幽霊通り
人通りのほとんどいない裏路地にある黄色いひし形の道路標識の上に一体の幽霊が腰掛けている。
幽霊が出るせいでよく事故が起こる、と噂されるようになったせいなのかまるきり人が寄り付かなくなってしまい退屈を持て余しているその幽霊が標識の上からぼんやりと路地を眺めていると、人影が一つ近づいてくるのが見えた。
久々の獲物だ、と幽霊は目を輝かせると不気味な子どもの幻影を出したりポルターガイストを起こしたりとその男を脅しにかかる。
しかしどれだけ脅してもその男は見えていないかのように平然としており、ついになんの反応もしないままにその路地を通り抜けて行ってしまった。
あまり怖がらない人物というものはこれまでにもいたが、ここまであからさまに反応すらしない人物は初めてである。
プライドを大いに傷つけられたその幽霊は地団駄を踏んで悔しがるが、しかし男の背中を見送ることしか出来なかった。
幽霊が地団駄を踏んでいるちょうどその頃、見通しが悪いわけでもないにも関わらず事故の絶えないその路地を調査するために人間そっくりのアンドロイドを送り込んだ道路の安全を調査する機関の本部は、送られてきた映像のあまりの恐ろしさに蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
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