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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
御前試合は盛りだくさん

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18/81

8

 ブライスの部下がついてくれたおかげで、正直かなり助かったよぉ……。

 昨日と一昨日が嘘かのようだ。全く絡まれない。嬉しくなったエルフリートがロスヴィータと和やかに会話をしていると、一緒に行動してくれているリッチーが割り込んできた。


「騎士団のほぼ全員が考えた事があると思うけど、二人って本当に付き合ってないの?」

「は? 私たちは同性だぞ」

「いやでもさ、そういう人がいないわけじゃないだろ? 俺は二人が恋人でも応援するぜ」

「ロスはお兄さまと婚約してますから!」

「はは、知ってるさ。それくらい」


 ロスヴィータが面を食らったかのような反応をしたが、それでも食いついてくるリッチーにエルフリートが反論する。確かに私が婚約者だけど! でも今はエルフリーデだもん!!


「邪推されるほど仲が良くて、次期辺境泊であるお兄さんに文句言われないのかい?」

「我が婚約者はそんな狭量な人間ではないよ。むしろ微笑ましく見守ってくれるくらいだ」


 ……本人が妹のふりしてるしね。ヤキモチ焼きようがないって言うか。ロスヴィータの爽やかな笑顔にエルフリートは何とも言えぬ気持ちになる。


「おっと、怪しい人影発見」

「追おう」


 幸運な事に、その不審人物はこちらに気が付いていないようだ。中流階級の装いをした男は、人混みに揺られながら何かを警戒するように小さく頭を動かしている。

 そうしてどんどん移動していき、とうとう観戦席に辿り着いた。そこで目的の物を見つけたのか、しゃがみ込んでしまう。一瞬姿を見失うも、再び立ち上がった男は再び移動を開始した。

 エルフリートとロスヴィータよりも背の高いリッチーを先頭に、少しずつ距離を縮めていく。あと少し、というところで想定外の出来事が起きた。


「きゃあっ!!」

「ごめんよ。大丈夫か?」


 リッチーが誰かにぶつかったらしく、相手が倒れないように抱き留めていた。


「もうちょっと周りを見たらどうなの、この木偶の坊!」

「はは、悪気はなかったんだ。許してくれ」


 リッチーと誰かのやりとりに気を取られている内に、不審者を見失ってしまった。


「ロス……」

「……もう近くにはいないだろうな」


 ロスヴィータもエルフリートと同じく周囲を見渡していたが、諦めの声を出す。その近くではリッチーが少女に難癖をつけられていた。

 大柄なリッチーに隠れているが、ミルクティーのような綺麗な髪が見え隠れしている。


「おや、この前の。カトレアじゃないか」

「あっ、王子様みたいな騎士団長!」


 人を指で指し示した少女は、声高に叫んだ。


「ロス、彼女を知っているのか?」

「ああ。一昨日に強面の親戚に追いかけられていた彼女とぶつかったんだ。強面すぎて、てっきり人混みに紛れてやってきた人攫いかと思ってしまった」

「あの後謝られたわ。怒鳴って悪かったって」

「そうか」


 エルフリートはロスヴィータに降りかかった“お客様対応”で不審者追跡を諦めるしかなくなってしまった瞬間だけは見ていた。

 きっとその時にロスヴィータとぶつかったのが彼女なのだろう。


「それにしても騎士なのに前方不注意すぎるのではなくて?」

「申し訳ない」


 ううん、結構気の強いお嬢様のようだね。服装からすると中流階級の商家といった所かな。口を開かなければお人形さんみたいなんだけどなぁ。きっと少女のご両親も育てるのには難儀している事だろう。ロスヴィータとは違う意味で目が離せない少女にまだ見ぬ両親の苦労を思う。

 全体の色彩が明るい色で構成された可愛らしい少女は、ぶつかったばかりの相手であるリッチーの事など見えていないかのように振る舞い始めた。


「でもこうして再会できるなんて。私たち運命の糸で繋がっているみたい!」


 ロスヴィータの手を両手でぎゅっと握りしめた少女は、そのままキラキラと輝いた瞳を向けた。

 ……あ、珍しい。ロスヴィータの笑顔がひきつってる。


「カトレア嬢。ご家族が見えないけれど、ご一緒ではないの?」


 視線の高さを合わせる為にしゃがむと、ようやっと他に人がいたという事を思い出してくれたみたい。

 エルフリートと視線を交わした少女はロスヴィータへと向けるそれと似たような笑顔で言った。


「私と王子様の会話に割り込まないでくれる? あなたがどんなに、妖精のように可愛らしくたって私は油断しないんだから」


 どうやら、この少女は小さいながらに立派なレディのようだね。

 ちょっとびっくりしたけど、大人みたいな子供の相手は得意な方だから大丈夫。


「ごめんなさいね。でもね、カトレア嬢。お母様が心配しているはずよ。

 毎日のようにはぐれると連れてきてもらえなくなっちゃうわ。だから、お母様のところに行きながらロスとお話を楽しめば良いと思うの。どうかしら?」

「……仕方ないからそうしてあげる」


 ただ仕事だからと追い払うわけにはいかないもんね。不審者を送る代わりに、少女を親元に送り届けるだけで試合の間である貴重な休憩時間は終わっちゃった。元々空き時間は巡回時間だし、休憩なんてあるようでなかったんだけど。

 次はフリオたちと試合だ。会場まで戻ってきたエルフリートはロスヴィータと額を合わせて気合いを入れ直すのだった。

2021.11.13 不自然な改行の修正

2024.6.30 一部加筆修正

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