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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
御前試合は盛りだくさん

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20/81

10

 現場検証が終わる頃、エルフリートとロスヴィータが現れた。

「勝った?」

「ああ、何とかな……」

「フリオってばなりふり構わないからびっくりしたよ」


 二人の疲弊した顔を見れば想像できる。バルティルデはブライスの隊の人間が強い事しか知らないが、騎士仲間から聞く武勇伝を聞く限り破天荒な戦い方をする人間が多いようだ。フリオとウィードもその例に漏れなかった、という事だろう。

 無傷とはいられなかったらしく、二人の制服は解れたり破けていた。試合が終わり次第現場へと直行してくるあたり、二人のまじめさがよく分かる。


「思ったより地味だね」

「だが、けが人が出たぞ。軽い事を言うな」


 現場を一別したエルフリートの感想に、ロスヴィータが窘める。


「そういう意味じゃなくて! 私が言いたかったのは、ただの脅しにしては手が凝っているって事よ。この狭い空間で小爆発からの魔法炎なんてやったら普通は死ぬから。けがで済むように調整されていた証じゃない」

「なるほど?」

「だから、これは付け焼き刃の技術じゃないって事よ。あの脅迫文は本気だって事。もっと必死になって犯人を捜し出さないと大変な事になるわ」


 エルフリートの説明を聞いたロスヴィータの瞳に剣呑な光が宿る。


「これから調べるところだけど、この爆発物は戦場で使われる魔法具に似ているんだ。犯人は専門家を雇っているか、専門家本人だというのが私の見解。

 私はフリーデの言葉を強く支持させてもらう」


 誰とも知らず、ため息が出た。そろそろバルティルデたちの試合時間が迫ってきている。一般人に悟らせない為とはいえ、職務中であっても試合への参加が義務づけられていた。


「……次は私の番だな。戦ってくるよ。二人は――って聞くまでもないな。では後で」

「うん。後でね」

「私はこの爆発物の復元を自室で試みますので一旦下がります」

「分かった。結果を楽しみにしている」


 バルティルデとルッカが部屋を去る時、残された女性騎士団ツートップは睨む勢いで室内を見回していた。




 あれから似たような爆発が数件。どれも一般人を巻き込む事はなく、犠牲になったのは騎士だけ――非番を含む――であった。これだけの人数の中、騎士だけを狙う。それをやり遂げるのは簡単ではない。

 その日の晩に行われた会議では、エルフリートやバルティルデが考えた犯人像を挙げた団長が他にもいた。それどころか彼らの話を聞いている内に複数犯の可能性すら出てきた。

 少なくとも手足となる人間がいるはずである。仕掛ける人間を捕らえるのが一番確実なのだが、“お客様対応”が多すぎて中々うまくいかない。

 怪しい人間を見つけても、騎士団は誰一人として捕まえるに至らなかったのだ。

 会議を終え、エルフリートはロスヴィータと今日届いた脅迫書について話していた。


「中止せよ、以外の要求がないのがよく分からない」

「何で中止させたいのかな」

「騎士団としての権威か王族を貶める為ではないか?」


 確かにそれくらいしか思い浮かばないけど、たったそれだけの事にこんな面倒な事を起こすかな。エルフリートにはよく分からない感覚だ。


「フリーデ、王族や騎士は人々の為にある存在だが、存在が大きければ大きいほど人々の思惑が絡まっていく。

 私怨だって生まれる。血の薄い王族一人が殺人を犯せば、遺族からは王族全体が恨まれる。簡単に手を出せないからこそ膿は溜まっていく。そんなものだ」


 エルフリートの表情を読んだのか、ロスヴィータが皮肉げに言った。ロスヴィータも一応王族なんだっけ。王位継承権はないに等しくても、その自覚は求められる。


「カルケレニクス領は山奥――失礼、ほとんど小さな自治国家状態だから、そういう大きなものに巻き込まれにくいのだろうが。

 あなたも辺境伯の一族ならば覚えていた方が良い」

「じゃあ、一番危険なタイミングって決勝戦かな?」


 ロスヴィータのド田舎発言を無視し、話を戻す。立地に関して言えば本当の事だし。でも生活水準は悪くないんだけどなぁ。

 話の変わり具合についていけなかったのか、瞬きを数回繰り返して見つめてくる彼女に笑ってしまう。


「やっぱり仕掛けるなら爆発物かな。会場内のそれを一気に無効にできたら安心できるんだけど」

「全て探し出して一カ所に集めるにしても、御前試合を中断する事になるな。そうなれば目的の半分は達成されたも同然だろう」

「うーん……こっちの完全勝利にしたいなぁ」


 エルフリートは背もたれに身を預けた。普通の爆発物なら会場を水浸しにすれば解決するけど、今回はそうはいかないらしいし。


「フリーデ、一つ聞きたいんだが」

「うん?」


 ずい、と身を乗り出してきたロスヴィータの瞳がきらりと輝いた。


「あの会場を包むほど大きな結界とか、あの会場を倒壊させる規模の攻撃魔法とか、使えたりするのか?」

「地形が変わっちゃうから試した事はないけど、できると思うよ」


 ロスヴィータは何かを思いついたらしい。いつもよりもイキイキして見える。


「そうか。なら、爆発物に組み込まれた魔法具の宝石の周囲だけを封じるという条件の結界を会場全体に張るのは?」


 何だかすごい事を聞かれた気がする。

 少しだけできるかどうかを考える。


「……条件付きで小さな結界が発生する大きな結界って事? 簡単じゃないし、一発勝負は厳しいかな。あと、ロスは忘れてるみたいだけど会場には元々いくつかの結界が張ってあって、全部壊してからじゃないと会場を包む大規模魔法は使えないよ」

「そうか、なら駄目か」


 エルフリートは正直にできないと答えたが、どうしても犯人を完封するならばロスヴィータのアイディアが有効に思えた。検討する価値はあるかもしれない。

 ――実施したら懲罰ものだけど。

2024.7.6 一部加筆修正

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