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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
大忙しの記念祭

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53/81

3

 昨日は充実した一日だった。鮮やかなだいだい色のジャケットにボルドーのパンツを履いたロスヴィータは、派手な桃色のワンピースを身につけたエルフリートを見ながら昨日の事を振り返っていた。

 エルフリートの姿をしたエルフリーデとのデートはなかなか過ごしやすかった。準正装のエイミーと並んで仕事をするエルフリートを冷やかしたり、エイミーにエルフリーデを紹介したり。街のあちこちにある期間限定の出店をまわったり。


 エルフリートたちに会いに行った時、彼は“婚約者どうし”の姿を見て誉めながら文句を言うという器用な事をしていた。

 エイミーの方はただきらきらとした瞳で感激していた。彼女の準正装姿はなかなか女性騎士らしい、イメージ通りに仕上がっていたのを思い出して口元をゆるませる。

 元気な女の子が騎士になる。そんな夢を体現させていたと言っても過言ではない。

 エルフリートはお上品過ぎるし、ロスヴィータは女性騎士っぽくない。バルティルデは鎧が似合いすぎてただの戦士に見えるし、かと言ってマロリーやルッカはテンションが冷え切っている。

 エイミーほど女性騎士団の理想に近い人間はいなかった。


 もちろん仕事中の他の女性騎士にも会いに行った。バルティルデと組んでいるルッカは相変わらず準正装であっても個性的だ。事前に知っていたとは言え、なかなかインパクトが強い。

 そんなルッカが、私服姿のロスヴィータが“エルフリート”と連れ立って歩いているのを見て一瞬興奮した様子を示したのが印象的だった。

 マロリーはロスヴィータと同じく私服組だった為、昨日は会っていない。もしかしたら近くをすれ違ったかもしれないが、これだけの人混みである。気がつかなかったとしても不思議ではない。


「あ、ちゃんとマリンとエイミーが仕事してる」


 噂をすれば、だろうか。いや、違う。単にマロリーとエイミーが配置されている場所の近くを歩いているからだ。

 ロスヴィータは「それはそうだろう」と適当に頷いた。


「アントニオもいるよ」

「……本当だ」


 エルフリートが頭を動かすと、ふわりと癖毛が踊った。生え際の髪の毛を編み込みにして一周させ、頭髪の上半分を三つ編みのハーフアップシニヨン風にして残った髪を遊ばせている。

 ふともものあたりまである彼の髪の毛が日光に当たってきらりと光った。

 彼が見ているのは、準正装姿のマロリーとエイミーである。マロリーは相変わらず無表情に近い。にこやかなエイミーと並ぶと、より退屈そうに見えてしまう。

 その彼女と話をしているのはエルフリートが言った通り、アントニオであった。


「準正装だから、彼も仕事中だよね。何かあったのかな?」

「一応話を聞いてみるか」

「うん」


 エルフリートと頷き合ったロスヴィータは、揃って彼女たちの方へと向かった。


「お疲れさま。アントニオ、相方は?」


 エルフリートが声をかけると、三人の視線が集中する。


「所定の位置で待機している」

「何かあったのか?」


 ロスヴィータの問いかけに、アントニオとマロリーが顔を見合わせる。


「大きな問題はないが……」

「職務外で小さなアクシデントがあっただけよ」


 二人がばつの悪そうな顔をする。仕事に関係ない事で持ち場を離れるという事が誉められたものではないのを十分承知しているからだろう。


「でも、急ぎだったんだよね?」

「――家の事だったから」


 マロリーもアントニオも貴族である。二人の両親がどこかで繋がっていても不思議ではない。ロスヴィータは社交界に疎い為、どの家がどう繋がっているのか、所属勢力など、よく分からない。

 本当は知っておくべきなのだと分かってはいるが、ロスヴィータは出会う人間を派閥などで振り分けたくなかった。知ってしまえば、知らなかった時と同じ態度がとれるか分からないから、知りたくない情報でもあった。


「えっと、それは私たちが聞いてしまって大丈夫な話? そうでないなら、聞かないでおくよ」

「エイミーを遠ざけていない事から想像はつくのでは?」


 エイミーは無派閥だ。その彼女に聞かれて問題ないという事は、つまりそういう事である。


「……縁談なのです」


 エイミーがぼそっと言った。その頬は赤い。ただ寒いからというわけではないだろう。好奇心で目がきらきらとしている。


「……えっと、二人が?」


 エルフリートが失礼にも指をさしながら聞いた。マロリーが彼から視線を逸らす。その様子では、当たっているのか外れているのか分からない。


「そうよ。アントニオが持ち場にいたら、突然言われたらしいわ」

「――唐突すぎたから……そのままここへ来てしまった」


 アントニオは肩を落としていた。


「あらまぁ……」


 エルフリートの口から出たのは噂好きの奥様みたいなのんびりとした声で、ロスヴィータは脱力してしまう。


「いや、断るからな」

「え?」

「当然でしょう」

「は?」


 アントニオとマロリーは話が通じているらしいが、ロスヴィータとエルフリートは状況が分からず目を見開いた。エイミーは話が分かっているのかいないのか、うんうんと力強く頷いていた。

2024.7.21 一部加筆修正

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