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チュートリアルは存在しない



この大陸の北の果て

とても生物には耐えられない極寒の地

そこに結界を貼り、亜人の楽園を作った男が居た

世界はこの男を【大魔王】と呼ぶ

そしてその男は今ーーーーーーーーーーーー


「行方不明ってどう言うことだよーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼!‼‼‼‼‼‼‼‼」


そう、行方不明なのである


大魔王の息子、魔道王国の第二王子アトリー・ローエファルタ

彼はかの大魔王ジルベールと聖女アリシアの間に国の正式な跡継ぎ候補として生まれた

そのため厳しい英才教育をーーー



受けてこなかった



それどころか、気まぐれに起き、気まぐれに遊び、気まぐれに寝る、自堕落な生活を両親の庇護下でぬくぬくと過ごして来た

正直兄が跡継ぎになるだろうと思っていたのだ


そんな彼にも動機はさて置き、真面目に魔法を勉強することも極たまぁーにあった


それがダメだった


アトリーは召喚魔法に失敗したのだ

思い付きでドラゴン出しちゃおってノリで意気揚々と召喚魔法を魔道入門書片手に発動すると

なんと逆に召喚陣にアトリーが吸い込まれるではないか


目覚めればそこは見たこともない世界

所謂異世界召喚(セルフ)されたのだった

そこから生まれて初めて頑張って

魔国の大魔王城……詰まるところ実家にやっとの思いで帰ってきたところに、両親の行方不明の話を聞かされたのである


「親父とお袋が行方不明って……俺これからどうすればいいんだよォ!」


アトリーはひたすら嘆いた、嘆く以外にすることが思いつかないのである


「そうですね、魔導書より重いものが持てない殿下には何もできませんね」


「そうだね、未だに四つん這いで歩く殿下じゃ手も足も出ないね」


「流石に赤ちゃんは卒業してるよ?俺」


抑揚の少ないよく似た二つの声がアトリーの耳に届いた

頭の上にクルクルとした羊の角が生え

背には烏によく似た黒い羽根

喪服のような黒と、花嫁衣装のような白が対象的なバフォメットの二人組

アトリーの筆頭側仕え、所謂メイドの双子

シャネルとシャルルである


「お前らさぁ……久々に帰ってきたご主人様に挨拶もなしに開口一番、両親が行方不明ですって……」


そこはお帰りなさいませご主人様、があってもいいところだろう


「……失礼しました、お帰りなさいませ、執務を放ったらかしにしたまどこかへ消えたご主人様」


「……ごめんね、お帰り、執務をこっちに丸投げしたまま魔法で無様に異世界に飛ばされたご主人様」


「わかった、俺が悪かった」


表情を一切変えずに似たような台詞を発する二人にアトリーは撃沈した

心做しかシャルルの方が怒っている気がする


「というか、行方不明に関してはホントなんで?」


魔法で失敗して異世界に突然行った俺が怒る権利はないと悟って、せめてもの状況把握をしようとする


「その件ですが、コチラを」


シャネルは小さな箱を差し出してきた


「?なにこれ」


渡されたのは魔力を流し込むことで開く仕組みになっている、知育玩具だった


「陛下が殿下が帰ってきたら渡して欲しいって、最後に預けてきたの」


「殿下じゃなければ開けられない細工がされているそうで」


シャルルの説明にシャネルが補足を入れた


なるほど、俺とは違って書置きか何かを残して行ったらしい

伊達に長年大魔王として配下の魔王や民に信頼されている訳ではないと言うことか

だとしても、シャル姉妹位には口頭で何か言っても良かったのではないか?

しかもおもちゃて


そう思いながら箱に魔力を流し込んだ


「殿下、何を遊んでいらっしゃるの」


「殿下、出来ないなら早々に降参して」


「いやッ!複雑にしすぎだろあのクソ親父!?なんだこの初心者の手編みマフラーみたいな術式!?」


たしかに箱には魔力の波長が合わなければ開かない仕組みが施されていた


そこまでは聞いたが、ここまで複雑だとは聞いて居ない

暗闇で手袋を何重にもはめながら針に糸を通すような芸当が要求されるのだ

ついでにシャル姉妹の野次もオマケ

頭がおかしくなるわ!


ーー数時間後ーー

「なんだやっと開きましたか」


「なんだようやく観念したか」


「ゼェ……観念はゼェ……してねぇゼェ……よ」


ついに開いた箱から光が溢れ出した

白かった光は三色に分かれ、また重なり、複雑な色合いを編み出しながら、映像を型どった


《おっ、録画出来てるな、やっほーアトリー!お前のパパだぞぉー!》


思わず箱を閉じた


「なぁ、もう嫌な予感がするんだけど」


「そうですね、珍しく同じです」


「そうだね、屈辱だけど同じ」


辛辣な二人と意見が合い、この先を見ることを拒否したくても、見なければ先に進まない

恐る恐る、もう一度箱を開いた


《もぉーパパったら、リーちゃんママのこと見えてる〜?》


見えてない、見えてない

そう念じる心中とは裏腹にイチャイチャとくっ付く両親の痴態が晒され続ける


《さて、パパとママが仲良くやっているのはこれでわかって貰えたと思うから本題に入るぞー!》


「やっとかよ……」


《イヤー父さん大魔王飽きちゃって、母さんと幸せな老後暮らしたいなぁーと思ったんだー、だから愛息子に大魔王の座譲っちゃう!という訳でよろしく!アトリー!》


記録はここで途切れた


「シャネル、シャルル」


「はい殿下」


「何?殿下」


「こっから入れる保険とかある?」


「「無い」」


という訳で、ヌルッと時期大魔王に指名されたわけだけど


「正直、殿下の他の魔王達からの印象はそこまで良いものではございません」


「正直、殿下って他の魔王に嫌われてると思う」


「わかってるわ!一々言わないでくれ!」


布団に丸まり、これからの自信への心配事で押しつぶされそうになる

「畜生……何で俺なんだよ……兄さんとかアルトとか……もっと良い奴居ただろ……今までのニート生活の罰か…」


ひとまずこうなったからには正式な戴冠式が必要になるだろう?

それから魔王達のご機嫌取りも必要だろ?

それから他国への対応と方針も民に明記しなきゃいけないだろ?

ていうか兄さんはまじで何やってるんだ

やることがッ……やることが多い!!!


「ニート?」


あーそういやニートとかコッチにんな言葉なかったな……


「……」


大魔王……か


とある偉大な王の姿が浮かんだ

背格好は自分と殆ど変わらない癖に虚勢だけが一丁前な世界で二番目に凄い王様


「どうしましたか?殿下、そんなに悪い顔をして」


「どうしたの?殿下、そんな気色悪い顔をして」


「いや、いい出会いがあったなと思って、それより戴冠式の準備だ、何をするにもまずは正式な発表が要る、根回しを頼んだ」


「…意外ですねもう少し駄々をこねるのかと」


「…意外だねもう少し恥を晒すのかと」


「あーまぁ、色々な」


「「?」」


そんなこんなで戴冠式に向けて準備が始まった


「ご命令の通り、各魔王に殿下の戴冠の胸を明記した直筆の手紙と例の箱の映像を送り終えました、それと同時に、シャルルが戴冠式の開催時期の調整を、依然恙無く進行しております」


「おー…思ったより早かったな、何か魔王達からの反応はあったか?」


不遜な態度が目立つメイド、シャネルとシャルルだが、アトリーにはもったいないほど優秀なメイド達である


「何件か問い合わせの手紙が来ておりますが、明確な叛意はありません……ですが…一人、現在シャルルが対応しているのですが」


「あ〜……なんか察したわ」


その瞬間、扉がガンガンと叩かれる

扉の向こうからシャルルの叫び声が聞こえる


「シャネル、殿下…限界、助けて」


「わかったわかった今開けるから!そんな叩かないで!」


扉を急いで開けた


「それでシャルル、シャネル…その焦りよう……やっぱり…」


「そのやっぱりだよ殿下」


「そのやっぱりです殿下」


「…わかった、面会の準備をしてくれ」


二人は無言で頷き

疲れた様子のアトリーだけが部屋に残され、程なくしてドタドタと慌ただしい音が聞こえ再び扉が乱暴に開かれた


「やっとワタクシとお話する気になったようですのね?アトリー殿下?」


仮にも城の主を前にして、一切怯む事の無い鳥のさえずるような声を張る少女

白銀の髪と鮮血の様な赤い瞳、日を嫌う白い肌を覆うフリルの服が良く似合う少女


「やぁ…セレーナ・リドリー嬢……実に久しぶり……」


「久しぶり?えぇ本当に、お久しぶりですこと」


長い耳と尖った八重歯を覗かせる令嬢

吸血鬼は静かな怒りに目を細めた


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