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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
アルフレッド再び

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72/81

5

 エルフリートに恨みを持つ数少ない王族といえば、アルフレッドしかいない。しかし、アルフレッドが一人でエルフリートを霊廟まで運び入れる事は可能だろうか。

 だいぶ厳しいのではないかとレオンハルトは思う。ロスヴィータも同じ気持ちなのか、この結論に対して確認しに行こうとは口にしない。


「……霊廟を確認するにしても王宮敷地内の捜索は今は厳しいな。それに、全員で入るならば許可を取らねばならない。緊急事態だとしても、だ」

「確実な情報ならともかく、現段階では許可すら下りないかもしれないもんね」

「そういう事だ」


 ロスヴィータとエルフリーデが普段の打ち合わせと同じように会話をするかたわらで、レオンハルトは思案していた。

 アルフレッドが実行可能かどうかはさておき、状況は厳しい。

 口数が少ないと思ったら、ブライスも考え込んでいるようだ。


「逆に、だ。もしも王宮内に彼が監禁されているとしたら、アルフレッドも身動きできないって事だな?」

「――少なくとも、今夜は別の場所にいるだろうな」


 ロスヴィータの言葉にブライスは納得したのか頷いている。


「ロス、お前さ、一人ならいけるんだろ?」

「ああ」

「一人で確認しに行ってくれ。そんで、もし見つける事ができたら思いっきり騒げ」


 事を大きくしてどうする気なのかとレオンハルトは目を見開いた。エルフリーデもぎょっとした顔をしている。

 比較的冷静なロスヴィータでさえ「は?」とブライスの事を凝視していた。


「エルフリートが一人でその場所にいるとしたら、侵入者扱いされちまうぜ。とにかく彼が被害者であるという事を強調して、大げさに主張するんだ」

「……いなかったら?」

「そんときゃ、ご先祖様に「お騒がせしてます」って謝っておきゃいいさ」


 あっけらかんと言うブライスをロスヴィータは半眼するも、すぐに思い直したらしく「行ってくる」と短く言うなり馬を翻した。




 少しして戻ってきたロスヴィータの様子を見て、三人は理解した。彼はいなかったのだ。

 少し鼻を赤く染めた彼女が首を静かに横に振る。


「良い線行ってると思ったんだけどなぁ……」


 エルフリーデの落胆の声が冷え切った空気に溶けていく。


「なあ、このあたりにトライリ家に関連する建物があった気がするんだが、誰か覚えてるか?」

「そんなのあるの?」


 エルフリーデが知らないのは不思議ではないが、レオンハルトすら記憶にない事をよく覚えているものだ。

 ブライスの能力の高さに感心させられっぱなしだ。


 ロスヴィータは記憶を掘り起こそうとしているらしく、遠くを見つめている。しかし思い出せなかったらしく、近衛兵に確認してくると言って再び王宮へ向うのだった。

 門を守る近衛兵から聞き出した彼女が先頭を行き、次いでエルフリーデ、ブライス、レオンハルトと続く。が、ブライスが速度を落としてレオンハルトに接近する。


「おい、レオン」

「何でしょう、ブライス隊長」


 ブライスは、少し悩むそぶりを見せながらレオンハルトに問う。


「何でもない顔してやがるが、フリーデは大丈夫なのか?」

「はい?」

「ありゃ、全然別人だ。別人じゃなけりゃ、よほど気が動転してるんだろうよ。このまま一緒に行動して問題ないのか、俺ははなはだ疑問だと思ってるんだが、レオン(兄の親友)の目から見て、アレは普通なのか?」


 やはり怪しまれている。これは心配しているように見せてカマをかけているのか、本心なのか。

 レオンハルトはどちらの場合でも取れるよう、言葉を選ぶ。


「そうですね。今までこんな事はありませんでしたから。無敵だと思っていた兄が連れさらわれたとなれば、さすがに動揺するでしょう」

「無敵、ね……?」

「大自然に囲まれている時の彼は、無敵ですよ。それこそ、おとぎ話の妖精のように」


 言い方を間違えたかもしれない。これではエルフリートが野生児のようだ。言い直そうか迷っていると、ブライスが苦笑した。

 ちらりと見れば、どこか吹っ切れたような、照れているような、そんな表情をしている。口元を小さくゆがませ、口角を上げ、だがしかし頬はゆるんでいる。

 レオンハルトはそんな彼の表情を数回見た事がある。それは決まってエルフリーデとおもしろおかしく話をしている時であった。


「あぁ、まあ、そりゃそうだな。うん」


 何に対してそりゃそうだ、なのか聞きたい衝動に駆られたが、やぶ蛇になってはいけない。とりあえず、彼が何を言っているのか分からないとでも言うかのように、首を傾げておいた。


 そうあまり移動しない場所に、トライリ家縁の屋敷はあった。屋敷、というには少しばかりスケールダウンしているそれは、王宮周辺のどこにでもあるような家である。

 普通の家、というには大きいが、特別大きいというわけではない。周囲と馴染むように入念に作られたかのように見えてしまうのは、この家がアルフレッドと関わりががるかもしれないという気持ちで見ているからだろうか。

 互いの顔をみやり、頷き合うと一番身分の高いロスヴィータが扉についた呼び鈴を鳴らした。

2024.8.1 一部加筆修正

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