6 タマ取るぞ?
【注意】
この小説には、品格は微塵もありません。御了承した上でお読み下さい。クレームは一切受け付けません。( ̄^ ̄)ゞ
◇◇◇
ゴキブリの件で家主や隣りの住民に怒られたのだが、そもそもそのゴキブリは隣りの部屋の汚部屋から拝借したモノで、クリューはある意味でとばっちりだった。
まぁ、ミクリが集めてやらかしたのは事実だから、泣く泣く謝罪はしたけども。
さて、今日は何の依頼を受けようか。
クリューはミクリを連れて、とりあえずギルド併設のいつもの食堂にいた。
クリューはいつもの朝食セット。ミクリは目玉焼きとスープとパンのセットだった。
そして、いつも変わらずマイペースなミクリは、目玉焼きにフォークを刺しながらポツリと呟いた。
「パパ」
「うん?」
「きょうのめだまやきは、キンタ○とにてる」
ブフーーーーッ!!
今日も今日とて、愛娘ミクリは全開だった。
ミクリと同じ朝食セットを食べていた皆は、もれなく全員が口から何かを噴き出した。
「ミクリさん。金糸鳥の卵はキンタ○と訳さないお約束では?」
テーブルに噴き出したモノを、クリューは台拭きを借りて拭いていた。
「あ、ちがう。タ○キンだった!」
ブフーーーーッ!!
皆は口を押さえていたので、鼻から噴き出していた。
「入れ替えても同じだからヤメてくれるかな? ミクリさん」
「キンタ○は2こある」
「……」
話を聞いてくれない愛娘に、クリューは反論する気が起きずテーブルに突っ伏した。
ミクリは無邪気なだけ。悪くない。
雑念に捉われる自分がいけないのだ、と言い聞かせる。
「これも2こある」
そう言って、目玉焼きをフォークでブスリと刺した。
「「「……」」」
美幼女がお下劣な言葉を発していて、皆は何故か居た堪れなくなってきた。
悪ガキなら、殴ってヤメさせたかもしれない。
でも、女は殴れない。しかも、無邪気な可愛い子だ。
「へぇ、鳥のキンタ○も2個あるのかい?」
話を広げないでくれるかな?
クリューが横目で見るとお婆さんがニヤニヤしていた。
近所のお婆さんが食べに来ていた様で、面白可笑しく話し掛けた様だ。
鳥にキンタ○があるのも、初めて聞いたと笑っている。
「あるよ。このめだまやきみたいに、きいろが2つ」
とミクリは目玉焼きをフォークで掲げた。
それキンタ○違う。黄身だから、と皆は思った。
「うん? なんだ、キンタ○じゃなくて黄身の話かい。わたしゃてっきりアンタのお父さんみたいに、鳥にもキンタ○が2個付いてるのかと思ったよ」
だから、話を広げないでくれますかね?
股にぶら下っているキンタ○の話ではなく、卵の黄身の話だったと、お婆さんは至極残念そうな表情をしていた。
「パパ、キンタ○があるの?」
ミクリは、本当の意味でのキンタ○が何かを知らないので、黄身が父にもあるのかと驚いていた。
「そりゃあ取られてなけりゃあ、今も立派なのが付いてるんじゃないかい?」
お婆さんはミクリにケラケラと返答していたが、この2人は微妙に話が噛み合っていなかった。
「パパ、みせて!!」
ブフーーーーッ。
その瞬間、今日も皆の口からは、色んなモノが盛大に噴き出していた。
◇◇◇
詳しく聞くと金糸鳥の卵は、どの卵も黄身が2つあるという事が判明した。
そして、ミクリは母ミリーナと同様に、人の話を良く聞かない子だという事も判明した。
この子の父は、一体誰なのだろうか?
クリューは最大の疑問が浮かぶのであった。
「パパ、これはなに?」
冒険者の依頼の掲示板を見に来ていたクリューの横で、ミクリが不思議そうに訊いた。
壁一面にあるコルクボードに、依頼の紙が画鋲に刺さっている。
右からEランクDランクと並び、1番左はAランクである。
Sランクの依頼は、ギルドマスター自ら依頼を手渡す事が多いので余り貼ってはない。
貼ってあったとしたら、Aランクの所にまとめてあるのだった。
「冒険者に依頼する掲示板だよ」
クリューはまだ駆け出しのEランクなので、Eランクかその一つ上のDランクの依頼を見ていた。
Eランクでも、2つ上のCランクまでなら受けられる。だが、失敗すると信用を失くすので、無理してやらないのが得策である。
「ふぅん?」
分かったのか分かってないのか、曖昧な返事を返したミクリ。
難しい事も書いてある物もあるから、読めても理解は出来ないのかもしれない。
最近になって気付いたけど、ミクリは少しなら読めるなんて言っていたが、実際にはかなり読めていた。
おまけに吸収力もあり、ドンドン覚えていき今は難しい字も大分読める。だから、食堂のメニューも掲示板の依頼も、とびとびとは言え読めるみたいだ。
「あっ。キンタ○のいらいがあるよ?」
「キ……金糸鳥ね。うん、どれどれ?」
ミクリが見つけた依頼をクリューは見つけた。
【羽根求む】
金糸鳥の羽根を数十枚求む。上限百枚。
期限は、再来週の月曜日まで。
羽根の状態を加味した上で、上質なら1枚につき銅貨5枚。
「依頼はCランクか。金糸鳥なら悪くはないな」
とクリューはその依頼の紙を手に取った。
早い物勝ちだから、気になったら取るに越した事はない。
ランク的には2つ上。本当の駆け出しなら止めた方がいい案件。だが、過去に討伐経験があるクリューは、いざとなれば魔法を使うか魔導具もあるし、どうにかなると算段した。
「にくもおいしい」
隣にいるミクリは、ジュルリとヨダレを拭く仕草を見せていた。
「確かに。肉は寄越せとは書いてないから、肉は貰おう」
金糸鳥の肉は、弾力があって味が濃い。
鳥より鴨に近い味がするのだ。
この依頼は羽根が欲しいと書いてある。装飾品として欲しいのだろう。
「ミクリもがんばる」
「ん?」
「ミクリもがんばるよ?」
「ん? 何を?」
「キンタ○たいじ」
「「「……」」」
それを耳にした瞬間、クリューとミクリの周りにいた冒険者達は、蜘蛛の子を散らす様に一斉に掃けた。
つい先日の出来事を身に受けた冒険者達は、大事なモノを手で隠し内股で消えて行った。女性達は笑っているけど。
「頑張るよって、ミクリはお留守番だよ?」
何故かミクリは行く気満々だけど、大事な娘は討伐には連れて行かない。色々な意味で危ないからね。
「ミクリ、キンタ○つぶさずにとるの、とくいだよ?」
「潰っ、ミクリさん。ヒノキ棒を取り出すのヤメてもらってイイかな?」
ミクリは空間魔法を無詠唱で使い、何もない所からヒノキ棒を取り出して振り回した。
チート過ぎてクリューは苦笑いも出ない。
「キンタ○はつぶれやすい」
「話を聞いてくれるかな?」
「キンタ○とると、おこる」
「ねぇねぇ、話聞いて?」
「キンタ○はおいしい」
「お願いだから話を聞いて〜?」
ヒノキ棒はしまって、キンタ○キンタ○と連発するのを、ヤメてもらってイイかな? パパ複雑なんだけど。
そして、依頼の掲示板の周りには人がいなくなった。