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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
雪山は危険がいっぱい

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36/81

5

 ロスヴィータがエイミーを心配している内にアントニオの隊が到着した。それから少しの間を置いて、サポートの二隊が現れた。

 全員が問題なく辿り着けた事に安心し、ようやく任務詳細の入っている封筒が開けられた。その書面には氷兎の捕獲と書いてある。

 王都までそれを運び込む事で研修完了とする、とも書いてあった。予想外の内容にそれを読み上げたロスヴィータはもちろん、他の騎士も全員が沈黙した。


「これは難易度が高いのでは?」

「……俺の小隊が入っている本当の理由は、これか」


 真っ先に沈黙を破り、首を傾げながら言うロスヴィータにブライスが唸る。アントニオは普段と変わらず――いや、少しばかり眉間にしわが寄っているか。

 彼もあまり良い感情を抱いていないようだ。


「おい、最近この山に氷兎が出たって話は本当か?」

「この時期には時々出没するからな……そんなに珍しい話じゃないんだ。だからその質問は答えにくい」


 エノテーカの言葉にロエーロも頷く。


「今季に入ってからはまだ聞いてなかったと思ったけど、例年通りなら多分いるんじゃないか?」

「だからってよりによって捕獲かよ……くそが」


 やられた、と言わんばかりに天井に顔を向けて脱力するブライスの姿は異様だ。

 そこまで難しいのだろうか、とロスヴィータは疑問を口にした。


「氷兎は捕獲が難しいのか?」


 ブライスはキッと彼女を睨みつける。


「あれは捕獲するのも難しいが、捕獲し続けるのも難しいんだ! 大体、炎の檻を作って捕獲できたとしても、管理の手加減ですぐに溶けて死んじまったりするし、王都までの長い道のりに耐えられるとは思えん」


 魔獣の捕獲が難しいのは経験済みだったから難易度が高いと感じたロスヴィータであったが、氷兎は捕獲してからの管理こそ難しいのだと知る。


「……この任務は、かなり無謀な部類に入るのでは?」


 ロスヴィータが目を細めながら言えば、ブライスとアントニオが静かに頷いて見せた。


「捕獲後の管理は多分私が役に立てると思う!」


 勢いよく手を挙げたのはエルフリートだった。彼はアメジストのような儚げな色の瞳をキラリと輝かせながらブライスに質問を投げ始めた。

 質問を聞いている内に勝算があると分かったのかブライスの瞳に光が戻る。むしろ好奇心で輝いているようにも見える。


「氷兎が溶けない温度はどれくらい? 普通の氷と同じ感覚で問題ない?」

「俺が輸送するとしたら大きな氷の塊を檻の中に入れておくぜ。そうすると氷の塊にひっついて生き延びようとするからな。脱走予防にもなるから一石二鳥だ。

 そんな事も知らねぇとはな。もしかしてカルケレニクスに氷兎は出ないのか?」


 ブライスの言葉に相づちを打っていたエルフリートは笑った。


「カルケレニクスでは魔獣自体が現れないの。妖精の伝説が残るくらいだから、魔獣が苦手にする何かがあるのかも」


 魔獣が現れるような環境であったなら、切り立った崖に道を作るなど考えなかったはずだ。襲われにくいからこそあえてその場所にした、という考えもあるだろうが、あの道を通る人々の装備を見ていれば魔獣を警戒しているかどうかくらいロスヴィータには分かる。

 この前カルケレニクス領に向かった時、魔獣を警戒しているようには見えなかった。だからあの道に関してはロスヴィータの考えは正しいのだと確信する。


「そうか。道理でど素人みたいな質問をしてくると思った。お前なら、道中氷塊と檻の維持くらいやれるか?」


 ぐりぐりと頭を撫で揺らされるエルフリートは笑いながら否定する。


「嫌だなぁ、私だってそんな人間離れした芸当できないよぉー?」

「いやいや、できるだろ。そんだけの能力があれば」


 エルフリートの否定にブライスは更なる否定を重ねた。

 ブライスはエルフリートの力を買っているようで、にやりとした表情のままだ。


「氷塊の維持はマリンとルッカにお願いするもん。一人でやったら道中のトラブルに対応する余裕がなくなっちゃう。

 ただでさえ炎牢の魔法は集中力が必要なんだから」


 ぷくぅ、と頬を膨らませて言えば、彼は笑った。


「まぁ、お前さん一人にゃやらせねぇよ。俺の隊にだって魔法剣士はいるんだ。少しは足しになるだろ」

「あっ、じゃあさっきのは意地悪言ったの?」

「聞いてみただけだって」


 もうっ、意地悪っ! と言いながらブライスを睨む彼の姿は新鮮だ。

 ロスヴィータは可愛らしく怒ってみせるエルフリートが微笑ましくて自然と口元がゆるんでしまう。


「ロス、フリーデを見て鼻の下を伸ばすのは王子様らしくないわ」

「の、伸ばしてなんか!」

「……」


 背後に立つマロリーがロスヴィータを窘める。否定したものの、彼女の視線は変わらない。


「……運搬に関しては問題ないとして、どうやって捕獲するかが問題だな」

「氷兎なら、おそらく簡単な罠で捕えられると思う」


 ロエーロが全員を安心させるような笑みで提案したのは、規模が大きくなっただけの典型的な狩猟罠だった。

2024.7.14 一部加筆修正

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