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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
大忙しの記念祭

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57/81

7

 アルフレッドの姿が完全に見えなくなると、誰からともなしに息を吐いた。


「ロスの親戚だから悪くは言いたくないけど、ねぇ……」

「また何か仕掛けてこなければ良いのだけれど」

「俺、ちゃんとロスが火の粉を被らないように気をつけて様子を見にいくようにするよ」


 呆れるエルフリートに対してエルフリーデとレオンハルトはこれからの事が心配なようだ。何かあってもロスを守りきれるという自信のあったエルフリートは、大げさだなと笑った。


「心配と言えば、フリーデ」

「うん?」


 レオンハルトがエルフリートに真剣なまなざしを向けた。


「ブライスには気をつけた方が良いよ」

「レオンまでそんな事言うの?」


 エルフリートはきょとんとした。この指摘はロスヴィータ、エルフリーデに次いで三人目である。


「最近の彼は、あきらかにフリーデを意識しているよ。何かあった時、いつも駆けつけてくれるだろう?」

「まあ、そう言われてみれば……でも、それは誰にでも普通じゃない?」


 首を傾げてみせれば、レオンハルトが盛大なため息を吐く。わ、失礼じゃない? 仮にも親友に向けて!


「フリーデ。自分自身が十分可愛いって事、もう少し自覚した方が良いよ。別に告白される程度で終われば良いけど、あんまり接近されると困るだろう?」

「……確かに、それはごもっとも」


 女装がばれてしまう可能性が上がる。ブライスは信頼できる仲間だが、それとこれは別問題である。


「ばれないように気をつけるね」

「……そういう問題じゃない」


 再びため息を吐かれ、エルフリートは眉間にしわを寄せるのだった。




 せっかくの最終日、最後はロスヴィータのところに行こうと三人の意見は一致した。彼女の持ち場へ向かえば、なぜだか人だかりができていた。


「何だろう?」


 人をかき分けていくと、何となく事情が分かった。御前試合の時に出会った少女が、ロスヴィータを挟んで保護者と揉めていたのである。


「やーだー! 夜のダンスを踊ってもらうのぉー!」


 騎士とダンスが踊りたいとごねる少女は、確かによく目立った。人が足を止めてしまうのも納得だった。

 ロスヴィータをいたく気に入った様子のカトレアは、今回も保護者を困らせているようだ。赤いベルベットに黒のレースをふんだんに使った大人っぽい雰囲気、しかしそのドレスの形はふんわりとしたボリュームがあってアンバランスだ。

 毒婦を思わせる装いであるものの、身に付けているのは可愛らしさ全開の少女である。仮装であるという点も考えれば、これはこれでバランスが良い。


「すまねぇ。こいつ、あんたの事見るなり……」

「いや……」


 準正装をきっちりと身につけ苦笑する彼女に、青年が頭を下げた。


「ロス」

「フリーデ」


 ロスヴィータがエルフリートたちにしか気がつかない程度に眉をしかめた。カトレアが今気がついたといった風にエルフリートを見た。


「私、夜のダンスを彼女と踊りたいの!」


 カトレアは勢いよくエルフリートのスカートを掴んだ。エルフリートはその小さな手を見、そして彼女の顔を見た。目は爛々と光り、それだけロスヴィータと踊りたいのだと伝わってくる。

 エルフリートは思わずロスヴィータを見た。彼女は困惑した表情で小さく首を振る。それはそうだ。彼女は仕事中なのだから。


「えっと、お願いを叶えてあげたいんだけどね、お仕事中だから途中で抜けられないの」


 ひざを曲げて視線を合わせて言うと、きっと眉尻が上がった。わあ、怒ってるぅ……。子供特有の理不尽な怒りを向けられ、エルフリートは泣きたくなった。


「小さなレディ、彼女の代わりに私と踊ってはくれないかい?」


 たじたじになるエルフリートのすぐ横にしゃがみ込んだエルフリーデが提案した。カトレアはじっとエルフリーデを見つめる。


「……誰?」

「私はエルフリーデの兄、エルフリートだ」

「……」


 カトレアの視線に耐え続けるエルフリーデに尊敬の念を抱く頃、ようやく彼女が頷いた。


「わかった。エルフリートで我慢する」

「ありがとう。そろそろ音楽もかかる頃だろうし、広場へ一緒に向かおうか」

「うん」


 エルフリーデはカトレアの頭を軽くひと撫でし、広場の方へ体を向ける。少女の気持ちが変わらない内に、という考えがあるのだろう。エルフリーデはカトレアの手を握って歩き出す。


「ロス、また後でね!」

「あ、ああ……」


 エルフリートは少しだけ迷い、結局ロスヴィータに挨拶をしてエルフリーデの後を追う。レオンハルトもそれに続いた。

 広場に向かう途中、街のあちこちから音が響き始めた。始まりの広場と呼ばれる王立広場で演奏が始まると、水の波紋が広がるようにして演奏者達が音を奏でていく。

 そして最終的には王都全体で同じ音楽を聴く事ができるようになるのである。


 不思議な一体感を得る事のできる最終日のみに行われる演奏イベントは、この国の芸術に対する投資がかなりのものである事を知らしめている。

 王都のあちこちにある広場でカップルがダンスを踊れば幸せになれるとも言われている。エルフリートだって、ロスヴィータと踊りたかった。だけれど、仕事なのだから仕方ない。

 エルフリートはレオンハルトとペアになって踊りながら、エルフリーデとカトレアのダンスを見守るのだった。

2024.7.21 一部加筆修正

2025.8.27 一部加筆修正

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