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2 幹部会議


「まずは、ポロム長老から提案のあった地球防衛の全容について。FPL、報告を」


 牧下に指名され、「はい」と飛行経路専門研究室(通称・FPL)室長の毛利(もうり)が立ち上がった、そのとき、


「その前に、一つよろしいか」


 よっこいしょと立ち上がった今瀬が、唐突に口を挟んだ。毛利は、チラリと牧下を見る。牧下が頷くと、毛利はそっと着席した。それを見て、今瀬は続けて話し始めた。


「先の地球外生命体・アドマの襲撃時の対応について……総司令、君の判断はいかがなものかね?」


 幹部全員の前で名指しするという非礼を受けても、牧下は落ち着いた様子で前を見据えている。


「君は、ミッシュ及びその一派を殲滅せよとの我々相談役からの指示を無視し、最後まで攻撃を許さなかった。それどころか、何発もの光線を乱射し、近隣住民を危険に晒した奴らを、みすみす地球外へ返した。これは反逆と捉えられてもおかしくないのでは?」


「何が仰りたいのです?」


「君は総司令としての判断力に欠けている」


「つまり、何です?」


「ここに罷免権を行使する。君には総司令官を辞めてもらう」


 今瀬の言葉に、幹部たちがざわつく。そのざわつきは、今瀬への賛成と反対の声が入り混じっている。


「今瀬相談役」


 ざわつきを鎮めるような牧下の声が、その場に響いた。瞬間、全員が口を結んで牧下に注目する。


「ミッシュ及びその一派が、近隣住民を危険に晒すために光線を撃っていたとお思いですか?」


「実際、何発もの光線の弾痕が局周辺で発見されている。もし住民が避難していなかったら、」


「他の幹部の皆さんも、今瀬相談役と同じご意見で?」


 牧下は今瀬を遮るように、幹部たちを見渡しながら問うた。急に視線を向けられ、幹部たちはおずおずと俯く。


「あなたたちは何を見ていたのですか?」


 呆れたようにため息を吐いた牧下に、


「君こそ何を言っているんだ! あんなに光線を撃ち合っていた地球外生命体が、危険じゃないわけがない!」


 と、今瀬が声を荒らげる。


「アドマはともかく、ミッシュたちのそれはただの撃ち合いではありません」


「何を根拠に、」


「だから、何を見ていたのかと――自分の目できちんと見ていたのかと、訊いているんです」


 牧下の言葉に、今瀬が苦虫を噛み潰したような顔をした。その反応に、どうせ部下に現場の様子を報告させていただけで、自分の目では何も見ていないんだろうと、牧下は察する。


「あれは、ただの撃ち合いではありません。大切なものを守るための戦いです。ミッシュは友を、ニーナは兄を、ラシェは我が子を、守ろうとしていただけです。そんなことも見抜けないようでは、幹部の名が泣きますよ」


 最後に付けたされた言葉に、今瀬の顔がカアッと赤くなる。


「私は、ミッシュ及びその一派の処遇については不問とすると先日から申し上げています。それは、ポロム長老から送られてきた、地球防衛についての提案があったからです。FPL、報告を」


 牧下に言われて、毛利が「はい」と立ち上がる。


「ポロム長老より、連合長から地球を保護するための提案がされました。内容としましては、組員の刷新されたポロム連合による連合長の捜索、ポロム連合戦闘員の配置及びシールドによる地球全域の防衛強化、地球防衛に関する我々人間からの要請の受諾などが主なものです。なお、ポロム連合の新しい長には、長老の側近であるイオムが就任したとのことです」


「相手は地球外生命体だぞ! 奴らの提案を呑むと言うのか!?」


「えぇ。彼らは信用できます。少なくとも、この一覧に載っている幹部の皆さんよりは」


 言いながら、牧下は手元の資料のあるページを見下ろした。含みを持たせた牧下の言い方に、幹部たちは同じように手元の資料を捲る。今瀬も、配布されていた資料にそのとき初めて触れ、ページを繰る。1枚だけ紙質の違うページを見つける。


「そちらは、先日起きた、総司令部専属秘書官による横領事件に関するデータです。私の部下が調べたところ、その一覧に載っている方々もその恩恵に預かったということが発覚しました」


 心当たりがあるのか、何人かの幹部が慌てて一覧表に目をやる。


「あら、今瀬相談役の名前も載っていますね。それも、受取金額が実行役の秘書官よりも多い――最高額じゃないですか。一体誰が主犯なんでしょうね」


 にやり、と牧下が微笑み、今瀬がギリ、と奥歯を食い締めた、そのとき、バンッと会議室のドアが開き、複数の警察官が入って来た。




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