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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
大忙しの記念祭

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55/81

5

 ロスヴィータたちと離れたエルフリートはエルフリーデを連れて騎士たちに挨拶をしてまわる。可愛らしい双子風の衣装は好評だ。

 雪の結晶とグリフォンという組み合わせのラペルピンはお揃いにしたし、色だって対になるように緑と紫という反対色を使っている。これが実はこっそりエルフリートとロスヴィータの瞳の色に近いというのがエルフリートのこだわりだ。

 エルフリーデには呆れられてしまったが、その割にはすんなりと身につけてくれた。


「――可愛いお嬢ちゃんがいると思ったらやっぱりフリーデだ。って事は……」

「兄のエルフリートよ」


 ブライスが準正装で近づいてきた。彼の隊は確か巡回組だったはず。さすがに全部の隊のスケジュールを把握はしていないエルフリートは偶然にも彼と会えた事をチャンスだと確信した。


「初めまして、エルフリート・カルケレニクス・ボールドウィンです」

「お目にかかれて光栄です。私はブライス・セルラーと申します」


 珍しく丁寧な言葉遣いをするブライスがちゃんと貴族に見える。えっと、貴族なんだけどあまりにも貴族らしくないから……。エルフリートは心の中でそっと言い訳した。

 堂々とした女性装で小さく笑みを作るエルフリーデは、兄の目から見ても女装した青年に見える。つき合わせてしまって悪いなという気持ちはあるものの、彼女の本格的な擬態を目にすれば吹き飛んでしまう。

 すっと目を細め、観察するような視線をブライスに向けるとか、小さな仕草がエルフリートっぽい。


「双子風ですか。とても似合っていらっしゃる」

「ありがとうございます。妹が一緒に仮装したいと言うので、背格好もまだ近いですし、今しかできない事をしようと思って」


 エルフリーデは気さくな態度でブライスと話す。しかし普段よりも言葉遣いが固い。目の前の存在を警戒しているようにも見える。

 ブライスは気がついているのかいないのか。よそ行きの顔で笑む。鎧姿というのも相まって、精悍な騎士みたいだ。


「この前、妹を助けてくださったとか。私からも礼を言わせてください。

 ありがとうございました」

「いえ、たまたま私ができる事をしたまでです。それに訓練では同じようなアクシデントはよくあります。

 むしろ雪山での訓練では私の部下が世話になったくらいです。あなたの妹さんは本当にすばらしい騎士ですよ」


 ブライスに誉められると変な感じがする。むず痒い気持ちで顔が歪んだ。そんなエルフリートをブライスがエルフリーデに向けるようなものとは違う目で見る。

 その目はちょっと苦手かも。


「そう言っていただけると、妹も雪山で無茶をした甲斐があったというもの。これからも()()()()()()よろしくお願いします」


 エルフリートの雰囲気を察してか、意味深に微笑むエルフリーデが冷気を出している。これはこれで珍しいなぁ……。

呑気にそう思っていると、何だかよく分からない戦いが始まろうとしていた。


「妹は誰にでも分け隔てないのが長所ですが、失礼な事をしていたらすぐに叱ってやってください」

「とても責任感のある良い上司をしていますよ。同じく部下を持つ身として勉強になります」

「頼もしい同僚がいてくれるようで、私も安心です」


 ははは、ふふふ、と笑い合う二人はまるで睨み合った熊みたい。ちょっと気まずいよぉ……。

 エルフリートが“エルフリート”として立つ時以上に、エルフリートっぽい。それにブライスが社交界のやり手みたいになってて変な感じがする。


「こんな優しくて美しいお兄様がいて羨ましいですね。私の兄と交換してほしいくらいだ」

「まさか。貴方の兄となるには力不足ですよ」


 うーん、よく分からないけどやっぱり変。やり取りが白々しいって言うか、なんて言うか。


「お、お兄さま! 巡回中のブライスを邪魔しては何ですし、そろそろ参りましょう」


 居心地が悪すぎて割り込むと、意味深にエルフリーデが見つめてくる。だが、彼女は軽く頷いてくれた。


「……そうだね。では、また。お仕事ご苦労様」


 わぁ、尊大な物言いー!


「こちらこそ貴重なお時間をありがとうございます」


 おっとこちらはへりくだってる???

 エルフリートは事情がよく分からないながら、二人の間に何らかの攻防があったのだと感じた。とん、と軽く腰を押されて我に返る。

 エルフリーデに促されるまま歩き出す。あ、ブライスにさようならの挨拶しそびちゃった。


「……フリーデ、あの男は気をつけた方が良い」

「そうかなぁ……?」


 似たような事をロスヴィータから聞いたばかりである。どうして皆がそう思うのか、エルフリートは不思議でしかない。

 首を傾げるエルフリートにエルフリーデはため息を吐くだけで、それ以上は何も言おうとしなかった。


「あ、あっちに別の騎士がいるよ」

「本当だ」

「挨拶に行こう」


 ちらりと横を歩く彼女を見れば、ついさっきまでの冷ややかな笑顔はなく、普段と同じく優しげで凛々しい表情に戻っていた。

2024.7.21 一部加筆修正

2024.10.29 誤字修正

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