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異世界救助隊  作者: 里下里山
本編
11/31

第十一話 最初から

 船に乗り込んで、一体どれくらいの時間が経っただろうか。

 前の世界間より、かなりの距離があるようで今日を含めて3日間ほど移動している。

 ようやく船旅の終わりが見え始めたようで、ハガリさんが準備を始めていた。


「これ……もいるよなぁ」


 どんな道具を持っていくか、かなり苦戦しているようで何度もリュックから出したりしまったり、そんな作業を繰り返している。

 そのリュックのサイズは、アルデハインに持っていたものと変わらないがリュック自体の数が2つに増えている。

 つまりは2倍の荷物の量というわけだ。


「あの……なんだか気合い入ってますね」


 俺はこっそりとゴウテツさんに声をかけた。


「ん?ああ、そうだな。

 アルデハインの時は世界に到着してから準備している感 

じだったもんな」


「はい……ハガリさんって準備とかに時間かけないタイプだと思ってました」


「まあ、実際普段はそうなんだがな……そんなハガリが準備している理由、少しすればお前も分かるはずだ」


 少し考えて、人数が少ない分何か危険が伴うのかもしれないと考える。

 正直に言ってしまえば俺は頼りないはず……自分で言っていても悲しい話だ。

 まあとにかく、準備に越したことはないと部屋に戻り日課の筋トレをやっておくことにする。


 ルノやアロナさん、ウィンプやアイラ……。

 皆んな上手くやっているだろうか。

 ふと、そんなことが頭を巡る。


 アロナさんの占い、その結果によればアテラハインの危機もまだ去っていないのだ。

 こうして短い期間だが、確かに仲間意識が芽生えていたのだなと、そう強く感じた。

 不安を掻き消すように身体を動かし続ける。


 筋トレを始めてすぐ、部屋に備え付けのスピーカーが鳴る。


「こちらゴウテツ、聞こえてるかミドロ。

 部屋に戻ってすぐですまないが、思ったより早く目的地が見えてきた。

 一度、お前もその目で確かめておくといい」


 どうやら、目的地に到着しそうなようだ。

 俺も正直、まだ異世界というものに慣れていない。

 不足の事態が起こらないように確認しておこう。


 俺が戻ると、ゴウテツさんがちょいちょいと窓に指を指す。

 気づけば、周りの景色は鮮明に見えるようになっていて異世界間の移動は終了したのだと理解できる。

 しかし、それ以上に目を見張る部分があった。


「大きい星だ」


 目の前に広がる惑星、おそらく今回の目的地なのだろう。

 それは目視ですら、アルデハインの数倍の大きさを誇っていることが分かる。


「さて、ミドロ。

 お前にはこの星がどう映る」


「……何となく、ヤバそうだなと」


 直感的に出た、ヤバそうという言葉。

 あまりに語彙力が足りていない感じだが、正直本当にそれしか言葉が出ない。

 木々が生え揃っている森のような場所が各所にポツリとあるだけで、他は草木も生えない荒野のような場所。

 この世界のどこかに落とされた時、運が悪ければ何もない場所を彷徨い続けて、そのまま人生が終了してしまうなんてこともあるかもしれない。


「そう、この場所は様々な不運に見舞われてきた。

 一番にたくさんの災害、それにより自然という生態系としてのアドバンテージを大きく失っている。

 そこにたくさんの恐ろしいモンスター。

 この世界は生き抜くだけで過酷なんだよ」


 ゴウテツさんの言葉に息を呑む。

 どうやら、仲間たちの心配をする隙すら与えてくれないらしい。

 これから、常に生きるか死ぬかのサバイバルを要求される可能性もあるのだから。


「……ハガリが準備をしていた意味もよく分かっただろ?」


「はい……」


 とりあえずハガリさんには最大の感謝を。


「それじゃ、とりあえず今日はゆっくりしておけ。

 明日からどうなるか分からんからな」


 部屋に戻る最中に未だ荷物について考えるハガリさんを見かけて、何か手伝えないかと声をかけようか考える。

 だが、やめておくことにした。

 ここは初心者が出しゃばる場所じゃない。

 ハガリさんに何か頼まれない限りはやめておこう。


 明日はその分、ハガリさんが準備してくれた分も頑張る。

 そう決めて、部屋の扉を閉じて灯りを落とした。

 

 目を閉じながら、悶々と考える。

 荒廃した世界、スアイガイ。

 その名の通り、恐ろしい世界だ。


 次の日、俺たちが降り立ったのは船から見ていた荒野のどこか。

 ハガリさんと俺、今度は二人のどちらともが大きなリュックを背負っている。

 ゴウテツさんは、アルデハインの時と同じように船の中に残るようだ。

 整備に点検、この大きな船だ。

 やることも多い。


「よし、それじゃ早速歩いてみるか」


 ハガリさんの一言をきっかけに歩き始める。

 それこそアルデハインの時は、アイラに攻撃されたことをきっかけに、どんどんと事件に結びついた。

 運が良かった、まさしくその言葉がピッタリだと思う。


 何時間歩いたのか分からない。

 多分、俺が想定しているよりもずっと時間は進んでいないのだろう。

 目の前に広がっている景色は最初からほとんど変わっておらず、抱いていた新鮮みもとっくに消え失せた。


「ハガリさん、これってこのまま進んでて大丈夫なんですか?」


 あまりの辛さについ、言葉が漏れてしまう。

 その言葉に呼応するかのように、ハガリさんは立ち止まった。


「…………そうだよなぁ。

 正直言って、俺もよく分からない」


 不安がより一層増す。

 アロナさんの能力はとても強力なことには違いないが、かなり不明瞭な部分も大きい。

 こうして、路頭に迷って何日間を潰すことだって少なく無かったのだろう。

 ハガリさんは分からない、と迷いを見せながらもそれでも歩くことをやめない。


 しかし、その後も特に何も見つからないまま外は真っ暗になってしまっていた。

 ようやく、持っていたリュックをその場に下ろす。


「はぁ、はぁ。

 すいませんハガリさん、ちょっと限界です」


 アルデハインの時は都市まで四時間を超えるくらい歩いたが、今回はその倍だ。

 こうして夜を迎えるまでほとんどの休憩無く歩き続けたのだから、修行で体力を増やしていたとはいえたまらなく辛い。

 今いる地点ですら、朝ごろと比べてもほとんど変わらないような場所のため達成感もない。


 ハガリさんはランプを真ん中に置いて、缶詰を開ける。

 開けた缶詰の一つを渡されて、湧いてきた食欲の赴くままに食べる。

 単なる缶詰とはいえ、今日一日中ほとんどなかった報酬の一つにかなりの幸福感を得ることができる。


「明日から、どうしますか」


「どうするか……やっぱり歩き続けるしかないだろ」

 

 仕方がないことだとは、頭では理解している。

 それでも、明日も同じようなことをするのかとうんざりした気持ちを覚えてしまった。

 


「まあ、結局行動をし続けていないと何も起きないだろ?

 俺が責任持つからさ、頑張ろうぜ」


「……はい」


 そうして、決定されてしまった予定に向けて体力を少しでも戻すため、寝袋に入り込んだ。

 ランプの光が消されると、目を開けても閉じても変わらないほどに視界が黒い。


「じゃ、おやすみなさい」


「おう、おやすみ」


 こうして眠りに着こうとする。


 ―ガサッ、ガサガサッ


 寝袋一枚では簡単に寝付けず、目を閉じ続けていたがふと、何かを漁るようなその音が気になり出す。

 ハガリさんが、明日の準備でもしてくれているのだろうか。


 ―ガサガサガサッ、カランコロン


 にしてはかなり雑に扱っている感じがする。

 暗くて見えていないからだろうか、ランプをつければ良いのに。


「ハガリさん、大丈夫ですか?」


「ん、お前の方こそ何か探してるのか?」


「いや、ハガリさんじゃないんですか?」


 ……

 

 数秒間、静寂が流れ続ける。

 一旦、情報を整理する時間が必要だった。


「……え、これミドロじゃないのか?」


「そうですね、なんならハガリさんだと思ってました」


「ちょ、ちょっと待て。

 今、ランプつけるから」


 その宣言通り、光が灯る。

 久しぶりに視界が戻った感覚。

 近くに置いてあったはずのリュックはかなり荒らされていて、溢れた荷物のその先。

 そこには、特徴は違えど雰囲気はアルデハインで見たような怪物、そんな姿があった。


「ギ?」


 勿論、突然ついた光に気づかないほど鈍感ではない。

 ランプに光を灯した張本人である俺たちとも目が合う。

 突如、自分にとって敵の可能性がある生物が目の前に現れる。

 その対処法といえば逃亡……もしくは、


「ギュオオオオ!」


 自分を守るため、襲いかかってくる怪物。

 起き上がって、相手の攻撃を受け止めるまでの一連の行動はギリギリすることに成功した。


「ハガリさん、こういう時って戦っても大丈夫なんでしょうか?」


「勿論、ミドロだったら戦うことについても俺が責任を持つが、今回は事情がわからん。

 世界についてもまだ不明瞭、倒してしまうことで俺たちの状況が悪くなることだってあり得る。

 戦いは最悪な状況になりそうならありだが、なるべく逃げる方向で行こう」


「了解です」


 とりあえず、組み合っていた怪物を突き飛ばして即座に走り出す。

 俺を守ってくれるかのように、ハガリさんは俺の後ろについた。


「ギュオッオッオッオッオッ……!」


 対する俺が突き飛ばした怪物は走りながらも奇妙な

雄叫びを上げる。

 すると、次々に仲間であろう怪物たちが集まり出した。

 なるべく戦いたくない状況でのこれは、ピンチと言って良いだろう。


「「ギュオオオオ!」」


 チラリと後ろを振り返る。

 およそ二十体、一瞬しか見えなかった都合上なんならもっといるかもしれない。

 っていうかいつまで走り続ければいいのだろうか。


「これって完全にヤバいですよね……」


「ヤバいな、本当にヤバい。

 なんかドンドン増えていってるし……」


 どうやら増えているらしい。

 今日一日の疲れにプラスして、ずっと走り続けているのだ。

 とっくに後ろを振り返る余裕なんてない。

 もはや、戦って五体満足で勝ちきることも厳しいかもしれない。

 そんな、鬼畜チェイスを続けて数十分。


 目の前、どころかどこを見てもたくさんの怪物。

 もう走るコースもないほどに取り囲まれている。

 つまり、詰んだ。


「ギュオオオオ!」


 それぞれの怪物たちが、呼応するかのように叫ぶ。

 もう仕方あるまい、ここで共倒れするわけにはいかないのだ。

 戦いを始めようと身構える。

 怪物たちが一斉に向かってこようとした、その瞬間。


「止まりなさい!」


 その声を聞いて停止したのは、怪物たち。

 一斉に俺たちの周りから離れて、姿を眩ませる。


「あなたたち、大丈夫?」


 怪物たちで奪われていた視界から、急に現れたのは一人の少女。

 この世界での生活を思わせる、邪魔にならないように縛られた黄色い髪と毛皮で作られた衣類。

 この世界に住んでいる人であることが直感的に分かる。


「助かった、急に怪物たちに追い回されてな」


「……もしかして、異世界の人?」


 首を傾げる命の恩人に、しっかりと状況を伝えるハガリさん。


「ああ、そういうことだ。

 良ければ、君の住むところまで連れて行ってくれないか。

 この世界にピンチが訪れているんだ」


 少女は何かを納得したかのように手を叩いた。


「確かに!

 この世界はもうずっとピンチだもんね。

 とりあえず、村に行こっか」

 

 一応、この世界のジョークというやつらしい。

 過酷な世界であるという背景を知っているため、ずっとピンチという言葉に苦笑いするしかない。

 

 その後少女の案内を受けて、道なき道を進んでいく。

 怪物たちに追いかけられる過程で、かなりの移動をしていたようで、人が住んでいそうな村へと案外早くついた。

 最近、あまりにも景色が変わらなすぎたということもあって、何だか感動してしまう。


 村に入ると、さっきまで農作業をしていたであろう痕跡があったり、丸太が積まれていたりなどとにかく生活感を感じる。

 アルデハインに比べると、故郷に近しい部分も多くて懐かしい気持ちになった。


「ここが村長の家だよ。

 今、どこかで話でもしてると思うから先に中で待ってて!」


 少女に言われた通り、家の中に入る。

 ああ、ようやく人がいる場所にありつくことができたのだ。

 不安から解放され、大きく伸びをした。

 と、ハガリさんに肩を叩かれる。


「な、行動を起こし続けてたら何か起こっただろ?」


 親指を立てるハガリさん。

 毎回こんなだったら、本当に身体が持たない。

 その時、反抗の意味も込めて俺は初めて憧れの先輩に対してそっぽを向くということをしたのだった。

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