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妖精と王子様のへんてこタンゴ(へんてこワルツ2)  作者: 魚野れん
御前試合は盛りだくさん

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15/81

5

 会場へ戻ると、エルフリートはまだ戻っていなかった。待機場所にもおらず、未だに不審者を追っているのだと思われる。もうそろそろ時間だと会場スタッフをしている騎士に声をかけられ焦る。


「もう少しでフリーデがくるはずなんだが……」

「ああ、彼女は既にあちらに」

「えっ」


 騎士に示された先に、見慣れた姿があった。その隣にはレオンハルトが立っている。ロスヴィータがエルフリートの側まで行けば、レオンハルトは役目を果たしたと言わんばかりに離れていった。


「フリーデ」

「ロス! 良かった。間に合ったんだね」

「それはこちらの台詞だ」


 ロスヴィータがむっとして答えると、彼はふにゃりと笑った。


「えへへ。レオンに呼ばれて慌てて戻ってきたの」

「追跡を諦めるしかなかったのは残念だったけど、あれはきっと捕まえられなかったはずだよ。……君たちがあれだけ追いかけてダメだったんだ。他の奴らにだって無理だろう」


 結局、不審者は逃がしてしまったのか。ロスヴィータは残念だと思うよりも、あの不審者が何をしようとしていたのか、これからの御前試合に影響を及ぼすかもしれない事が不安だった。

 ロスヴィータのそんな気持ちを察してか、エルフリートが両手を握ってくる。


「ロスの方は大丈夫だった? トラブルの仲裁みたいだったけど」

「ああ、迷子とその保護者の身内だった。無事に保護者と合流するのを確認したよ」

「そっか。大変だったね」


 ほとんど変わらない身長の彼が、至近距離で微笑む。きらきらと淡い紫色の瞳がゆらりと揺れた。

 美しい宝石に見とれているときゅっと手を強く握られる。


「試合、がんばろうね」

「ああ」


 二人が向き直ると、既に勝ち残ってきた相手が待機していた。キャンベルと見知らぬ男である。キャンベルはマロリーに怯えている青年というイメージを完全に潜め、堂々としている。

 その後ろに控えている男は、魔法師団所属の人間らしい。魔法師団に所属している証である重厚感のあるローブは、魔法耐性の強い材料を使った上で魔導具化したもので、魔導師団の一員である事は一目瞭然であった。


 魔法師団は魔導具の研究が中心で、あまり戦闘には関わらないという印象が強い。基本的にこの国では、戦える人間は騎士になるからである。

 珍しい事もあるものだと思っていると、視線に気が付いたらしい彼が目礼してきた。ロスヴィータは会釈を返す。


「お二人とも、胸を貸していただきます! あ、今日のパートナーは親切な魔法師のジークです。よろしくお願いします」


 親切な、とキャンベルが言うのも分かる気がした。礼儀正しそうな青年だ。キャンベルの紹介を得て挨拶をすれば、小さな微笑みが返ってくる。

 エルフリートもロスヴィータもこれから戦うのだと分かっていても、穏やかな笑顔になった。


「では、準備はよろしいか」


 審判が割り込んできたのを合図に位置に着く。ロスヴィータとエルフリートは並び立った。キャンベルはジークを守るように彼の目の前に立つ。やや短めの片手剣を両手に双剣術の構えを取っている。これは魔法師団員が参加する事と同じくらいに珍しい事だ。

 ロスヴィータは胸が弾んだ。双剣術自体が珍しい上、通常は片手剣を片方で持ったらもう片方は短剣などの小振りな武器を持つ。大きな武器はそれだけで隙が大きくなる為、両手共に片手剣を持つには不向きなのだ。


 筋力の問題もあるし、技術的にもそう簡単に使いこなせるものではない。それをやろうとしている。確かに片手剣にしては少し剣身が短い。だが、短いとは言ってもほとんどロングソードの長さである為、それ相応の重さはあるだろう。面白い。

 あらかじめ打ち合わせをしていた通り、前衛騎士・後衛魔法師である時の攻め方を試みる。前衛をロスヴィータが攻め、後衛をエルフリートが後衛として攻める方法だ。


「勇敢なる熊の名を持つ女神よ、我が剣となれ!」


 エルフリートの澄んだ声に呼応してジークへと氷の剣が飛ぶ。ロスヴィータの第一撃を退けたキャンベルがジークと氷の剣の間に滑り込んだ。

 その反応の良さにロスヴィータの口角が上がる。いつも怯えた態度を見ていたせいで、こんなに機敏に動ける人材だとは思っていなかった。つい格下に見てしまっていた自分を恥じると共に、戦い甲斐のありそうな相手に興奮した。

 キャンベルは無言で氷の剣を叩き落とし、漏れた分はその身を挺して受けた。本来ならば氷の剣が刺さるのだが、そうはならなかった。


「もしかして、完全魔法耐性?」

「一回で見破るとは、さすがフリーデ」

「キャンベルこそ、前期末の演習とは全然動きが違うのね!」

「お、俺だってやれる!」


 ロスヴィータの知らないところでキャンベルの闘争に火を着ける出来事があったらしい。だからなのかと納得する。


「完全魔法耐性は諸刃じゃないか」

「魔法が怖い俺にとっては諸刃じゃない」


 揶揄すれば彼は即座に否定した。確かに、マロリーのせいでキャンベルは極度の魔法嫌いだ。かと言って魔法を否定しているのではないところが面白い。


「俺は! 魔法に勝つ!」

「ふふ、なら私も張り切っちゃおうっと」


 キャンベルの気合いが入った叫びにエルフリートが楽しそうな声を上げ、容赦なく()()()へと剣を向けた。

2024.06.30 一部加筆修正

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