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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世界の約束

作者: 赤林明

僕は灼熱の太陽に照らされながら駅に走る。

普段は車に乗っているため感じないが、原付に乗ると服をつきぬける風、緑の香り、太陽の暑い日差し、全てが懐かしかった。

高校時代は毎日のように自転車で通学していたから気が付かなかったが、久しぶりに乗ってみるといいものだ。

駅前の有人駐輪場につくと顔なじみのおじさんはおらず、バイク400円、自転車200円と書かれた紙が貼り付けているだけだった。

「ここも変わったなぁ」

お金を支払うと僕はそのまま駅の階段を上がる。見覚えのある切符売り場、改札、2年経ってもなにもかもがそのままだった。

切符を買っていると隣にいる老婆が目に入った。この暑い中長袖をしっかりと着て、慣れた手つきで切符を買っている。僕は一足先に改札を通ると、階段横にエレベーターが見えた。僕の足は迷わずエレベーターの方へ歩き始めた。1階にランプがつきドアが開く。乗り込んだまま振り返ると、先の老婆がもう既に後ろにいた。少し驚きながらも何事もなかったようにドアは閉まる。

2階につきドアが開く。少し錆びているのかギーという嫌な音を立てた。気にせずそのまま降りてホームを目指す。不思議と背中が汗でびっしょりになっていた。ホームにつき電光掲示板を見上げると、あと2〜3分ほど発車まで時間があった。

田舎の駅ということもあり、見える景色は山か田んぼ、こんな緑をかき分けるように冷たい風が吹き抜ける。

「少しずつ秋が近づいてるのかな」

そんなことを思いながら電車を待つも暇なためスマホに目を落とす。



どれほど時間が経ったのだろう、僕は女性の悲鳴によりスマホから顔を上げた。そこにはホームで怯える女性とホーム中ほどで止まる電車。

今まで何度も遭遇したあれだ。

「人身事故か」

別に珍しくもない、この路線ではよく人が死ぬと言うのは有名な話だ。そのはずなのに俺の心臓はドンドンと大きな鼓動を繰り返している。

久しぶりの遠出、これからは一日が始まる。そんな矢先に人身事故なんて見てしまったが最後、その日はもう使い物にならない。ずーっと頭から離れない。

だが、俺は幸運なことに老婆が死ぬ瞬間を見ていないのだ。

これで俺は1時間やそこら待たされる訳だがトラウマは残らなくてすむわけだ。

俺はホームの隅に移動すると再びスマホに目を落とした。



大阪での飲み会が終わり、少しほろ酔い状態で電車を待っていた。

明日からまた仕事、行きたくないなぁ。

そんなことを考えてると、ホームにアナウンスがなる。そろそろだなぁとか考えていると不意に背中を押された。

ぎょっとして体制を立て直そうとするがそのままホームに転落してしまった。

「痛てぇ」

落ちた衝撃で足から少量の出血が確認できた。

「うう」

俺は電車が来ていることを思い出し必死にホームに上がろうとした。

が、負傷した足では登れず並んでいる人に助けを求めた。

「誰か!助けてくれ!」

聞こえているはずなのに誰も反応がない。

皆一様にスマホに目を落とすとボーッも電車の到着を待っていた。

「なあ!誰か聞こえてるんだろ!助けてくれ」

電車のヘッドライトが俺を照らす。

もう電車がそこまで来てる、絶対に助からない、そう感じた時、何を思ったのか俺はホームの方を見上げた。

するとそこには昼間の老婆がいた。

すごく嬉しそうな目で俺を見つめて、

「人にしたことはかえってくる」

その言葉を聞いて僕は死んだ。

最後に聞いた老婆の声は、昼間のホームで聞いた悲鳴と同じ声だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 老婆が登場してからエレベーターに乗り込むあたりの不穏な雰囲気や、理不尽な展開。王道ホラーとして楽しめました。 [気になる点] ホームで怯える女性の一文で、悲鳴を上げたのが老婆なのか目撃者な…
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