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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
大忙しの記念祭

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51/81

1

 四年に一度行われる祭、それは王都の一大イベントである。四日間に渡る大きな祭りの間、騎士たちは鎧をまとった準正装をする者と周囲と同じく仮装する者に分かれる。

 この四日間、二日ずつ準正装と仮装姿で過ごすのだが、これには理由があった。人間が集中する中、効率よく治安維持をする為である。誰もが一目で騎士だと分かる姿で犯罪への抑止力となり、一般人への安心感を提供する。

 その一方で、どんな状況でも動ける仮装した騎士を配置する事で、柔軟な対応ができるようにするのだ。

 そういうわけで、前半が準正装となっているエルフリートとロスヴィータは鎧を身につけていた。


「やっぱり慣れないなぁ……」

「まあ、我慢するしかないな」


 広告塔になる意味を兼ねて、エルフリートとロスヴィータは一日だけ仮装と準正装が被るようになっている。準正装が被るのが初日の今日で、二日目はエルフリートが準正装でロスヴィータが仮装、三日目はその逆、最終日は二人とも仮装。

 もちろん本気で王都の治安維持に努めるが、他に企み事がある。それはエルフリートとエルフリーデの『似ているけど別人』という設定の刷り込み作戦である。


 女装したエルフリートがエルフリーデになってしまっては駄目なのだ。その逆も、であるが。という事で“エルフリート”と“エルフリーデ”がそれぞれ異性装をして、騎士に印象づけようというわけだ。

 似ているけど別人、という設定を刷り込ませる為に選んだのは双子の衣装である。これは三日目にお披露目の予定である。


「ロスはこなれてるね」

「騎士となるからには、甲冑姿で立ち回りができなければな」

「……さすが王子様」


 重い鎧を身につけているとは思えない振る舞いに、エルフリートは感嘆の声を上げた。


「あなただって、慣れないと言っているわりには普通に動いている」

「だってぇ、なんでも着こなさないとロスの隣にいられないんだもん」

「はは、まさか」

「むぅ」


 エルフリートは本気のつもりだったが、彼女は冗談だと思ったらしい。小さく吹き出して笑い出す。


「そんなに笑わなくても」

「あなたが可愛らしいのがいけない」


 目立つ事を重視して、女性騎士団員は兜を被っていない。むっとして頬を膨らませたエルフリートをロスヴィータは撫でる。するりと優しく頬の膨らみを撫でられれば、怒りが沈んでいくのを示すように頬はしぼんでいった。


「さあ、一日気合いをいれて行こう」

「うん!」

 最後に互いの姿におかしいところがないかを確認しあい、視線を交わした。




 ロスヴィータと連れだって祭の中心となる市街地へ向かうと、そこは人々であふれていた。グリフォンが王に挨拶をしたという日を記念日にしたこの祭は、色彩も豊かである。

 色とりどりに染められた艶やかな羽根をアクセントにした服を身につけている人間たちのせいで、よけいに賑やかに見えるのだ。


「初めて参加するけど、すごく目がチカチカする」

「四年に一度だから気合いも入るんだろう」


 かく言うエルフリートも髪型は普段通りに編み込みであるものの、その編み込みに染色済みの羽根があしらわれた髪飾りをつけている。ロスヴィータは一括りにまとめる為に使っているリボンが髪飾りになっていた。

 つまり、自分たちも目がチカチカする原因の一つとしてこの街にいるという事である。


「あっ、妖精騎士と騎士王子だ」


 唐突な声かけに、ばっと姿勢を正す。声のあった方へ体を向ければ、少年と少女の二人組がいた。少年の方は二人を指さしている。私たちってそんなあだ名をつけられていたんだ……。

 状況を把握したエルフリートはにっこりと笑いかけた。隣のロスヴィータは口元をゆるめて手を振っている。


「こんにちは」

「こんにちは!」

「お祭りは楽しい?」


 話しかけると少年は破顔した。隣の少女は視線を外していたが手先を遊ばせてもじもじとしている。

 ロスヴィータと共に片膝をついてその二人と視線を合わせれば、少年のブラウンの瞳がきらきらと輝いていた。


「お姉ちゃんがね、大好きなんだ」

「ちょっと!」


 少年――弟だったんだね――が口を滑らせると少女が慌て始めた。可愛い姉弟だなぁ。


「私たちの事を覚えてくれるなんて、嬉しいな。フリーデもそう思うだろう?」

「うん。もちろんよ! 二人とも、ありがとうね」


 嬉しいとアピールしていると少女も恥ずかしさが紛れてきたのか、次第に視線を合わせてくれるようになった。


「あ、あのね……パレード、綺麗で、格好良かったの」


 お披露目のパレードは半年以上前の事だ。それを覚えていてくれたというのは純粋に嬉しい。


「嬉しいよ」

「ありがとう。これからもがんばるね」


 ロスヴィータが少女の両手を軽くきゅっと握って微笑めば、彼女はぽっと頬を赤く染めた。更にそこへ手を重ね、エルフリートも言葉をつけ加える。

 準正装をしている時はスケジュールが決められている。最初の持ち場にそろそろ向かわない時間だった。エルフリートはロスヴィータに目配せして立ち上がる。


「お祭りはまだ始まったばかりだ。しっかり楽しんで」

「困った事があったら、近くの騎士に声をかけてね。みんな優しい人だから大丈夫だよ」

「うん。分かった……あっ」

「ありがとう! さ、お姉ちゃん行こっ!」


 名残惜しそうにしている姉は「お仕事の邪魔しちゃダメだよ」と、二人の行動に何かを感じた弟に引っ張られながら去っていった。

2024.7.21 一部加筆修正

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