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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
アルフレッドの反逆

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3

 この世に存在しないはずの空間移動魔法が使えるのではないかと思ってしまうくらい、アルフレッドの足取りは途絶えてしまっていた。元王位継承者の追跡は難航したまま、エルフリート誘拐事件から数ヶ月が経とうしている。

 冬は終わり、春がやってきて女性騎士団にメンバーが増えた。だいぶにぎやかになったと思う。エイミーみたいに天真爛漫な子から、マロリーやルッカのような研究家肌の人間まで様々である。……入団したのは四人だけど。


 少数なのには理由がある。指導者の不足だ。むしろ、春の部で入団者を募った事をほめて欲しいくらいだった。指導する側とされる側の年齢が近い為、上層部が慎重になっているのだ。

 それを何とか微増するよう頼み込んで、入団試験を実施してもらったのだった。

 今の女性騎士たちは、今後師団をまとめる人間になる可能性が高い。人数が増えたらまず、隊編成を行う。少なくともその隊長を務める可能性は大いにある。


 ロスヴィータが女性騎士団長、“エルフリーデ”が女性騎士副団長として叙任されているが、それは貴族として人を率いる勉強をしてきたからこそ許可が下りたものだ。

 提案したのが別の人間であったならば、ひねり潰されているか、企画が動いたとしても提案者がトップに立つ事はなかっただろう。


 一般公募で入団が決まったメンバーは、人の上に立つ教育を受けているかどうかは不問で、ただ能力だけで選んだ。


 実際、ルッカは貴族の出だから見込みはあるが、エイミーの方は正直に言って隊長格にするのには勇気がいる。今回入団したメンバーはこれから確認していくところだ。

 今のところ性格に問題がありそうなのは、一人だけ確認している。しかし、それだけだった。


「フリーデ」

「なあに、ロス」


 先輩となったエイミーとルッカが新人たちと組み手をしているのを眺めていると、国王に呼び出されていたロスヴィータが戻ってきた。彼女の眉間にはしわが刻まれいる。どうやら良い話ではなかったようだ。


 それでも太陽の光が射し込めば、黄金の髪はきらきらと輝き、森林のような碧玉は瞳の中を覗き込みたくなるような深さのある不思議な色合いをしている。

 きりりとした眉は、その間に深い谷間があっても凛々しさ――この場合は威厳かな?――を増大させるアクセントにしかなっていない。

 要するに、どんな表情でもロスヴィータは王子様然としているという事である。


「アルフレッドは、もはや国内にはいないようだ」

「……そっかぁ」


 非常に残念なお知らせだった。


「それどころか、戦争が始まるかもしれないそうだ」

「え、何で? アルフレッドが仕掛けてくるって事?」


 ロスヴィータは訓練中の部下に視線を向けてしまった。エルフリートと同じように、ベランダの手すりに腕を乗せて『ゆったり見学モード』の姿を取っている。

 もう眉間にしわは寄っていない。普段とほとんど同じ態度に急変した彼女に、エルフリートはピンとくる。これは内緒話だ。


「あいつは他国の力を使って自分を正当化させたいようだな」

「……」


 エルフリートは視線をロスヴィータから外した。エイミーが新人の一人、ドロテを投げ飛ばしている。結構吹き飛んだが、ドロテはすぐに体勢を整えて立ち上がった。ブルネットの髪が舞う。


「小康状態を保っているはずのボルガ国にいるらしい。今、ボルガとの国境にあるクルガン領で不穏な動きが確認された」

「よくボルガまで逃げられたね。ボルガのクルガンって言ったら、私たち山岳訓練で遭難したカッタヒルダ山の麓だよ?」


 山岳訓練にあそこを利用したのには理由があった。

 あの山は元々ボルガ国のものだ。過去の小競り合い時にカッタヒルダ山の大半を所有する事になったのは、二大帝国の一つであるビズ帝国の傘下として存在しているグリュップ王国に同じく傘下として存在しているボルガ国が攻め込んできたせいだ。


 というのも、帝王の宣言のせいである。先代帝王が死去した後の新しい帝王は、これ以上の侵略は不要と宣言した。

 ビズ帝国は帝王が変わった途端、見た目上は平和な帝国になった。だが、「帝国の大きさが変わらなければ良い」「帝国の命令が行き渡れば良い」そう言って国の自治権を認めたのだ。

 結果、帝国内で小競り合いが多発した。


 帝国の端に位置する国は、自国の領土を広げるには内側の国に攻め込むしかない。また、自国の領土に不満のある国は当然隣の国を攻め始めた。


 そうして、帝国の最果てに位置する国の一つであったボルガ国は、すぐ隣にあるグリュップ王国へ攻め込んだのだ。

 攻め込まれたグリュップ王国が必死で戦い、優勢で和平を結ぶ事になった。国防上必要だと察した当代の国王はカッタヒルダ山を望んだ。しかし、そのすぐ近くにあるクルガン領が立ちゆかなくなる。そこでクルガンに住む人間が必要な資源を採れるよう、一部をボルガ国に残したのだった。

 攻め込んで負けた上、情けをかけられた国である。そんな国が再び攻め込んでくるとは考えにくかった。

2023.5.18 誤字修正

2024.8.4 一部加筆修正

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