表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界救助隊  作者: 里下里山
本編
21/31

第二十一話 災厄の最中

 「コノヤロオオオオ!」


 剣を振り下ろすガウラスさんの攻撃を杖で受け止めるアイリスさん。

 華麗な身のこなしで受け流されそのまま尻餅をつく。


「…………」


 無言、それは案外恐怖なもので。

 あまりに冷酷なアイリスさんの表情に気を取られれば、杖の先に溜まっている魔法に気づくのも少し遅れる。

 そういった奴から死んでいく、戦いというのはそんな儚いものだ。


 弾き出された火の玉。

 ガウラスさんは一瞬声を出そうとするがその行為に意味などないことに気づく。

 恐らく、ハガリさんが受けていなければゲームオーバーだったのだろう。


「なぁ、ちょっと待てって。

 忘れちまったのか、一度協力し合った仲だろ。

 話くらい聞いてくれって」


 その言葉も全く響いていないようだ。

やはり口を開くこともしないしハガリさん相手にも攻撃の手を緩めることをしない。

 その間に、俺はガウラスさんを山の裏まで連れて行く。


「クソッ!

 何なんだあの女!」


 ガウラスさんもかなり温まっているようだ。

 地面を強く叩いて、その感情を表現する。

 まあ、ようやく平和になりつつあるこの世界をもう一度争うとしているのだ。

 当たり前の反応だと思う。


「……それでも……戦わないでもらうことは出来ませんか!?

 俺たちも何が何だかよくわからないんですが、相手も本当は良い人たちなんです」


「それは聞けない、いくらお前たちの願いだとしても。

 俺たちにはこの世界を守っていかないといけない義務があるんだ。

 ミドロの世界を命の恩人が滅ぼしたとして、お前はそれでも尊敬し続けることは出来るか?」


「…………」


「悪いな、勿論お前らに攻撃するつもりは無い。

 戦うのが嫌だと言うのなら外で見ていても構わない」


 こうしてガウラスさんはまた戦地へと向かっていく。

 ガウラスさんもアイリスさんも、とっくに冷静では無い。

 ハガリさんは必死になって止めに入るが、本気で戦っている者同士に割り込むことなど本来できない。

 最終的には突き飛ばされ、ここまで状況が悪くなってしまったことに唖然とする。


「うおおおおおおおお!」


 そんな絶望も束の間、二つの世界の人々は戦い初めてしまっている。

 命を懸けるという意志を感じる叫びが周りで何度も響きあってい。

 その規模は、俺たち二人ではとっくに止められない所まで広がっていた。

 

 やばいやばいやばい。

 心臓が動く音が速くなる、身体がだんだんと低下していく感覚も覚える。

 これまでとは大きく違う絶望の種類。

 自分が強くなっただけではどうしようもない感覚。


 俺にとってはアルデハインもスアイガイも大切な場所になっていた。

 それぞれ良くなって発展していくはずの世界だった。


 それが、こうして戦争になってしまっている。

 俺には最早、その理由すら分かっていない。

 理由を考える時間すら与えられない。


「……誰か助けて」


 世界を救おうと志した男にとって、それはあまりに情けない言葉。

 誰にも届かない程の、小さくて震えた声。

 神に願っているだけに過ぎないそんな一言が漏れる。

 一度出てしまえば、もう止まることはない。


「お願いだ、助けてください。

 助けて、助けて……!」


 …………でも、誰も助けてくれない。

 そんなの知ってる、何度もこんな局地を迎えてそれでも俺たちだけ乗り越えて行くしかなかったんだ。

 せめて一、二人だけでも救って少しだけでも状況を良くしなきゃ。

 涙は溢れたまんま、それでも走り続ける。


「はぁ!」


 その攻撃の合図に急いで飛び出す。

 うち放たれた魔法を何とか身体で受け止めた。

 じんわりと痛みが広がっていく。

 それでも、


「辞めてください!

 こんなことして何になるんですか!?」


 必死に訴えかける。

 魔法使いも俺の顔はよく知っているのだろう。

 顔は苦しそうに歪む。


「分かってます、自分の世界が危機的状況になりそうで恐ろしくて仕方ないことも。

 でも、でも俺たちが何とかするので今日のところは」


「じゃあ、この戦いだって辞めさせてよ!

 そこまで言うんだったら止めて見せてよ!」


 勿論、それに対して返せる言葉なんか一つもない。

 この戦いを止める手段なんて一つも持っていない。

 今の俺には何にも出来ないけど、それでもやらなくちゃいけない。


 俺は必死に両手を広げて間に入ったままそこを動かない。

 ハガリさんの怒号のような説得も耳に流れ着いている。

 俺もハガリさんも諦めが悪いんだ。


 ふと、頭の中に巡る記憶。

 ルノが能力を暴走させて俺が力を覚醒させた時。

 俺は、あり得ない奇跡の連続でここまでやってきたのだ。

 だから、今回だって少なくとも動かなくちゃ。

 0から1に変えるための、奇跡を起こせるくらいの努力はしなくちゃ。


「おい、あれなんだ?」


「やばくない……?

 全員走って!」


 急に、皆が動揺し戦いを中断して走り出す。

 つまり、戦いは止まったのだ。

 ……本当に、奇跡が起きたのかもしれない。

 叫びすぎて疲れた。

 視界が掠れて状況も良く分からない、目を擦る。


 はは……


 人間、案外絶望の頂点に立つと笑ってしまうものだ。

 波が立つ、それも大きな波。

 ここはスアイガイ、その特徴の大きな部分にあったのはこういった自然災害。

 噴火に地震に、今起きているみたいな津波。

 俺は少し遅れて、ようやく走り出す。

 でも、その時は一瞬。

 視界は大きな波に巻き込まれて暗く染まった。


 

 ……………………目を開ける。

 天井ですぐに気づく、ここはテントの一室らしい。

 周りを見渡せばハガリさんや狼一族の皆が治療を受けている。

 とりあえず、スアイガイの人々で見覚えのあるメンツは全員無事のようだった。

 と、さっきまでの状況を思い出す。


「そういえば、さっきの津波!

 あれは大丈夫だったんですか!?」


 手に包帯を巻かれながらハガリさんが緩やかに笑う。


「おう、そんなの当たり前だろ。

 だってよ……」


「ミドロ、起きた!?」


 ドンッ、と強い衝撃を腹部に受ける。

 いきなりなんだ……急にベッドに押し倒される状態になった訳だが、その原因を作った人。

 その人を見て、痛みやちょっとの怒りは吹っ飛んでしまう。


「……アロナさん……!?」


「そうだよ、久しぶり」


 時間でいえば、おおよそ一月くらい。

 久しぶりに見たアロナさんの姿につい感極まってしまう。

 

 「まだまだ後輩だね〜」


 呆れたような、少し嬉しそうな表情を見せるのはやはりアロナさんで間違いない。

 何故彼女がこの世界に来ているのか……あの扉を通ってやってきたのだろう。

 そこでようやく気づく。


「あの、もしかして……!」


「ああ、流石にもう分かるだろ」


 ハガリさんに促されるままに外に出る。

 あの津波、俺の推理が正しいならその人はあれほどの水量を操って、それぞれの世界に全員生きたまま帰したのだろう。

 そんなのは最早チートだ。

 それこそ、俺の記憶の彼女ではあり得ないほどに。


 だが、意外にもあっさりその姿を見つける。

 この世界の風景や、今の状況を見て回っていたようだ。

 ようやくこちらに気づいてくれる。


「……ミドロ君。

 そんなに泣いてどうしたんですか?

 私が助け出した時も、涙の跡がついてましたよ。

 あなたは私の憧れで……ライバルなんだからしっかりして下さい」


「……ルノ!!」


 ああ、あの時俺たちは必死に戦いを止めて。

 今こうして奇跡が起きた。

 違う、最初から……あの時から奇跡は起こっていたのだ。

 ここで俺たちはようやく、一部ではあったが異世界救助隊のメンバーと再会することが出来たのであった。


 その数時間後、異世界救助隊のメンバーが集結して焚き火を囲む。


「マジで助かった、あれは俺たちだけだったら確実にヤバかった」


 まずはハガリさんの感謝から始まる。

 俺も大きく、長く頭を下げる。

 あの絶望から状況を変えるには他でもないルノの力が絶対的に必要だった。


「いえ……。

 私にとっては単なる恩返しです」


 そう言うルノはアロナさんに頭を撫でられる。

 どうやら仲は相当深まったらしい。


「それで、少し情報を共有しましょう。

 話します、あっちの世界で一体何があったのか」


「ああ……それに俺たちを助けたその力。

 一体、どうやってそこまで力をつけたんた?」


「そういえば、そうですよね。

 じゃあそれも含めて」


 俺たちは異世界救助隊だ。

 久しぶりに出会った余韻に浸るのももう終わり。

 喋り始めたルノの言葉に、今は静かに耳を傾ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ