莉奈(りな)
いつの記憶だろう。一貫校の寄宿舎にはいってすぐくらいかな。ひったくりが頻繁に出没するようになって、狩りの注文書が出ていた。その時もソロで、街に繰りだす。銃器の所持はしていても発砲は許可がいた。
「たった、3万円ぽっちじゃやる気でない……」
高台で呟く。金欠で渋々(しぶしぶ)受けた注文だったので、いい所取りしようって思う。最終的に犯人逮捕の場にいるだけで報酬が出る。
“商店街で不審物の通報”
警察の無線も傍受していた。違法ではない。……うーん、男が振り返っては物を倒す。走る。ああいう何かから逃げる動作って、件のひったくり犯かも。しばらく観察する。スマホの全盛期はまだ遠く、私は似顔絵のコピーと照合していく。ぱかぱかの携帯電話が欲しい。
「……武装◯、ナイフ。人質◯、同年代くらいの女の子。キツネ◯、素人。通報×」
私はチェックリストに記していく。無線機の周波数調整をする。
「こちら豆柴、人質がいますので発砲許可お願いします」
「了解。許可する」
スナイパーってカッコいい。そう思っていた時分だったか。……困ってしまう。私の許可申請でも聞いたのか、他のキツネが直線上に割ってはいる。私もその場にいたらいいので、苛立ちはない。でも、あのキツネも素人だ。私が討って出ようか。
「こちら豆柴、キツネが邪魔で不可」
「了解。人質優先でキツネの排除も許可する」
「……撃っていいの?」
「許可する」
始末していいらしい。……電波干渉の可能性もあるが、ひったくり犯がそこまでするか。別の事件の線もありうる。麻酔の量の調整も面倒だから、直で排除しよう。分解して箱仕舞い背負った。駆けていく。でも、かなり重たい。ロッカーに放っていく。
「だずけて、助けて!!」
女の子の首にナイフが突きつけてあり、躊躇なく標的の肩を撃ち抜く。転がり呻いていた。人質の確保に動いて、通報もする。他のキツネが傷の手当をしていた。……かなりキツネが集まっていていろいろ引いたら赤字になりそう。
「ありがとう」
そう女の子は言う。本当に小松莉奈なのか。何百回、何千回って注文は受けていて履歴も残っていない。こういう人質に取るのもおおいので、誰かわからなかった。でも、6年くらいで抜いていったの? おかしい。違う、この子もキツネだ。
「一花ちゃんの隣に私がいてもいいですか?――」
「……イヤ」
「いちばんになったら、隣にいてもいいですか」
「なったらね」
私は軽くあしらう。最弱の莉奈だっけ。誰かが言っていた。
誤字修正2箇所
修正前:発泡
修正後:発砲