表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
アルフレッド再び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/81

7

 両手を広げられないくらいの幅しかないからか、レオンハルトを跨いだブライスが奥を照らす。わずかに湾曲している通路の様子が分かる。どこかへ繋がっているのだけは確かだ。


「明らかに地下室ではないな」

「どこに繋がっているのか、確かめてみたくなるね」


 新たな手がかりかもしれない隠し通路の出現に、ロスヴィータとエルフリーデが興奮している。レオンハルトは打ちつけた体のあちこちを気にしながら、二人の会話を聞く。


「今度こそ、フェーデが見つかると良いなぁ」

「見つかってくれないと困る」


 二人もやはりレオンハルトを跨いで奥へ進む。立ち上がろうとするのを妨害するかのようなタイミングで二人がレオンハルトを跨ぎに突っ込んできた為、今度は尻餅をついた。

 どんどん奥へ歩いていく三人の代わりに、レオンハルトは執事へとこの仕掛けを元に戻さないよう指示を出すのだった。


「これ、どこに向かっているんだと思うか?」

「この通路の作り主はよほど防犯意識が高かったんだろう、という事くらいしか分からないな。

 方向感覚が狂うように、通路がくねくねとしている。それに、方角が分からないように、磁力のある石をあちこちに埋め込んでいるようだ。私の磁石が全く使い物にならない」


 ロスヴィータがブライスに磁石を見せている。それは、方角を見失ってくるくると変な回転をしている。時折方角を示してくれるが、毎回違う方角を示していて役に立ちそうにない。

 レオンハルトも自分の持っている磁石を見てみたが、同じような動きをしているのが確認できただけだった。


「でも、その割には分岐がないよね」

「そこが不思議でならない」

「昔はいっぱい分岐していたみたいだよ」


 レオンハルトは壁を撫でながら言った。暗くて分かりにくいが、壁には時々木枠がある。レンガで埋められてしまっているそれは、おそらく扉の名残だろう。

 封じられた横穴に、レオンハルトはピンときた。これは過去に使われた王族用の隠し通路なのだ。もしかしたらロスヴィータならば聞いた事があるかもしれない。


「ロス、封鎖された隠し通路の話とかは聞いた事はないか?」

「……いや、隠し通路については爵位と共に受け継ぐ事になっている。例外があるとすれば、必要に迫られる可能性がある時くらいだ」


 この国は今までにないくらい安定している。跡取りではないロスヴィータが知る機会など、ほとんどありはしないだろう。


「だが、この地下通路の片側は王族の屋敷だ。王宮から脱出する際に使う隠し通路の可能性は高い」

「なんか、本当にフェーデがいる気がしてきた」

「――王宮の隠し通路には、隠し部屋がセットになっていると聞いた事がある。様子を見る為に隠し部屋で過ごし、雲行きが悪ければ隠し通路から脱出するのだと。

 私たちが向かう先は、その隠し部屋なのかもしれない」


 途中、分かれ道があった。ひとまずそれらは無視する事にして、ひたすら道なりに進む。一応理由はある。今歩いている道が本線だからである。

 ここはごく一部の人間にしか正確に伝わらない通路である。緊急事態にのみ、ようやく知らされる身内が緊張の中で細かな道が覚えられるとは限らない。

 だから、単純で確実な道が残されているに違いないと読んだのだ。分岐されていた道が封じられている事もあって、四人の意見は一致した。


 不安になるくらい歩いたところで、ようやく階段が現れた。出口――いや、王宮側だとしたら入口か?――は、はめ込み式の天井だった。

 ブライスが持ち上げようとしたが、かなりの重さらしい。出入口の扉がそんなに不便なはずがない。ブライスは天井に向けて体当たりする勢いで、力を込めた。一瞬浮いた。

 どうやら重いだけらしい。レオンハルトもそれに加勢する。息を合わせ、思い切りぶつかった。




 地響きにも似た小さな振動に、エルフリートは顔を上げた。何だろうか、と視線を彷徨わせるも、周囲に変わった様子はない。

 気のせいだったのかもしれないと力を抜いた瞬間、どんっと床が波打った。真下の床が崩れる恐怖に、エルフリートは慌てて移動する。その短い間にも、どんっと突き上げられるような振動が彼を立て続けに襲った。

 エルフリートが問題のある床から体を全て移動しきるかどうかという時、その床が浮いた。いや、浮いたのではない。誰かかが下から床の石材を持ち上げたのだ。

 エルフリートは、目を見開いてその闖入者(ちんにゅうしゃ)を見た。


「おっ、囚われの妖精王子を発見」


 救世主は王子様ではなく、野獣のような男だった。というか、見覚えがある。エルフリートが会って話をしようとしていた男――つまり、ブライスである。

 ブライスの後ろには見慣れた髪色が見えている。レオンハルトだ。この様子だと、後ろにはロスヴィータとエルフリーデもいるかもしれない。


「もう少し待ってな。すぐ楽にしてやる」


 言い方は悪役のそれだが、その表情はなんとも優しくて頼もしい。恋路を邪魔する人間に対しての態度とは思えなかった。

2024.8.1 一部加筆修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ