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5話 換金しろ

 ふんぞり返った状態で存分に笑ったことで、満足したのか、カールは突然落ち着いて姿勢を正した。


「それで、俺様の名前は教えてやったぜ。次はお前らが答える番だ!」

「我は……マー、偉大なるマー様と、そう呼ぶがいい」

「あたしはクズ……クズでいいです」

「ピュアと申します!」


 名前を聞くと、カールはまたニヤリと笑う。


「そうか、愛らしい名前の女どもだ……タイケの知恵でフードを被ってきたようだが、最初から見ていたと言ったろう? お前らが極上に可愛いことはわかっている。顔と体を改めて見せろ」


 タイケの策は無駄に終わったようだな。二人とも元々露出が多い衣装ではないが、女好きとあれば、そんなことは関係ないだろう。

 二人の姿を見ると、カールはかなり顔が緩んでいる。


「素晴らしい……最高だ…………あー、生きててよかった!」


 なにやら祈りを捧げ始めたぞ。こいつは様子のおかしい凡人だ。


「あー、素晴らしい……ということで、お前ら、俺様の女になれ」

「え、やだーむり」

「ごめんなさい! タイプじゃないです!」

「え、即決ゥ!?」


 誘いをノータイムで断る二人に、カールは少し後ろへ退いた。相当ショックなようで、目を見開いている。


 現実に戻ってきたようで、椅子へと座り直すと、雰囲気が変わった。こちらの話に耳を傾ける気になったようだ。


「ふん……今回もダメ、か。まぁいい、いつか俺様の思い通りになる理想の女を見つけてやる……!」

「それはそれとして、お前らの目的を聞こうじゃないか」

「これの換金だ、おいクズ」

「はいはーい」


 クズノは鞄から物を取り出していく。

 最初こそ、感心して笑っていたが、みるみるうちにカールの顔が青ざめていく。タイケも口を大きく開けている。


「お、おい、いくらなんでも多くないか?」

「姉御! なんなんすかこれは!」

「ちょーっと、換金したいんだけどー、表じゃあコレになっちゃうかもなお宝だよー」


 クズノは縄で縛られるジェスチャーをした。闇市とやらを名乗るのだし、これくらい普通だろうに、何を驚いているのやら。


「ふ、ふん! まぁ、多少量が多いところでここは闇市! これまで、こんな量、いくらでも見てきたとも!」


 声が震えているが、威勢を崩さんとするところは評価できるな。


「そうか、ではこれら全てを換金してもらおうか」

「分かった、少し待て……カンテ! 仕事だ!」


 すぐに、ドアが叩かれ、一人の男が入ってきた。


「失礼、カンテ・イーシ、仕事と呼ばれ参上した」

「これ、全部見れるか?」

「余裕だ。任せてくれ」


 そう言うと、すぐさま眼鏡をかけて物を鑑定しはじめた。

 目が閉じているように見えるが、ちゃんと見えているのか?


「こいつは、うちの鑑定士の一人でな! 凄腕なんだが、仕事バカで、仕事に熱中するあまりしょっちゅう倒れるもんだから、職場から追い出されていたところを拾ったんだよ!」

「仕事好きすぎで倒れるってすげーなー」


 クズノはあたしなら絶対仕事なんか好きにならないと豪語している。


「ふむ、なるほど……! なんてことだ! やばすぎる! うおおおおおおおおおおお!」

「おいおい! どうしたカンテ!」

「あー、こんな上等な物が! 私の人生でも数える程の逸品! す、すばらしいぃぃぁぁぁ!」

「おい! 戻ってこい!」


 なるほど確かにこれは追い出されるな。ピュアは心配そうにしている。


「…………失礼、取り乱した。カール様、これはうちの予算では買い取りきることは出来ないな」

「………………は?」

「どれも一級品、魔道具も有名な職人の業物だ。ほら! 見ろ! この壺の曲線美……! 傷一つない、いやつきそうにないほどの加工技術だぞ!」

「こんなもの滅多にお目にかかれないなぁ! うぉぉ素晴らしい、素晴らしい!」


 予算が足りない……しかし、全て使えばある程度は買い取れるのか。残ったものは他にあるとかいう闇市に行けば良いな。


「…………すまないな。これはうちでは買い取れない」

「なんだと?」

「俺様だってバカじゃねぇ、そこまでの品を大量に持ち込むようなやつ、相当なとこから持ってきた……あるいは盗んできたんだろ? リスクが高すぎるな」

「知らぬ、換金しろ。我の望みを妨げることは許さん」


 言葉を聞くと、カールが魔力を漂わせ始める。


「やるつもりか?」

「あんたが引きそうにないからな」

「タイケ! 俺様の援護だ!」

「…………了解した」


 タイケは大剣を構えた。

 戦闘か……面白い!

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