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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
消えた王子様の妖精

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67/81

2

 レオンハルトは、本当にざっくりとロスヴィータに説明した。その間もリッターから情報が流れてくる。


「どうやって知ってるのかはあとで説明するから、今はただ信じてくれないか?」

「フェーデが本当に失踪したのなら、あなたが不思議な力を行使している事なんか些末な事だ」


 ロスヴィータが頷いている視界の端で、制服に身を通したエルフリーデが玄関へ戻ってくるのが見える。


「フリーデが“エルフリーデ”としてブライスと一緒に動くつもりみたいだから、そこに合流した方が良いと思う」

「すぐに向かおう。どこで合流するつもりだ?」


 ロスヴィータは部屋の奥へと向かったと思えば外套を手にして戻ってきた。本当に探しに行く気満々のようだ。レオンハルトとしても頼もしい。

 自分はできないが、彼女の耳飾りをエルフリーデへと渡せば追跡ができるようになる。彼女に声をかけた一番の理由はそれであった。

 エルフリートを探す戦力としても申し分ないし、やはりこういう話は一番に婚約者へ伝えるべきであるとも思う。だが、一番の手がかりである耳飾りには及ばない。


「先に言っておきたいんだけど……。俺は今、ちょっと普通じゃないから落馬したらごめん」


 馬具を取りつけながら声をかければ、彼女は小さく笑った。


「ならば私の後ろに座ると良い。馬は並走させよう。一人で馬を駆るのは合流してからでもできる」


 鞍を付けた馬を騎手なしに併走させて、すべて解決だと言い放つ。豪快だがありがたい。レオンハルトは甘える事にした。先に騎乗したロスヴィータの後ろに乗る。


「遠慮はいらない。速度を出すからしっかり抱きついてくれ」

「了解」


 ロスヴィータの言葉に甘え、レオンハルトは彼女の腹部へと腕を伸ばした。


「行くぞ。まずはフェーデの屋敷から待ち合わせ場所への経路を逆走する」


 レオンハルトはエルフリートよりも少しだけ背が高い。そしてエルフリートとロスヴィータはほとんど同じ身長だ。つまり、レオンハルトとロスヴィータの身長差はあまりない。前を見ようとしても、彼女の後頭部が見えるだけだ。

 レオンハルトは目を閉じてリッターの感覚に集中した。




「いったい何があったのかなぁ?」


 レオンハルトがリッターの方に意識を集中させると、エルフリーデがそうブライスに言っているところだった。リッターは彼女の尖った雰囲気を感じてか、エルフリーデの足下に一度だけ体をこすりつけてから離れた。

 ブライスはエルフリーデに違和感を覚えているらしく、普段と違った視線を彼女に向けている。


「とりあえず、待ち合わせ場所までの道を辿っていこうぜ。たぶん俺がここに来る時の道と同じだろうが、さっきは周囲に注意を向けたりはしてなかったしな」

「そっか、そうだよね」


 何だか怪しまれている気がする。レオンハルトはブライスの視線の差に、胃のあたりがつきりと痛んだ気がした。ブライスは屋敷の執事に軽く頭を下げ、屋敷を出ていく。

 エルフリーデの方は、リッターに視線を向けて言い聞かせるような口調でこれからの話をし始めた。


「リッター、道中で何かフェーデの痕跡があるかもしれないから出かけてくるわね。このお屋敷は任せたわよ」

「なおーん」


 お行儀の良い、彼女の忠実な猫は答えるように鳴いた。小さく笑んで頷き、エルフリーデが去っていく。レオンハルトはしっぽのように揺れる三つ編みを見送った。

 リッターは大きなあくびをし、執事のステファンの足下に転がった。


「……お嬢様が無事にお坊ちゃまとお戻りになるまで、しっかりと留守を守らないとな」

「なご」


 腹部をわしゃわしゃと撫でられ、リッターが甘い声を上げる。レオンハルトは腹部を容赦なく撫でられる感覚を唇を噛んでやり過ごした。




「もうすぐ待ち合わせ場所に着く」


 ロスヴィータの声でレオンハルトは現実に戻った。集中力の限界だろうか、いつも通りの気まぐれなのか、リッターとの感覚共有が途切れた。今のレオンハルトにとってもれば好都合だ。


「フリーデとブライス隊長はフェーデの屋敷から手がかりを探しながらこっちに向かうみたいだから、俺たちもここからは同じように行動しよう」


 レオンハルトの提案通り、待ち合わせ場所に到着するなり馬の速度をゆるめる。ロスヴィータの巧みな馬術のせいか、訓練の行き届いた馬だからか、レオンハルトが乗るはずだった馬はちゃんと併走してついてきていた。

 彼女にもう大丈夫だと伝え、レオンハルトは併走してきた優秀な馬へと乗り換える。


「ロスは右側を頼む。俺は左側を中心に探すよ」

「光が心許ないな。見つけられるだろうか」

「見つけないと、何が起きたか分からないままになってしまう」

「……そうだな。必ず見つけよう」


 ロスヴィータが珍しく弱音を吐いた。だが、レオンハルトはそれを一蹴した。エルフリートが簡単に行動不能にさせられるわけがない。絶対に裏があるはずだ。

 そうでなければ、よほどの事があったに違いない。暗闇の中、外灯と手に持つ魔法具のカンテラだけを頼りに手がかりを探す。馬車ごとないのなら、不自然な動きをする車輪の跡があるかもしれない。

 だが、ここは交通量が少ないとは言え、普通の馬車道だ。

 きっと消えてしまっているだろう。レオンハルトは他にありそうな痕跡を思い浮かべながらロスヴィータと道を辿るのだった。

2024.7.28 一部加筆修正

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