返上致したく存じます」

 エドワルドは渋い表情で差し出された証に視線を落とす。大公位の返還は妥当に思えるが、令嬢の罪は重すぎてこれだけでは済まない。噂を流した程度だけであれば、公表をせずに令嬢自身への罰だけで済ませる事も可能だったが、皇家の人間に危害を加えようと画策したとなると、生半可な罰で済ませる訳にはいかない。

 問題はそれだけでは無い。今、当主の交代が行われれば、2日後に定めた選定会議がまた延期となってしまう。ベルク失脚に伴う礎の里の大掃除もあって、即位式は初秋を予定しているが、それでも次代の国主は皇都に戻り次第決めておくよう各国の賓客方からは釘を刺されている。これ以上遅くなるのは好ましくなかった。

「フレア、君の意見は?」

 エドワルドは傍らの妻に視線を向ける。刑罰を決めるのは、リネアリス家からの正式な報告書が上がってからになるが、それでも狙われた当の本人の意見も参考にしたいと考えたのだ。

「私は……謝罪をして頂きとうございます」

「謝罪?」

 思わぬ返答にエドワルドは首を傾かしげ、リネアリス公も思わず顔を上げる。

「上辺だけの謝罪では無く、ご令嬢本人が心から反省して謝罪して頂ければと思います。私にだけではなく、怪我をさせてしまったお母様や乳姉妹、そして、噂を打ち消そうと奔走して下さったセシーリア様やアルメリア様等、関わった皆様に心から謝罪して赦して頂くのです。もちろん、怪我をさせた乳姉妹には相応の賠償が必要になりますが……」

 一見、楽なようにも思えるが、フレアの求める水準を満たすにはそうすぐには無理だろう。先ずは令嬢自身の考えを変えなければならない。周囲の尽力しだいになるが、もし今回の事を逆恨みするようであれば、それはなおの事困難になる。そしてイヴォンヌが改心し、己の行いを反省出来る様になったとしても、今度は被害者がすぐに許すとは限らない。特に怪我をさせられた乳姉妹には会う事すら拒まれる可能性があるのだ。

「罰を与えるだけなら簡単ですが、ご令嬢には己の犯した罪を自覚して頂きたいと思います。きれいごとばかりで政が務まるわけではありませんし、それで改心するとも限りませんが、それでもやり直す機会を作りたいと思います。もちろん、関わったマルグレーテにもです」

 フレアの脳裏には最後まで己の行為を顧みなかったラグラスの姿と、犯した罪に押しつぶされそうになりながらも、けじめをつけて新たな生活を始めたゲオルグの姿が蘇っていた。フレアはまだ若い令嬢の可能性を信じたいに違いない。

「分かった、検討しよう。それからこれは返上しなくてもいい」

 フレアの考えを理解したエドワルドは、大きくうなずくと当主の証をリネアリス公に返した。彼は後光でも差して見えたのか、それを受け取ると床にこすり付けるほど頭を下げた。稚拙な計画とはいえ、反逆罪とみなされば一族全てに極刑が言い渡されることもあり得る。そしてそれはエドワルドの胸一つで決まると言っても過言ではないのだが、温情あるフレアの意見を取り入れてやり直す機会が与えられるかもしれないのだ。

「本当に……本当に……申し訳ありませんでした」

 思えば1年前はグスタフにそそのかされて彼女を排除するたくらみに自分も加担していたのだ。それなのにまるでダナシアのような慈悲深さを示すフレアの姿にリネアリス公は思わず涙を流した。

 結局、この件は公表される事は無く、内々に処分が行われた。リネアリス公は即位式の後に病気療養を理由に引退し、その地位はエドワルドの助言に従って長女の婿に譲られた。そして移り住んだ領内の別荘で、妻と共に末の娘の再教育を自ら行う事となった。

 そしてマルグレーテは父親のニクラスに引き取られ、ワールウェイド領の片田舎の修道院で常識を学びながら更生させることとなった。




「準備は宜しいですか?」

 セシーリアに問われて神官服のイヴォンヌは小さく「はい」と答えた。顔はヴェールで隠し、襟元の詰まった服装をしているのだが、その隙間からは僅かながらに火傷らしい痕が見え隠れしている。その辺を気にしながら彼女はセシーリアの後に続いて控えの間を出た。

 かつて5大公家の令嬢として、当然の権利の様に足を踏み入れた場所だったが、彼女が本宮内に足を運ぶのは10年ぶりとなった。当時はその豪華さに目を奪われたが、今は本宮全体から感じる荘厳さに圧倒されそうだった。

「こちらでお待ちください」

 彼女が通されたのは皇家の個人的な応接間だった。かつて見たこれ見よがしな豪華さは無いが、使われているものはどれも品の良い物ばかりである。

 こうした物の良し悪しが分かるようになったのはつい最近の事だ。5年前に両親が他界すると、改心する兆しのない自分を持て余した兄姉達には見放されてしまった。娘の結婚を機に本宮を出て郊外の神殿に身を寄せていたセシーリアがその事を知り、自分の元へ呼び寄せてくれたのはその半年後の事である。今は彼女の元でダナシアの教えを学び、自分よりも若い少女達に混ざって日々の務めもこなしながら女神官になる為の勉強に励んでいる。そのおかげで10年前に自分が起こした罪がいかに愚かで自分勝手だったかを理解した。

 先日は10年前に火傷を負わせてしまった当時の乳姉妹から渋々ながら赦しを貰えた。将来有能な文官と結婚した彼女は既に2男1女の母となっており、真っ先に謝罪に訪れたのだが当然すぐには会ってもらえなかった。令嬢自身に外出の制限があるのでそうそう訪れることも出来ない。とにかく手紙を送って謝意を伝え続け、やっと先日直接会って謝罪出来たのだ。まだ完全に許された訳ではないが、内面も様変わりしたのは分かってもらえたので、今後はもう接触しないと言う条件で謝罪を受け入れてくれたのだ。

 セシーリアの元に身を寄せている間にその他の人とは顔を合わせる機会があり、その折に触れて謝罪を行ってきた。昔の自分を良く知っているソフィアやブランドル公夫人などはこころよく許してくれたが、以外にも主を侮辱された形となったルークやオリガは気持ちの整理をつけるのに時間がかかったらしく、謝罪を受け入れてくれるまでに時間がかかった。

 今日はあの事件で狙われた当の本人への謝罪に訪れていた。来月に差し迫った即位10周年の記念式典の準備に忙しい最中なのだが、セシーリアを通じて謝罪をしたいと伝えたところ、快く時間をいてくれたのだ。

「お見えになられます」

 女官の言葉に我に返ると、彼女は立ち上がって頭を下げる。やがて扉が開き、衣擦れの音と供に複数の人物が入って来た。

「顔を上げて下さい」

 やわらかな声をかけられて顔を上げると、正面に黒髪の女性が座っていた。その背後には万が一を警戒しているのか、以前に謝罪したオリガとマリーリアが控えている。だが、そんな2人も目に入らない程、彼女は正面に座る女性に釘付けとなった。

「まるで大母様のような方だ」

 10年前、愚かな企てを犯した直後に父親から聞いた言葉が脳裏を過る。そんなはずは無いと当時の自分は突っぱねた。だが、目の前には正に大母の様に慈愛に満ちた笑みを浮かべる女性がいる。

「皆様に赦して頂けましたか?」

「は……はい」

 微笑みながら問いかけられ、震える声で返事をする。

「辛い罰を与えたかもしれません。私を恨んだのではないですか?」

 フレアの問いかけに彼女はドキリとする。この罰を告げられた時には、愚かな自分には何が悪かったのか理解できなかった。顔に傷を残した自分に追い打ちをかけられたように感じ、逆恨みをして自分を説得しようとしていた父母すら拒絶した。

「はい……愚かにも自分のした事の重大性を理解しておりませんでした。あろうことか皇妃様をお恨みし、自分を憐れんで無為に時を過ごしてしまいました」

 事件から父母が他界する5年の間、何かと話をしようとする彼等を拒み続けた。そうしているうちに風邪をこじらせた2人は相次いで亡くなり、永遠に話をする機会を失ってしまったのだ。看取った姉の話では最後まで自分を気にかけてくれていたと言うのに、それすら受け入れることが出来なかった。

「……本当に、本当に申し訳ありませんでした……」

 彼女はその場に膝をつき、深々と頭を下げた。どう謝罪するか何度も頭の中で反芻はんすうしていた筈なのにその言葉が出てこない。後悔に涙が溢れ出て、その場に泣き崩れた。

「分かって頂けたらいいのです。貴女の謝罪を受け入れます」

 いつの間にかフレアが側に来て泣きじゃくる彼女の背中を優しくさすっていた。それは彼女が落ち着くまで続けられた。そしてようやく涙が治まり、改めて謝罪の言葉を述べると、今後の身の振り方を尋ねられた。

「今後は亡き父母の菩提ぼだいとむらいながらダナシアに仕えたいと思います」

「もう決められたのですね?」

「はい」

 彼女がはっきりとそう答えると、フレアは満足気に頷く。

「そうですか……貴女にダナシアの加護がありますように」

 フレアが祝福の言葉を口にしたところで、ちょうど面会の時間が終わってしまった。忙しいのだろう、迎えに来た女官に促され、フレアは席を立った。

「あの、皇妃様、ありがとうございました」

 改めて礼を言って頭を下げると、フレアは温かな笑みを浮かべて退出していった。


 後に正神官となった彼女は残りの生涯をダナシアに捧げ、リネアリス大公家の霊廟がある神殿を陰ながら守り続けた。






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