21 好奇心旺盛な年頃
お久しぶりです。(╹◡╹)
こんな作品もあったなと、覚えていますでしょうか?
短いですが、気晴らしになれば…
「はぁ。おいしかった」
朝食を食べ終えたミクリは、小さなお腹を摩っていた。
満足そうで何よりである。
そんなミクリを横目に、クリューは何かイイ仕事があるかなと、依頼書を見に行こうと席を立てば、その背に可愛い声が掛かった。
「パパ。しょくごのうんどうにダンジョンいこうか?」
「……いかない」
ミクリの提案に、クリューは即刻却下した。
迷宮は、万全を期して行く場所で、食後の運動で行く所ではない。
「なら、はらごなしにいく?」
「いかない」
食後の運動も腹ごなしも、言い方を変えただけで同義だ。
どうして食後の運動に迷宮をチョイスするのかな?
母ミリーナの影響なのか、ミクリの基準が壊れているのか、クリューには分からなかった。
◇◇◇
【緊急依頼】
大至急、バハムートの捜索及び討伐求む。
「パパ、バハムートのいらいがある」
「……」
その下に討伐依頼の紙まで貼ってあった。
そう、ギルドマスターの名で。
この辺りにいないのは分かっているから、捜索依頼と討伐の抱き合わせなのだろう。絶対素材目当てではない。素材はあくまでついでだ。
おそらく、ミクリの話を聞いて、肉を食べたくなったのだと推測する。
だが、わざわざ捜索し討伐する程の対価を、ギルドマスターがどのくらい渡せるのか。
まさか、職権濫用で何か融通するとか?
誰かの沽券に関わる事態にならなければイイが。
「いまのきせつは、キラーベアなのに」
そんな事を考えている横で、依頼ボードを見ていたミクリがボソッと呟いた。
「あぁ、冬眠前だからか」
よく分かっているなと、常々思う。
キラーベアは冬眠前に蓄えるから、その時期が一番脂がのって美味しいのだとミリーナが言っていた様な気がする。
まだ子供なのに、既に母ミリーナの面影がチラチラ垣間見えた。どうやら、血は争えないらしい。
「ミクリ、涎拭いて」
想像しているのか、ミクリの口端にキラリと光るモノが見えたのだ。
食いしん坊もビックリな反応に、クリューはハンカチを渡しつつ苦笑いが漏れた。
「パパ、やまにいこう」
「キラーベアを探しに?」
「キラーベアのスキヤキは、ブラックブルとはちがったあじわいがある」
「確かに、雌のキラーベアは果物の香りがする個体もいるな」
基本的に肉食だから、独特の香りがするキラーベアだが、たまに果物ばかり好んで食べる個体がいる。
人と同じでキラーベアも皆が揃って、肉食ではないのかもしれない。
しかも、その個体は臭みが少ない上に、仄かにフルーティーな香りがする。それが堪らなく美味しい。
「ミクリ、それはしらない!」
「え?」
「ママにきいたことはあるけど、たべたことはないよ!?」
クリューが懐かし気に味を思い出していれば、ミクリが目を爛々とさせていた。
幼いが既に美食家のミクリでも、食べた事のないモノがあった様だ。
まぁ、肉食獣が果物だけで満足している方が珍しい。たぶん、希少な個体なのだろう。
「たべにいこう!」
「いやいやいや?」
百歩譲ったとして、そこは"食べに"ではなく"狩りに"ではないのか?
クリューは行く気満々のミクリを落ち着かせ様とした。
「アシタ、せかいがおわるかもしれない。いまのうちにーー」
そんなすぐに世界が終わって堪るかと思いつつ、クリューは思わずツッコミを入れる。
「誰が世界を終わらせるんだよ。ミクリ」
「ママ」
「……」
うん、終わるかもしれない。




