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7時37分、信号は赤

作者: きむら

スタートラインにつくランナーのように横断歩道の停止線にならぶ人々、ランナーのようにゴールを目指す気高い志向はなく、そこに線が引いてあり、信号が赤だからただ、そこにならぶ人々、もちろん自分も含めて、信号が赤だから。


ふと携帯電話を取り出し時計を見やる、7時37分。横断歩道の反対側の人々も、この信号が青に変わったトタン、怒涛の如く合戦を始めるなんて絶対にありえない、そうただ停止線にならぶ人々。


俺の右隣にならぶ煙草臭くてやけに腹が出っ張ったおっさんも、左隣にならぶやたらとズボンが垂れ下がった安っぽいコロンが香る男子高校生も、そのまた向こうの誰かさんも、みんな顔色はドス黒く、表情は無い。夢の世界のエキストラのようにきっと俺はこの周りの誰の顔も覚えちゃいない。


信号が赤だから、それは条件反射なのか身体は自然と停止線で停まる。思考が冴えていたら、こんな朝は何人か信号が赤だから、前に進んでもおかしくないはずだ、自分も含めてゴーストみたいだ、そんな事を夢の中のような思考で淀む。


信号が青に変わる、淀んだ衆がぞろぞろとこちらに歩を進める。どの顔もドス黒く誰が誰か見分けなどつかない、『日本人は皆同じに見える。』テレビの中の白人が言っていた。


冷たい雨が降り始める、12月もあと2週間、時折みぞれが混じる雨に人々は傘を差し、表情のない顔をベールで覆う。


会社まであと少しという所で、俺は一人の老人の姿に目を止める。オフィス街のど真ん中にポツリ、取り残されたような空間。そこに気持ち程度の遊具が並び、ベンチばかりが目立つ公園がある。


レンガ色の毛糸の帽子を被りベンチに座る老人、手に傘はない。幾重にも重ね着され酷く着膨れした老人、一番上に羽織っているのはアイボリー、鼠、赤のチェック柄のニットコート、クリスマスを連想させるコートだがとても寂しげに重く老人にのしかかる、手に傘は無い。傍に塗れたダンボールが積まれたリヤカーがあるだけ。


明日、7時37分、信号はまた赤だろう。


この老人に赤信号は意味あると思いますか?


目覚めているのは?

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― 新着の感想 ―
[一言]  都会の朝、信号のある風景を描写した、長い詩のような小説ですね。ありふれた日常の風景を、過剰な、夢の中の風景に変換していくというか溶かしこんでいくというか……、風景が変換されていく感じが、な…
[一言]  信号をまもる猫がいてえらいだとかいう話を聞いたことがあるけれど、それは単に車の通行が止まるのを待っていただけで交通ルールを守ろうと心掛けているのではないわけで、大して車の通りもない道の横断…
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