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異世界救助隊  作者: 里下里山
本編
26/31

第二十六話 それぞれの戦い

「これさ、やばいんじゃない?」


「馬鹿を言うな、せめて言葉上くらいではピンチを隠せ」


 戦闘状態は継続中、とはいえ相手の言葉からも分かるようにこちらが有利な状況だ。

 俺は今ここにいる皆にピンチな状況を救ってもらったし、非常に頼れる面子であることもよくわかっている。


「……まあ、最低ライン。

 時間さえ掛ければ、後はボスが何とかしてくれるってことだよね」


 女のそんな言葉にぴくぴくっとウィンプの耳が揺れ動いた。


「何でボスとやらは来てないんだ?

 探しものでもあるのか?」


 ウィンプのピリついた空気感、優しいイメージからは想像もつかない。

 探しもの、と言う言葉を聞いて二人が焦ったように顔を見合わせる。


「あれあれ?

 これ言わない方が良かったやつ〜?」


「当たり前だ。

 俺たちの内情を話してプラスなことは一つもない」


 ウィンプが手を挙げると、敵二人を囲むようにツルが生え、一瞬にして覆い囲んでしまう。


「……悪い、ちょっとミドロ貸してくれ。

 説明する時間も惜しい、とにかくここを任せたい」


 ウィンプが俺の肩に乗る、毛がふわりと肌を撫でて何だかこそばゆい。

 メンバーは早く行ってこい、と手でアクションしながら目の前の敵の方を見る。

 

「行ってきてください、ウィンプのこと信用してるので」


「それに、私たちなら負けないでしょ!」


「グワグワ!」


 どうやら、ボス?探しもの?とにかくそこら辺に関わってきそうなものらしい。

 ことの重要性くらいは何とか理解して、ウィンプの指示のまま走り出した。


 パーン!

 その瞬間、ツルが弾けて二人が姿を見せる。


「予定変更、時間稼ぎなどどうでも良い。

 お前ら全員殺して、奴らの後を追う」


 バトルが再開しそうな緊張感を背中で感じながら、とにかく走り続けるのだった。


 ――


 女の魔法だろう、岩が飛んでくる。

 私たちはそんな奇襲をかわしながら、二手に分かれる。


「ルハル、あんたそっちやりなさいよ」


「ルノ、相手は魔法使い。

 私たちなら癖もよくわかってる」


 ルハル、と呼ばれたのは恐らく男の方だろう。

 私とアイラの相手はもう一人ということだ。


「ふーん、二人とも水の力を使ってるんだ。

 ……まあ、何でも良いけど。

 私はラルゴでーす、ここであなたたちはやられちゃうから覚えなくても良いよ!」


 ラルゴと名乗る女……本当に戦闘中によく喋る。

 まるでこの戦いを単なる遊びだとしか思っていないようなそんな感覚。


「黙っちゃってつれないなぁ、じゃあ見せてあげよっか。

 私はね、さっきのミドロ君だっけ?に凄く賛成。

 あいつは脳筋を馬鹿にしてたんだけどさ。

 そりゃあ、力が強いやつがバトルは勝つべきでしょ」


 魔法使い、さっき私たちはラルゴのことをそう呼んだ。

 岩を飛ばしてくる攻撃も使っていたし、完全にそれが主流の使い方と呼んでいた。

 でも……


「パワーバフ、それからスピードバフ」


 華奢なイメージの彼女の身体はどんどんと筋肉を増していく。

 そこでようやく彼女の戦い方を理解する。


「それじゃ、いっくよ〜!」


 強化魔法を使った、肉体による戦闘。

 つまりミドロ君と同じ、典型的な近距離メイン。


「おりゃあ!」


 水の壁を貼ったが、貫通して身体が吹き飛ぶ。

 急いで、水を操作して自分をキャッチする。

 何とか受けれたものの受けた腕が衝撃的に痛い。

 もう一度喰らう、というかあたりどころが悪ければ余裕で骨を持っていかれていた。


 距離を取る、何度も言うが本当にミドロ君と同じ。

 シンプルな強さだからこそ、弱みもなく厄介。


「ルノ、大丈夫?」


「うん、問題ないよ」


「……強くなったね」


 じゃあ、どうするか。

 シンプルに上回ればいい。

 ただただ実力が上なら、むしろあの手のタイプはどうすることもできない。


「作戦は?」


「……とにかく、魔法使ってずっと戦ってほしい」


「そしたら、勝つのね」


「任せて!」


 水の玉を自分の周りに浮き上がらせるアイラ。

 それを思いっきりラルゴに向けて撃つ。


「あ、お話終わった?

 その程度の力じゃ私を倒せるわけないじゃん」


 水の玉を思いっきりぶん殴る。

 水は弾けて、すぐに攻撃性を失ってしまった。

 弾き終わった瞬間、ルノも同じように水の玉を飛ばす。


「少しは学ぼうよ!」


 やっぱり全部弾き飛ばす。

 規格外の力、単なるパワーだけならミドロ君の上かもしれない。


「まだまだやってて良いのね」


「うん!」


 次はアイラの番、相変わらず水の玉を飛ばしまくる。


「もう、飽きたっての!」


 次は同じように行ってくれない、タックルでこちらの攻撃を受けながら、間合いを詰めてくる。


「ラッシュフォワード!」


 アイラの足元に水流を起こして避けさせる。


「技に名前つけてるんですか?」


「まあね、だってカッコいいじゃない!」


 ふぅ、でも正直ラッシュフォワードとやらは危なかった。

 技名つけるくらいだし、さっきのシンプルパンチよりは強いんだと思う。

 アイラも冷や汗をかいて、こちらにグッドサインを送ってくる。

 ……そろそろ良いか。


「ラルゴさん、私もあなたの言うことには一部賛同できます。

 確かに、パワーがあるというのは大きなアドバンテージですよね」


「うん、そう思うでしょ?」


「ええ、だからあなたに特大の一撃を与えますよ」


「は?」


 ラルゴの頭上には大きな水の槍があった。

 それも規格外のサイズだ。


 水は弾けても消えやしない。

 その場にとどまり続けて、蒸発でもしない限りは意地でも居続ける。

 私の力やアイラの魔法もそうだ。

 消えろ、と願わなければずっと消えないで合わさりどんどんと水量を増していく。


「これはほぼ同じ能力者二人の力を合わせたシンプルにデカい攻撃。

 試しに技名をつけるなら……オーシャンメテオとかでしょうか?」


 技名をつける、物語を最近読み続けていた私は案外そういうことに憧れていた。


「とりあえず、受けてみてください」


 落ちてくるとんでもない水量を、拳で受け止めるラルゴ。

 少しの間、耐え続けていたが結局勝つことはできず水に一気に飲み込まれる。

 圧倒的水の重さに耐えかねた彼女は、最終的には地に伏せていた。


「やったー!完全勝利!」


 アイラは嬉しそうに私を抱きしめた。


「ふふっ、私には超えたいライバルがいるんだから。

 まずはこれくらい勝たなくちゃね」


 そう言いながらも私は、ゆっくり胸を撫で下ろす。


 ――


「ふんっ!」


 ムチ状に変化したスライムで私を狙う男、確か名前は、


「ルハル、だっけ?

 こんなことしててもジリ貧なんじゃない?」


「おい、なぜ名前。

 ああ……だからあの女と組むのは嫌だったんだ。

 単細胞すぎて頭が痛くなる」


 ストレスが溜まっていそうなルハルはお腹周りを撫で回す。

 実際、ジリ貧なんて言い方をしたけど私たちが困っているというのが本当のところだ。

 奴の周りにいるスライム達、数で言えば五体。

 アロナさんの銃弾を物ともしないし、その柔らかい身体でぐねぐね逃げるもんだから私とエマの攻撃でも凍り辛い。

 単刀直入に言えば、相性が悪いのかもしれない。


「あれってモンスターってやつ?

 ヤマエは何か知らない?」


 アロナさんの疑問に首を横に振る。


「いえ、私たちの世界では複数体との契約は出来ませんでした。

 恐らく、モンスター使いと言う部分は同じだけど世界自体は違うんだと思います」


「なるほど……そうやって争いを起こさせたってわけか。 

 ボスとやらはやけに頭が回るね。

 じゃあ、情報も弱点も分からないわけだ」


 ルハルはスライムの後ろに位置している。

 つまりこれは、スライムに守ってもらえる陣形となっているわけだ。

 スライムを倒されればなす術が無い。

 まあ、ほとんどのモンスター使いにとっての弱点だ。


 結局、スライムを倒さないといけない。


 ……本当か?


 ………………。


「あの、アロナさん」


「どうした?」


 でも、アロナさんは救助隊としては大先輩らしい。

 前にミドロが話してくれた。

 ハガリさんとの連携が抜群で頼れる人だと。


 私たちはほとんど初対面のようなものだし、作戦は大いに失敗する可能性もある。

 今回は怪我しちゃダメだってミドロも言っていた。

 何を考えているのか、読み取り辛い人ではあるしもしかしたら私より良い作戦を考えているかもしれ……


「ヤマエ」


 アロナさんに肩を掴まれてハッとする。


「あ、その。

 すいません、何でも無いです」


「ヤマエ、言って欲しい。

 ……絶対カバーする、だから聞かせて」


「……はい、それじゃ」


 話を聞き終えたヤマエさんはニヤリと笑う。


「それ、乗った」


 そう言ってヤマエさんが構える。

 私は頬を思いっきり叩く、その音は集落中に響き渡っただろう。


 ……集中しろ。

 ミドロとの約束を守るため、それから大好きになれそうな先輩とのこれからのために。


「マヤ!」


 話し合いの最中、戦い続けてもらっていたマヤにもう一仕事。

 私と意思を共有しているマヤは一目散にスライム達の方へ向かっていく。


 スライムの内四体は遠距離攻撃を受ける目的の奴ら。

 つまり、こう言う突進攻撃には手に持っているスライムをムチ状にして飛ばしてくる。


「竜化!」


「グオオオオオオオオオ!」


 その瞬間、マヤはムチの先端と自分の身体の一部を凍らせる。

 そうすればマヤとムチのスライムが結合された状態になる。

 そのままマヤは高くに飛ぶ。


「くそっ!

 まずいまずいまずい!」


 そうすれば一番怖いのが落下。

 他のスライムたちは総動員で落下地点に構える。

 それと同時に、アロナさんが銃を構えた。

 狙いは勿論、ルハル本体だ。


「ま、守れ!」


 次に次に、その銃弾を受けるためにスライムたちは思い切り体を伸ばしてルハルの身を隠す。

 どうやら、全部上手く行ってしまったようだ。


「じゃ、後は任せたよ?」


「うおおおおおおお!」


 後は簡単、私とエマで氷ブレスを喰らわせる。

 スライムがそれを避けようと縮めばアロナさんによって本人がやられてしまう。

 ……ここまで来てしまえば動かずにやられるしかないというわけだ。


「ああ、嘘だろ。

 こんな餓鬼二人に俺が終わらせられる……」


 スライム含め、ルハルはそんな言葉を言い残し完全に凍りつく。

 集落に聳え立つ氷の塔のようなものは私たちの勝利の証明だ。


「ありがとう!

 何が良い言い方無いかな……アロナの姉御!!」


「あ、姉御……。

 それって尊敬ってことで良い?」


「勿論、一生お世話になります!」


「…………老後も?」


「老後も!」


 どうやらルノさんたちも終わったらしく、敵の女の人を縄でぐるぐるにしている。


「じゃあ、後はおばあちゃんも含めて村人たちを船の中に移動させましょう。

 私がいればとりあえずは信用してくれるはずです」


 そう、もうウィンプに連れられたミドロの居場所は分からない。

 無線機も、圏外になっているようだ。

 私たちはやれることをして待つ、もうそれだけ。


「ほら、いくよヤマエ」


 とりあえず、頼りになる先輩の背中を追いかけてみる。

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