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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
氷上の妖精と王子様

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44/81

2

 エルフリートが自分の理解を進めようとするも、なかなかそれが進まずに悶々としている日々が続いていた。そんな中、女性騎士団の打ち合わせ中にバルティルデが変な提案をした。


「……氷上訓練?」


 エルフリートにはなじみのない言葉だった。


「この時期にしかできない訓練といったら、雪山の他にもう一つあるなと思ってね」

「ふむ、体を鍛えるのにも使えるし、悪くない提案だ」

「氷の上を歩くの?」


 ロスヴィータが頷く傍らで話がよく分からないエルフリートは首を傾げた。バルティルデはおや、と片眉を上げて意外そうに彼を見やる。


「歩いたり、走ったり、滑ったりする。あと、普通に氷上で模擬戦をする。フリーデは得意なんじゃない?」

「実は私、スケートとかはやった事がないんだよね」

「え、何で?」


 山、それも王都よりも北にある地で生活していたのに? と思われているに違いない。エルフリートは苦笑してわけを説明する。


「おとぎ話になるくらい有名なはずなんだけど、カルケレニクスの冬は暗黒期って呼ばれる真っ暗な期間があるのよ。その間は必要に駆られて外に出る事はあっても、遊ぶ為に外に出たりする事はないんだ。自殺行為だからね。もちろん観光客も遠慮してもらっているのよ」

「ああ、そっか」

「確かに私が幼い頃にそちらへ滞在した時、暗黒期直前だからと翌日にはカルケレニクス領を発ったな」


 バルティルデだけでなく、ロスヴィータの口からも納得の声が上がる。


「泉に氷は張るけど、そこで遊ぶって感覚はなかったんだよねぇ……」


 遠い故郷を思う。どういう仕組みかは分からないが、カルケレニクス領には暗黒期がある。暗くない冬はエルフリートを落ち着かない気持ちにさせるが、安全だという点では比べようもない。

 日中の雪山の眩しさなど、目がやられてしまいそうだったっけ。故郷では冬が近づき雪が降り始める頃には日差しが弱まってくる。眩しくないわけではないが、日差しに衰えが来ない王都とは全然違う。

 一般的に言われる秋空すらないから、王都で過ごす始めての冬ですら眩しく感じたくらいだった。


「貴族なのにスケートができないのは、後々響くんじゃないか?」

「そうかなぁ?」

「もしかしたら氷上で宣伝する機会が訪れるかもしれないだろう」


 バルティルデがニヤリと笑う。彼女の言うような事が起きないとは限らない。そうなれば目立ちたい女性騎士団は喜んで参加する事になるだろう。

 想像できる未来にエルフリートは困り顔で笑った。

 去年はひたすらこの環境に慣れ、そして規模を拡大していくにあたっての準備期間というのもあり、遊んでいる時間はあまりなかった。だから貴族の嗜みであるスケートの練習をする時間もなかったのである。

 しかし、そんな言い訳を通用させてはいけない。女性騎士団のツートップの片割れである“エルフリーデ”がそんな状態だと知らせるメリットがないからである。


 やっぱり女性騎士団の顔としては想像通り(カンペキ)な方が嬉しいよね。


「みんなと遜色なく見えるようになるまで、訓練したい」

「よし。決まりだね!」


 決意をにじませるエルフリートに嬉しそうにバルティルデが決定を唱える。ロスヴィータはバルティルデを半眼でじとりと見やるも、最後には頷いてみせるのだった。




 氷上訓練の話をどこから聞きつけてきたのか、アントニオとブライスがやってきた。そのまま一緒に訓練をする事になったのは、ある意味では僥倖だった。

 なんと、氷上訓練は一部の騎士しか許可が下りないのだそうだ。そしてその許可が下りる一部の騎士にブライスが入っていた。残念ながらアントニオは入っておらず、ブライスの隊が実施する氷上訓練に女性騎士団とアントニオの隊が便乗する形となったのである。


 エルフリートは王位継承権のある王族(ロスヴィータ)が率いているのと女性騎士団の特殊性からして、女性騎士団単体でも許可が下りたのではないかと思っていた。が、何も言わなかった。


「俺様のおかげだぞ、フリーデ」

「うん、ありがとうブライス」


 “女性騎士団のエルフリーデ”を気に入ったらしいブライスは、ちょこちょこ絡んでくるようになっていた。

 冬が来ると一般的な魔獣はおとなしくなる。王都周辺を対応しているブライスの隊は暇な季節となるようだ。

 それでも対応できない魔獣が現れれば遠征もしているが。


「しっかしスケートをした事がないとはなぁ」

「田舎者でごめんなさいねぇ」

「いんや、むしろちょっと興味があるぜ」


 興味、とは……? エルフリートは嫌な予感を覚え、氷の上は歩けるのだと解説した。


「普通の靴でなら、歩けるし走れるし戦えるよ!? スケート靴が始めてなだけだもん」

「まじか。ちょっとこのまま氷上で手合わせしよう!」

「わわっ!」


 ブライスに引っ張られて氷上訓練用に強制的に氷が張られた訓練場へ下りる。

 不用意に滑らないよう重心に気を配って立つエルフリートを見て、彼の言葉が本当だったのを確かめ不敵に笑う。


「んじゃ、お手並み拝見」

「不意打ちは卑怯だと思うっ!」


 唐突に踏み込んで模擬戦用の長剣を振りかざしてきたブライスを慌てて避ける。氷上での戦闘は普段と具合が違う。エルフリートは気持ちを切り替え、己も剣を抜いた。

2024.7.15 一部加筆修正

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