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7 突然の指令


「総司令の御前だぞ。私語は慎め」


 佐伯二等空佐の低い叱声に、穂浪は「すいません、つい……」と後ろ頭を掻いた。へらへら笑う顔に、反省の色はない。緊張感のない穂浪の空気に感化されて、逢坂の緊張も少し解れたように感じた。


「穂浪三等空曹、あなたもこちらへ」


 牧下総司令は言いながら、デスクに腰掛けた。穂浪は首を傾げながら、チラリと佐伯を見た。「早く行け」と背中を押され、穂浪はデスクの方へ向かう。穂浪が逢坂の右隣に立ったのを認めると、牧下総司令は話し始めた。


「急に呼び出したのは、あなた方に頼みたい任務があるからです」


「任務?」


 穂浪が聞き返す。


「今瀬相談役が辞職したことは知っていますね?」


 逢坂と久我が「はい」と頷く中、


「いませ……誰ですか?」


 穂浪だけが首を傾げた。佐伯は頭を抱えた。


「……総司令部の相談役です」


 逢坂が小声で助け舟を出したが、穂浪は「あぁ、」と分かったんだか分かってないんだか分からない顔をした。


「今瀬相談役は元パイロットで、怪我により現場を勇退した後も、長年の経験をもとに、相談役として総司令部に助言を与えてくれていました」


「へぇ~すごい人だったんですね~」


「さて、穂浪三等空曹。現在の、地球防衛の基本方針は?」


「え? いきなりクイズ?」


「答えられなかったら高専からやり直しですよ」


「えっ!? ちょ、ちょっと待ってください! えっと、えっと……あっ! 『地球防衛提要 第十二条(一)イ 如何なる場合でも地球外生命体への攻撃を禁ずる』!」


「その通りです。現在の体制では、地球外生命体への攻撃を禁止しています。しかし、今瀬相談役は、ある事件をキッカケに、防御をするだけでは地球に安寧は訪れないという偏った思想を抱くようになりました」


 ひゅぅ、と安堵のため息とともに額の汗を拭う穂浪の隣で、逢坂と久我は横目で互いのリアクションを確認した。数日前に話し合った内容に繋がりを感じたからだ。


「今瀬相談役は、地球を訪れた地球外生命体は全て排除し、ゆくゆくは宇宙に存在する地球外生命体を根絶やしにする計画をしていました。無論、総司令官としても一人の人間としても、私はその計画に反対です。しかし……」


 そこまで言って、牧下総司令は言葉を詰まらせた。


「……正直言って、現状での今瀬相談役の不在は大きな痛手なのです」


「え? なんで?」


 穂浪は思わず声を上げたが、後ろから「ンンッ!」と咳払いが聞こえ、慌てて「……デスカ?」と付け足した。


「ミッシュの出現前と後では、状況がまるで違うのですよ」


 ミッシュが出現する前までは、今までの防御のみによる地球防衛で事足りた。しかし、数週間前、ミッシュを死刑にせんとする旧ポロム連合により、地球は攻撃を受けた。そして、現在、行方不明の元連合長がいつ地球に攻撃を仕掛けてくるか分からないという状況だ。


「つまり、防衛だけでは地球を守れないと?」




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