苦し紛れの言い訳でとんでもないことになっちゃいました・・・。 50音順小説Part~く~
三角関係って話を書いてみたかったのです。
登場人物の設定をどういうふうにすればいいか悩みました。
「九埜っ!一体どういうことよ!!」
「私とあの子、九埜君はどっちを選ぶの!?」
「「ねぇどっち!?」」
九埜は二人の女の子に言い寄られていた。悪い意味で。
そもそもの発端は彼の発言から始まった。
九埜は高校時代の元カノ五十嵐瑛良に偶然出会った。
街中で買い物してるところをバッタりだった。
九埜は連れがいたし、瑛良も友達と一緒だった。
しかし瑛良が九埜の連れ、百瀬愛を見た途端、友達と別れてこちらについてきたのだ。
彼にとっては非常にまずい状況であった。
この二人、瑛良と愛は犬猿の仲であるのだ。
その仲の悪さは高校時代からで二人とも同じ部活のマネージャーにもあるのにそれは険悪なものだった。
そして彼にとっての非常にまずい要因となっているのが
現在彼女ら二人を二股しようとしている途中であることであった。
愛とは高校三年間違うクラスであったが、九埜の所属している部のマネージャーで
そして大学生となった今では同じ大学で同じ学部である。
高校時代から九埜に好意を持っていたらしいが、以前は瑛良がいたため
積極的にアピールはしてこなかった愛だが大学入学を契機に彼女から近づいてきた。
九埜もまんざらではない様子で周囲からはいつ付き合ってもおかしくないと思われている程だった。
一方瑛良はクラスメイトでもあり、二年半付き合ってた彼女。
きっかけは彼女からの告白で一目ぼれだったそうな。
二年半付き合い決して仲が悪くなって別れたわけではなく、
お互い違う大学で会う機会もなくなるだろうということで別れることになった。
それから三ヶ月、九埜大学一年生の夏の始めに瑛良と偶然再会。
その際に瑛良から友達からでいいからまたやり直そうと言われて
それからさらに三か月後の現在元の関係に修復中の時期であった。
そのような時期に渦中の三人が同じ場にいるのは非常にまずいと感じた九埜は、
「やっ、やぁ瑛良。友達と買い物している途中ならお邪魔だよね。じゃっ!!」
と言って愛の腕を掴んでさっさと立ち去ろうとした・・・が
「ちょっと九埜!久しぶりに会ったんだしそっちについていってもいい?
百瀬とも高校卒業以来だし。いろいろと話したいことあるんだよね。」
なんとかして早くこの場から去ろうとした九埜の本心を見抜いた瑛良は友達に別れの挨拶をすませ
二人をほぼ引きずり状態でカラオケルームに直行した。
「さぁ・・・。どういうことか洗いざらい吐いてもらおうじゃない。」
机をバンッと叩き、九埜の注文したコーラがこぼれそうになった。
「九埜くん、もしかして五十嵐さんに復縁を迫られているの?」
「迫られているってっ・・・百瀬、あんたこそ一体九埜とどういう関係なのよ!」
愛がそっと九埜の膝に手を置いて瑛良をちらりと見るやいなや、
瑛良は目じりを吊り上げ愛に食って掛かった。
「私は今現在の彼女です。」
その言葉がさらに九埜を追い詰めた。
「えっ・・・。」
彼女ってまだ告白もしてないんだから・・・と思ったがこの状況では言い返せない。
「はんっ!ちゃんちゃらおかしいわ。だって九埜の彼女はあたしよ。」
「え~っ!」
こちらもさらに驚きである。今は友達という関係のはずなのに・・・。
やはり一気に二人の彼女をGETしようとしたのがまずかったのだろうか、
まさかこんな展開になるとは九埜は思ってもみなかった。
「九埜!はっきり言って!百瀬とはただの遊びなんでしょ?」
「私は信じているよ、九埜くん。五十嵐さんとは何でもないんでしょ?」
二人に迫られこの危機をどうやって回避するか頭をひたすらめぐらせていた。
「え~・・・あの二人が勘違いしてるかもしれないから誤解のないように言うと・・・。」
「四の五の言わずにはっきり言いなさい!!」
「その~ごにょごにょ。」
「ごめん、九埜くん。聞き取れなかったの。もう一度言ってくれる?」
「だから・・・・・二人のどちらとも付き合ってないっていうか・・・。」
そして冒頭部分に戻る。
「「どっち!?」」
どっちとも言い難いなか九埜は迷っていた。
どちらを選べばいいか分からなかった。
もし瑛良を選べば同じ学部の愛とは嫌でも顔を合わせなくではならないので気まずいし
愛を選べば血気にはやる瑛良のことだから何をしでかすかわかったものではない。
そうこう考えている内に瑛良がしびれを切らしたのかどすの利いた声で九埜に問いただす。
「何とか言いなさいよ。」
「どっちか選べって言われても・・・。」
あれこれ思考しすぎたのか考えがまとまらなくなりついにおかしくなった九埜は大胆な結論を出した。
「そうだ。どちらか選ぼうとするからいけないんだ。だから俺はあえてどちらも選ぶ。」
九埜にとっては一番の大団円へ向かう解決策だと思ったが二人にとっては全く違った。
「信じられないくらい阿呆ね。」
瑛良はまるで汚物をみるような目でこちらを一瞥し部屋を出ていった。
「見損なった。」
愛も目頭を押さえ九埜を見ることなくカラオケルームを後にした。
「なんでこういうことになっちゃったのかな・・・。」
まさにこれこそ二兎追うものは一兎をも得ずだと感じた。
九埜は何も考えずただ曲を入力した。
それは今のこの気持ちを代弁するかのような選曲だった。
あゝ無情
チャチャチャチャンチャンチャーン♪