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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
誘惑の取り替えダブルデート

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22/81

1

 ――これ、もしかしなくとも理性を試されてる……?

 エルフリートは珍しく女性装をしているロスヴィータの笑みを見て、少し前まで浮かれていた自分を呪った。




 時を遡ること数日前。“エルフリート”からの呼び出しを受けた二人は、カルケレニクス辺境伯の王都にある屋敷に訪れていた。

「ロス、フリーデ、この前は大変だったね」

 エルフリーデは堂々とした態度で口を開いた。次期辺境伯としてふさわしい雰囲気で座る彼女の隣にはレオンハルトがいた。


「ご褒美にお休みを取らせてあげよう。当日はデートだ」

「えっ、今なんて?」

「だから、私たちとデートをしよう。と言ったんだよ」


 唐突すぎて全く話が分からない。エルフリートがロスヴィータに顔を向ければ彼女は小さく首を横に振る。ならばと思い、レオンハルトへと向けると彼はロスヴィータと同じ反応を返してきた。

 首を振る勢いは全然違うけど。

 レオンハルトの様子から、彼すら初耳の話であるという事しか分からなかった。


「大丈夫。レオも同じ日が休日になったはずだからね。……ふふ、言い出したのはロスのご両親だから諦めて。根回しが早くて私も驚いたよ」


 悪戯が成功した時にするように、エルフリーデが片目をつぶる。うわぁ、キザぁ……。似合ってるけど鳥肌立ちそう。


「両親がすまない」


 どん引きしてぷるぷると震えているエルフリートの横で、ロスヴィータが肩を縮ませた。


「いや、たまには一緒に出かけないと(婚約者)としても矜持に関わる。その代わり、前日の夜は妹を借りても良いかい?」


 エルフリートとレオンハルトが口を挟む隙もなく、二人の会話が続く。


「もちろんだ。兄妹水入らずの時間まで奪うような狭量な上司にはなりたくない」

「ありがとう。二人とも、突然呼び出して悪かったね。フリーデは三日後、ロスは四日後にまた会おう。ロスの迎えにはレオが行くから詳細は明日にでも彼から伝えさせよう」


 あれ……? 妹ってばこんなにマイペースだったっけ? エルフリートはどんどん話が進んでいって挨拶以外言葉をほとんど口にしないまま、家から放り出されたのだった。




 そして現在。前日夜の帰宅はエルフリートが“エルフリート”として、エルフリーデが“エルフリーデ”として出かける前準備だったらしく、エルフリートは男性装をしていた。

 ロスヴィータは事前にレオンハルトから知らされていたのか、それとも婚約者として振る舞うべくそうしたのか、シンプルだが女性にしか見えない姿をしていた。

 うっすらと化粧をした彼女は普段と違ってまろやかな雰囲気の表情に見えるし、バッスルを入れてヒップラインをふっくらとさせた衣装のワンピースは男性的に見えがちな彼女の立ち姿をよくごまかしている。


 詰め襟のブラウスにジャケットの組み合わせはどこか甘さを残した雰囲気にさせている。ブラウスに控えめながらフリルがついているせいかもしれない。

 エルフリートはネイビーのジャケットに明るめなブルーグレーのトラウザーズ。首もとはループ・タイで留め具にはロスヴィータの瞳に合わせたエメラルドをはめ込んだものを選んだ。髪型は普段の編み込みと区別するべく前髪を作り、後ろでひとくくりにしてある。

 特殊な上げ底靴を履いたエルフリートから見るロスヴィータは、ちょうど彼の顎の当たりに頭がある。


 髪の短い部分を編み込んで伸ばしている髪になじませ結い上げたという手の込った髪型がエルフリートの目に入る。

 短髪部分を隠してしまうと、それだけでだいぶ女性らしくなるらしい。珍しく露わになったうなじを見たエルフリートは思った。普段髪をひとくくりにしている彼女は、そのくくる位置が低いためうなじは目立たない。

 髪をまとめるリボンが彼女の首を守っていたが、今日は違う。

 詰め襟と生え際の隙間が目に毒だなぁ。

 もっと堂々と見えていた方が気にならなかったかも、と思いながら視線を逸らした。


「あの二人、仲が良いな」

「えっ、あ、ああ。今日はずいぶんとはしゃいでいるみたいだね。親友と妹の仲が良くて嬉しいよ」


 急に現実に戻され、エルフリートはどもる。視線の先には手を繋ぐエルフリーデとレオンハルトの姿があった。二人は露天商を冷やかしている最中で、楽しそうに笑っている。


「私たちも見習わねばな」


 小さく笑ったロスヴィータがエルフリートを見上げ、それを見たエルフリートはその可愛らしさにくらくらするのだった。




 ロス、可愛い。かっこいいけど可愛い。エルフリートは己の腕に手を添えた彼女が串焼きを頬張るのを見ながら悶々としていた。普通の姿をしているのに平民のような事をしているが、身分にこだわりのない騎士によくある行動である。

 二人が自分たちの姿を考えずにそんな行動を起こしているのは当然だった。その証に、エルフリーデとレオンハルトも同じような状態だ。

 ロスヴィータ曰く「ふりふりのひらひら」を身にまとった妹は、はふはふとまだ熱い串焼きを冷ましながらレオンハルトに笑みを向けている。

 あんなに仲が良かっただろうか。一瞬もやっとした気持ちになる。兄はちょっと心が狭いようです。エルフリートは心の中でエルフリーデに謝った。

2024.7.6 一部加筆修正

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