表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
レオンハルトの秘密

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/81

6

「えっと、そんな簡単に決めても良いのかい?」


 エルフリートの言葉にレオンハルトも頷く。


「総合的に考えれば、悪い手じゃないよね? 悪いけど、私はお兄さまとの入れ替わりに気づいてくれない人なんてお断りよ」


 エルフリーデはけろりとしている。エルフリートも人の機微に疎いが、エルフリーデも似たような性格をしているのかもしれない。レオンハルトはリッターを通しても見れなかった彼女の一面を垣間見たような気がした。


「フリーデ、“エルフリーデ”の振る舞いに怒ってヤケになってるとかはないよな?」

「レオ!?」

「ないわよ。多少飛び抜けてるくらいの方が近づきがたくて良いでしょう」

「フリーデまで何を言ってるんだい!?」


 エルフリートは腰を上げて反応する。エルフリーデはその様子を冷ややかに見つめた。


「“エルフリーデ”の振る舞いが普通だと思ってるの?」

「普通じゃないの?」

「異常よ。だって普通の人ができない大技を使ってけろっとしてるのよ? やる事だってだいぶ普通の人と感覚が違うもの。

 だから、私が“エルフリーデ”でいる時のハードルが高くなっていくのだけは、正直に言うと面倒だなと思うわね」


 エルフリーデは悩ましげにため息を吐いた。


「――これは好奇心なんだけど、今までの“エルフリーデ”と比較してフリーデはどれくらいできるんだ?」

「八割行けば嬉しいくらいかな。がんばれば何とか御前試合の時のはできても、雪山でのアレは絶対無理」

「……そうなんだ」


 この兄妹と狩りに行った時には気がつかなかった。魔法が使えない分、エルフリーデよりも弱いのだと分かり、レオンハルトは何とも言えない気持ちになるのだった。


「とにかく、日常活動の言動もちょっと変だし、あの“エルフリーデ”は普通じゃないわ。ただ、私がそれを悪いと思っていないだけよ」

「えぇー!」


 肩をがくりと落とし、エルフリートは不満そうな声を上げる。


「話が脱線しちゃってるよ! もう……。

 とにかく、私はブライスから逃げる為にレオンと婚約するからね。あー、あれだけロスにべったりしてた私が婚約とか、変な感じがするよぉー」


 エルフリーデが、完全に“エルフリーデ”の言い方でぷりぷりと怒ったように言う。

 レオンハルトから見ても“普段のエルフリーデ”そのものに見える。本物のエルフリーデかどうかは何となくで判断しているレオンハルトが、いつか二人の入れ替わりを間違って判断してしまいそうで薄ら寒さを感じるくらいだ。

 ブライスを擁護するわけではないが、入れ替わっている事を知らない人は気がつかなくても仕方がないように思える。


「フリーデ、言葉遣い」

「三人しかいないんだから、少しくらい良いじゃない」


 これも()()()のやりとりだ。


 レオンハルトは複雑な気持ちになった。エルフリーデに誤魔化されている気がする。本当に彼女は自分で良いのだろうか。自分を押し殺して無理をしてやいないだろうか。


「レオン、これからは私もレオって呼んで良い?」

「あ、あぁ……良いけど」


 エルフリーデに聞かれ、申し入れを受け入れる。元々は彼女にもレオと呼ばれていた。兄の親友という位置関係をはっきりさせる為だけに、王都内ではレオンハルトの事を“レオン”と呼ばせていただけだ。

 これは王都の人間がレオと呼ばなかったからというのが大きい。


 今まではレオンハルトが特別エルフリーデと親しいという状況を作らないようにしていた。それはエルフリートなりに何かあった時にレオンハルトが責められないようにという配慮でもあった。

 だが、婚約者となるならば、親しみを込めて親友だけが使っている呼び名でも違和感はないだろう。馴染みのある呼び方の方が、レオンハルトもしっくりくる。


「レオ、これからよろしくね」

「フリーデ、本当に良いの!?」

「お兄さま、うるさい」

「ひどいっ」


 エルフリートが騒ぎ始めた。

 エルフリーデとの仮の婚約を良いアイディアだと言っていた男にしてはしつこいように感じられる。これが複雑な兄心といったところだろうか。


「レオ、ちゃんとフリーデを守るんだよ」


 エルフリートの不機嫌そうな表情を見つめていると、矛先がレオンハルトに向けられた。


「もちろんさ。婚約に関しては俺が全部矢面になるよ」

「……それなら良いけれど」


 言葉ではそう言いつつ、じっとりとした視線は変わらない。信用されていないはずはないと思い、しかしそこで自分が男として信用されていないのではないかと思い当たる。

 レオンハルトはエルフリートと恋愛ごとに関する話をしてきた記憶がない。まあ、レオンハルト自身が恋愛ごとに積極的ではなかったというのもある。

 話せるほどの内容もなかったせいで話題に上らなかったのが、現在の状況を生み出してしまったようだ。


「俺が頼りになるかどうか、明日になれば分かるよ。ところで、辺境伯への報告はどうするんだい?」

「特別な子を父から預かっているから、それで報告するよ」


 エルフリートはそう言って、レオンハルトにも通じるように鳥の幻を作り出したのだった。

2024.7.21 一部加筆修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ