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僕と彼女  作者: 白菫
1/9

プロローグ

伝えきれないほどのありがとう

伝えきれないほどのごめんなさい

後悔する時には遅く

すぐそこにある

いつもそこにある

そんなふうに思えるものは突然に消えてしまうもの

だから

この時

この瞬間

伝えたい


ありがとう


彼女は囚われている。

彼女自身に。彼女の内側に。彼女の過去に。彼女は彼女が囚われていることを知っている。けれど何に囚われているのかを知らない。彼女の素顔を知る者もいない。彼女自身も知らない。それでも人生を歩めるのだろうか。

彼女は囚われている。

見えない何かに。秘められた想いに。彼女が探しているものはどこにあるのか、どんなものなのか、誰も知らない。彼女も知らない。囚われの彼女は何を求めるのか。彼女は何を見て何を想うのか。彼女は何がしたいのか。おそらく彼女にすら分からない問いなのだろう。来る日も来る日も考え続け、そうしているうちに何年もの月日が過ぎ、彼女は何も分からないまま人生を終えるのだろうか。彼女を救う温かい手も、彼女にかける優しい声も、彼女の人生のうちには現れることはないのだろうか。彼女をそっと抱き締めて、もういいんだよ、頑張ったね、ただそれだけ。彼女を包み込んであげることができる人はもう存在しないのだろうか。彼女を解き放してあげる方法はもうないのだろうか。囚われた彼女はもう抜け出せないのだろうか。彼女は解放されることを許されていないのだろうか。

彼女は囚われている。

なぜなのかは誰も知らない。彼女の世界はただただ光のない真っ暗闇な世界。いつも、いつもその世界には震え上がるほどの獣の鳴き声が響き渡っている。彼女は恐れている、彼女が見ている世界を。彼女が怯えずにすむ世界はもうないのだろうか。彼女は安心して暮らすことも許されていないのだろうか。彼女の苦痛は誰の耳にも届かないのだろうか。彼女の悲鳴は誰の心にも届かないのだろうか。彼女の住む世界は人とは違うのだろうか。何かの隔たりで区切られ、彼女は人と住むことができない。誰も彼女の居場所がわからず、だからといって、彼女を探すことはない。彼女の存在すら知らないかのように。

彼女は囚われている。

彼女自身に。彼女は人と共有しない。彼女の心は彼女だけのものらしい。彼女は自分の気持ちを理解できる人がいないと信じて止まない。彼女は固執し過ぎるあまり、孤独になった。彼女の孤独は彼女の世界を変えていった。彼女の心を変えていった。彼女の寂しさは彼女自身の領域を超えてしまった。彼女はどうすることもできない。人からみればただただ単純で容易に解決できる。彼女は人ができることができない。それは彼女が劣っているからなのだろうか。彼女が人よりも小さな人間であるから、より深く傷つき、より深刻に考え、周りからの気にするなという言葉に折れるのだろうか。全て彼女の責任なのだろうか。全て彼女が劣っているせいなのだろうか。彼女自身の問題なのだろうか。彼女が全て悪いのだろうか。

彼女は囚われている。

囚われのきみへ








1 彼女

2 ある青年

3 僕

4 小さな手

5 二人

6 いつか

7 温かな涙

8 夢

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