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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
レオンハルトの秘密

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60/81

3

 アントニオの部屋を辞したレオンハルトは、その足でエルフリートの部屋へ向かった。


「レオン、珍しいね」

「ちょっと話があって」


 エルフリートは小さく首を傾げると、すぐに中へ招いてくれた。室内は相変わらず少女っぽい。十四の少女という設定なのだから、これくらいは普通なのかもしれないが。

 エルフリートが紅茶と茶菓子を用意している姿を見ながら、レオンハルトは話をどう切り出そうかと考えていた。だが、考えがまとまらない内に用意が終わってしまう。


「話って何?」

「ブライス隊長の事なんだ」

「……もしかして、またレオンハルトもブライスに気をつけろって言いに来たの?」

「何だって?」


 また、という事は既に他の人からも再三指摘されているという事だ。つい身を乗り出すと、彼は眉尻を下げた。


「ロスもフェーデも、何度も気をつけろって言ってくるから……」


 何でそんな風に感じるのか、全然理解できないんだよねぇ。そう続ける彼に、レオンハルトはため息を吐いた。


「分かってないのはフリーデだけらしいな」

「だって、そんなそぶりないじゃない」


 エルフリートは全く意識していないようだ。ブライスのアピールが通じていない事を喜ぶべきか、呆れるべきか。


「あんなに特別優しくしてもらって何も感じないのは、君だけだと思うよ」


 だいたい、ブライスの隊が何度も女性騎士団と合同訓練している点からしておかしいのだ。去年の今頃、ブライスが率いる隊はしょっちゅう王都から離れて魔獣退治をしていたのだから。

 それを伝えると、さすがに彼の顔色が変わった。本当に気にしていなかったらしい。


「……こういう時、どうすれば良いの?」

「相手の好感が上がらないようにするのは難しいから、あなたは私の恋愛対象外ですよってさり気なくアピールするくらいかな。

 ブライス隊長はまともな人そうだから、多分効果あると思う」


 上司のアントニオが変な人間ではないと言っていたくらいだ。それにレオンハルトが見る限り、紳士的で強引に人をどうこうするようなタイプではなさそうだった。

 むしろ、好きになった人間を溺愛するタイプに見え……いや、もうやめよう。うっかり変な想像をしてしまいそうになり、レオンハルトは頭を振った。

 不審な態度にエルフリートが首を傾げる。


「あ、いや、こっちの話」

「ふぅん……? ところで、そのアピールってどういう時にすれば良いの?」


 そこからか! せっかくアントニオから提案された奥の手を提案せずに話が進みそうだと思ったのに。レオンハルトは恋愛に縁遠い人間だが、それでも何とか対処している。一方、目の前の“妖精さん”は想う相手がいるというのにこれだ。

 本当にロスヴィータと恋愛中なのか、と疑いの視線を送ってしまう。


「常識の範囲を越えて親切されたら『そういうのは恋人にしてあげて』って言ってやれば良い。そしたら多分恋人はいないって言ってくるから、今度は『恋人ができたらお祝いしてあげる』って言うんだ。

 普通はそれで引いてくれる」


 エルフリートはあまりピンとこない様子で 瞬きを繰り返す。


「……行き過ぎた親切って分かる?」

「えっと、私がロスに怒られちゃった時みたいな事だよね?」

「いや、あれは行き過ぎた親切を越えてたから」


 レオンハルトは深く、長く、ため息を吐いた。駄目だ。これは駄目だ。

 このままではブライスの好意は増し、いつの日か“エルフリーデ”がエルフリートだとばれるか、“エルフリーデ”に婚約の申し入れが来てしまう。

 エルフリーデ本人が社交界デビューしていないのに、そんな事はさせられない。


 エルフリートとロスヴィータの為にエルフリーデが犠牲になるのは駄目だ。彼女は自分の意思だと、進んでやっているのだと言っていたが、結婚となると話は別だ。

 これからの人生の大きな部分になるかもしれないというのに、それが“兄の都合”で決められてしまって良いわけがない。

 それも、男のあしらい方が分からなくて気がついたら婚約しちゃいました、は駄目だ。


 エルフリートは思い込みが激しくて、少し行き過ぎるところもあるが、かけがえのない親友だ。リッターを通して、普段の彼らを見ているから分かる。良くも悪くも純粋なのだ。

 だからこそ、一番年上であるレオンハルトがしっかりしないと。目の前でのほほんとしている親友を見て気持ちを強めた。


「エルフリーデ」

「……何、改めて」


 エルフリートのふっくらとした唇が笑みを作る。同性だと分かっていながらも、レオンハルトは一瞬息を飲んだ。

 年少ながらに大人顔負けの魔法を使い、それを感じさせないふんわりとした雰囲気を持たせるこれ(ギャップ)に、ブライスはやられたのだろう。


「私と婚約してくれないか」

「えっ!?」

「もちろん、近々“フェーデ”に相談してからだけど。不本意な男を避けるなら、それくらいしないと駄目そうだ」

「あっ、そ、そういう……」


 婚約という単語が出た途端に頬を赤らめた彼は、その後に続いたレオンハルトの説明に顔を歪ませた。おそらく、レオンハルトが本気でエルフリーデに恋愛感情を持っているのだと早合点したのだ。

 それを恥じるかのように、歪んだ表情を隠そうと手のひらで両頬を隠して上目遣いで見つめてくる。レオンハルトはそんな彼に大袈裟なため息をお返しするのだった。

2024.7.21 一部加筆修正

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