終幕
眠い。……眠い。瞼が落ちる。もう限界……。
「一花ちゃん!!」
「柴田、二台来るぞ」
衝撃で覚醒する。右からの合流で私たちの車両がサンドイッチになったらしい。そのまま正規ルートからフィードアウトしていく。……まずい。屋根に上がって応戦するか。いや、出ている途中で後続車両から銃撃を受けたら困る。
「こうなったら、まず脱出は不可能だ」
三十路の美しい担任は、悠々(ゆうゆう)、煙草に火をつける。莉奈も同意見らしく、一息ついていた。タコメーターの針は70kmで、飛び降りたら撥ねられるのがオチなので思い止まる。車両の制圧は……。大型車両は路肩に止まり、私たちに武装集団が寄る。ライフルは運転助手席の下に隠した。窓を開けるよう合図してくる。
「学生!?」
「こいつらの引率だ。ひどいじゃないか!」
武装集団は焦る。いつもの制服ではないので判別はつかない、はず。隅に集まって話し合いをしていた。隙がある。逃すはずもない。遊底を引いた。
「仕留めろ」
車両の扉が開いた瞬間に私たちは飛び出す。もうおそい。莉奈が3人で私が3人だった。深い眠りに落ちていく。大型車両のサンドイッチは解いて、回転灯つけて戻る。ルーレット族かってくらい飛ばしていた。……私たちの学校に向かっている?
「柴田、参観日だ」
「はい?」
「一花ちゃん、よかったね」
黒塗りの車が一台ある。
「パパ、ママ……?」
「「一花」」
「柴田さんは一花ちゃんの話、いっぱーいいっぱいしてくれたんだよ」
「嘘……」
首都高を事故で4時間も封鎖して、“私”の参観日に来たの? いまさら。
「どうして?」
「小松、相手してやれ」
問いは打ち消す。バラバラになったハンドガンが机にあり、合図で組み上げていく。弾倉を装填して、遊底を引いて銃口を向ける。莉奈の組立は7割。今まででいちばん早いように思う。自分でも驚く。
「柴田さん夫妻、どうです同期で敵なしでしょう」
「一花ちゃんはすごいんだよ」
両親は頷く。莉奈の実力は知っているはず。ペアの申請は[中略]。でも、私は……。いいや、ここで莉奈を逃したらペアとは一生出会えないだろう。一人前って認めてもらいたい。その瞬間である。もうあの言葉しかない。
「小松莉奈、私、柴田一花のペアになるよう命ずる」
「はい! 私小松莉奈は柴田一花のペアになります!!」
ここから紡いでいく。私たちの物語――
ここまで読んでいただき誠にありがとうございます。
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一次選考を通過して、読者投票で選ばれて、やっとしぐれうい先生にイラストを描いてもらえるようです。縁がありますように。祈ります。
曖昧表現の訂正
訂正前:一服していた。
訂正後:一息ついていた。
訂正前:合図する。
訂正後:合図してくる。